日中外交の今後を見直せ

   



   自民党は7日の政調審議会で、中国の習近平国家主席の国賓来日中止要求を決議した。これは間違った判断である。香港一国2制度を否定したのは、問題ではあるが、一度来日を要請した習近平主席訪日を日本側から拒否することは、対立を深め、問題の解決をより困難にするだけだ。今こそ日本独自の外交を考えるべき時だ。

 香港問題を触れないというのも外交手法である。ウイグル問題に触れないというのも外交である。台湾問題に触れないというのも外交である。正義だけを振りかざして対立を深めることでは、何も生み出さない。正義を主張するときにはだいたいの場合、自国の問題から目をそらす時だ。もっと粘り強く関係を模索しなければ、中国とかかわってゆくことはできない。中国と良い関係を作らなければ日本の未来はないと考えている。

 特に現在の中国は転換期にある。あれほどの大国が、20年余りの間に最貧国のような状態から、経済大国に変わりつつある。しかもその変化は日本の高度成長期以上の速度である。社会も人間も混乱と変化の中にあると言える。中国に対して短視眼的な見方でかかわらない方が良い。
 中国の本音がどこにあるかについて、興味深い記事があった。中国共産党の政党外交を担う対外連絡部の元副部長、周力(65)。
「対米関係悪化の加速に備え、闘争レベルが全ての面で上がる事態に備えよ」
「外部の需要の萎縮に対応し、サプライチェーン断裂への準備を怠るな」
「新型コロナウイルス感染症の常態化、ウイルスと人類の長期的な共存に備えよ」
「米ドルの覇権から脱するため、一歩一歩、人民元と米ドルのデカップリングを実現する準備をしよう」
「地球規模の食糧危機の爆発に備えよ」
「国際的なテロ勢力の復活に備えよ」

 自民党には武力主義への転換のために、わざわざ中国との関係を悪化させようとする人たちがいる。その人たちにすれば、大多数の日本人が平和ボケをしている。だから、中国の怖さを眼に見えるものにして、目を覚まそうという事なのだろう。しかし、世界情勢はそれどころではなく、自民党の武力主義を茶番だと言っているのだ。

 世界の武力主義自体が変化をきたしている。原爆保有という事が日本にない以上武力を保有してにはどうあがいても限界がある。世界の軍事情勢において、原爆保有国を無くせない以上。原爆に対する非核国の安全保障が必要である。それがないために、核保有国が非核国を言いなりにすることになる。
 国連の中に非核国に対して原爆攻撃をした国には、国連が原爆攻撃をするという核の傘を作る必要がある。本来は核廃絶が良いとは思うが、それまでの妥協策として、アメリカの傘の下から抜けて、国連の傘の下に入れるようにするべきだ。非核国の連名で行う必要がある。日本はその先頭に立つべきだ。

 日本こそ中国と少しでも良い関係を模索しなければならない。中国が孤立することで良いことは何もない。日本が近隣諸国と対立ばかりしている国ではだめだろう。お隣と仲良くするというのは難しいことかもしれないが、対立してよいこと等何もない。中国の覇権主義に問題があるというのはよく分かる。中国が良くなるには時間がかかるという事もある。長い目で見るというのが今は一番良いと思う。

 誰が考えても、世界の成長エンジンとして世界経済を牽引する中国の近くに日本があることは事実だ。なのに、なぜそこから離れ、わざわざ距離を置く必要があるのかとおもう。仲良くして何の問題はない。依存はせず、良い関係を見つけるという事だろう。

 経済を見れば、世界一の大市場中国が目の前にある。経済関係を作らないのだとすれば、経済としては失敗ということだ。これからの30年は日本社会にとって問題だらけだ。経済的な好材料はほぼないといっていい。日本にとって経済的にわずかなチャンスがあるとすれば、それは中国とASEANの巨大な市場である。

 唯一のチャンスを狭量で偏った価値観のために無駄にすることはない。明治帝国の幻影に惑わされてはならない。日本は中堅国家だという意識を持つべきだ。中国の覇権主義嫌いな人でも、中国以外に日本の経済に有効な国にはないと歩み寄ったほうが良い。

 やるべきことはまず尖閣の問題の解決である。訪日してもらい妥協案を提案して話し合う事だろう。日本政府は尖閣を対立のための材料にして来た。自衛隊の軍隊化や、在日米軍に対する反対運動を抑えるための説得材料である。中国が怖いから、軍事力を強くしなければならないという、材料としての尖閣諸島である。

 だから、棚上げされていた問題をわざわざ棚から、石原都知事が下ろしたのだ。日本の右翼勢力の戦略である。石垣島ではそういう人たちが説得して回っている。市長や保守系議員はその思想に同調している。というか洗脳されてしまっている。洗脳の前提として、様々な恩恵が用意されていると想像される。

 尖閣は国連に解決を呼び掛けてもらおうと習近平と話う。現在実効支配をしている日本から、提訴すべき問題である。そして、国連に一時預けにする。そうして、対立の材料にされないようにしなければならない。棚から降ろした尖閣諸島をまた棚に戻さなければならない。

 小さな無人島など経済的にはマイナスだけである。地下資源とか、漁業権だとかいうが、日本の今の経済に対して、中国との良好な関係が生まれれば、どれだけ助かるかを考えれば経済に関しては小さな事になる。地下資源なのに期待するより、健全な経済活動を考えるべきだ。

 それは中国だけではない。東アジア全体を見るべきだ。日本人がアジアの一国という意識を持たなければだめだ。明治の脱亜入欧論の尻尾がいまだ残っている。アジアから孤立して、中国とかかわるという事はよくない。東アジアの一員として、中国とかかわることだ。

 アジアの一員であれば、アメリカとの距離を持たなければならないという事が出てくる。日本の現状はアメリカの属国である。アメリカの顔色を見なければ中国との付き合いが出来ない。アメリカとの関係を対等なものに変える。アメリカの威を借りているだけでは中国と良い関係は持てない。

 今の状態は日本が米中経済戦争に巻き込まれるという形になっている。あるいみ、50年前の外交関係はいまや、国内関係と言えるほど世界の関係は密になっている。それはコロナの感染拡大を見れば、世界のつながりの深さが良く分かる。関係ない国など何処にもないという事だ。

 世界がつながっていることは明らか。温暖化問題、マイクロプラステック問題。感染症問題。世界は1国の都合だけで考えられる時代ではない。世界のどの国とも仲よくするのが望ましい。平和憲法を持つ国日本としては、仮想敵国を作るなどもってのほかである。

 マスコミの大半は中国批判を展開している。悪の国中国を演出してしまっている。日本に必要なのは、中国は覇権主義の国なのだと理解した上で、どのように付き合っていくか、現実的な選択を考えるべきなのだ。中国嫌いを生み出そうというのが自民党の長年の戦略だったために、日本人の多くが、中国を誤解するようになってしまった。

 中国の人とはある程度かかわってきた。3回農村部に行った。報道ではない生の中国のことを知っているつもりだ。中国人は実に多様である。貧富の差も大きい。人間の能力も多様である。日本人よりも様々な人がいると言っていい。人間力もすごい人がいる。学ぶところの多い複雑な国だと思う。

 国家として長期間疲弊していた。そのことが今の中国の姿に現れているのだと思う。経済に余裕が出来て、一世代ぐらいたてば、もう一度大きく変わるはずだ。台湾に行くとそのことがわかる。人間が素晴らしい。実に魅力的だ。もう少し時間をかけて中国を見ていることだと思う。

 

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