中国の食糧政策

   

舟原ため池3月8日
 中国は世界最大の農産物の輸入国だ。人口が極端に大きい。国土の割には耕作地は少ない。そして、日本に同様に農村から都市への人口移動が進んでいる。労働人口の減少も始まっている。多様な国だから、日本ほど一辺倒ではないだろうが、農業は順調とは言えない。

 中国も農村からの人口流出が顕著で、農村の労働人口は次第に減少している。食糧増産を国は重要政策としているが、これも日本と同じで、農村を嫌う若者がやはり増加している。所得が増えると肉の消費量が増加して、食糧の生産性が落ちる。食糧の不足は年々深刻化が予測されている。

 そこにウクライナ戦争が始まったことになる。国内農産物の生産の不足分をウクライナからの輸入で補っている。中国は2021年、ウクライナから2800万トンのトウモロコシを輸入したが、これは前年の1100万トンの2倍を超え、過去最高だった。

 ウクライナとその周辺のロシアは肥沃な黒土に恵まれ、その面積は世界の25%以上を占める。中国が輸入するトウモロコシの8割以上がウクライナ産だ。小麦の生産量はロシアが世界の18%である。ここでの戦争は世界の食糧事情に影響を与えるに違いない。

 中国にはすでに食料の備蓄余裕がない。備蓄を切り崩して、食べている現実がある。これから3年間で中国の穀物不足は、紛争レベルまで深刻化すると見なければならない。まず、家畜の飼料が不足すれば、国内の食品価格を押し上げることになる。

 中国では昨年異常気象が極端で農業生産は打撃を受けた。それは、恒常的な異常気象と言える状態でもある。すでに食料は不足気味で輸入依存が日本よりも深刻なのだ。加えて同国の厳格な「ゼロコロナ」政策は輸入食品の流通に影響を与えて、食糧の流通も滞っていると言われている。

 極端に人口が多いい、中国の場合食糧が国内で生産できないときには輸入量の増加も簡単には出来なくなる。しかし、中国はすでに数年前から、食糧備蓄の為の輸入を強力に始めていた。今起きている、ロシアのウクライナ侵攻を知っていたかのような動きである。

 中国は早速ロシアに対して、小麦の輸入を持ちかけている。当然のことであるが、石油の輸入も引き受けるとしている。この戦争が始まった時に予測した通りに、石油は上がり続け160円まで行くのかもしれない。そうなれば売り先さえあれば、ロシアは戦争で儲かる事になる。経済封鎖どころではない。

 中国もロシアもそうしたことは計算したうえで動いている。欧米や日本よりも、緊急事態に対する対応は準備が進んでいる。両国とも長年経済制裁を受けているのだから当然である。

 あの北京冬季オリンピックのプーチン招待はそういう話が詰められたと考えた方がいい。IOCが排除したロシアのプーチンをわざわざ招待し、わざわざ出かけてきたのだ。ウクライナ侵攻は、大きく言えば旧共産圏と旧自由主義圏とのせめぎ合いの構図は続いている。

 と言っても中国の食糧自給の状況は日本とはまるで違う。98%の食糧自給を達成しているのだ。日本は39%というのだから、雲泥の差だ。それでも中国は小麦を年間1000万トンの小麦を輸入している。国産小麦のほとんどない日本の小麦輸流入量が488万トンである。いかに大問題になるかがわかるだろう。

 ウクライナ、ロシア、ブルガリア、ベトナムなどからの輸入を増加させる。カザフスタンなど中央アジア諸国からの小麦の輸入はさらに伸びる。輸入の安定性と信頼性を向上させるためには、輸入元の多元化を促進し、単一国への依存を減らす必要がある。というのが食糧計画である。

 シベリア極東地区には中国農業資本が進出して大豆の生産を強化している。大豆もロシアからの輸入が増加している。アメリカからの食糧輸入を極力避けて、ブラジルからの輸入に変えた。輸入先を多様化している。当然経済制裁に備えてのことである。

 オーストラリアと中国は対立を深めている。中国はオーストラリア産の牛肉に依存していた。その輸入を制限してロシア産の牛肉の輸入を急増させている。2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった。 

 着々と食糧の安全保障で、中国はロシアとの関係を深めていたのだ。中国は「一帯一路」で掲げる。その流れは食糧輸入戦略ともいえる。中国と、モンゴル、ロシア、パキスタン、ウクライナ、中国の食糧安全保障はかなり徹底したものである。

 米中対立が今後さらに対立を深める。台湾併合のタイミングをうかがう中国は、旧自由主義陣営による経済封鎖をも念頭に置いて、食糧の安全保障を国家最大の戦略として進めている。習政権が国民から支持されている理由である。こうした中国の動きが世界の食糧貿易に大きな影響を及ぼし始めている。

 こうした状況下日本は何と、恐ろしいことに40%の食糧自給率にも達することができない。そしてスガ元総理は主食作物よりも、輸出可能な農産物に転換しろと、この緊急的状況下主張した。日本に安全保障の思想そのものが欠落している象徴的発言である。

 日本は経済の停滞は世界の中でも際立っている。ますます食糧輸入
は出来なくなる。この事態で戦争がはじまったのだ。コロナもそうだったが、何の準備もなく、追い込まれてから場当たり的に対応するだけだ。原発事故の安全神話と全く同じことだ。

 国が食糧を保証してくれないのだから、自分でやるほかない。これが私の35年間だったかもしれない。安心立命するためには、国に依存しないで生きるほかないという事である。先ずは食べる物である。お米と味噌さえあれば、何とかなる。日本人は米を食う人だ。

 中国とロシアの今の動きを見ると、世界は危機的な状況は近いと考えなければならない。世界では暴力の風が吹き荒れるだろう。残念ながら日本はそれに対してただ手をこまねくだけに違いない。そして相も変わらず、北方領土や尖閣の問題すら片づけようとも出来ない。アメリカ一辺倒の属国意識。

 自給の為の田んぼをやろう。そうしなければ、この国では安心して暮らすことができない。100坪あれば食糧自給は出来るのだ。それぞれが自分の身体を動かして働けば、こんな世界でも安心して生きることが出来る。みんなが食糧を作るようになれば、戦争など関係のないところで生きることが出来る。

 - Peace Cafe