石垣島トゥーラバーマ大会

   

 

10月11日石垣島でトゥーラバーマ大会が開催された。市民会館隣の新栄公園である。一千人もの観客がいたのでは無いだろうか。月明かりだけだから、沢山の人がいるくらいしかわからなかった。月明かりの中、それは力のこもった唄が続いた。


 始まる前の様子。まだ子供たちがサッカーをしていた。かなり上手なので、中学のサッカー部の子供たちではなかろうか。この広い公園全体に人が座って聞いていた。暗くなるに従い人が集まり始めた。

 fmラジオでライブ放送だから、時間に従って進んだ。石垣のコンサートでは珍しいことだ。少し風があり、聞いているものにはちょうど良かったのだが、マイクが風を拾った。唄う人には外で唄うのは、それぞれに大変だったのでは無いだろうか。



 とぅらばーま大会は市が主催の行事だ。予選があり、大会には二十三名が参加した。大阪の大会での優勝者。本島での優勝者。も参加している。高校生から80代までの参加者である。

 歌詞部門があり、歌詞だけの応募がある。これは八重山言葉での作詞である。しまむにの学習のために学校ぐるみでの参加もある。なんとその中から、三校が舞台で堂々と歌を披露した。中学生といえども、かなりの唄であった。八重山高校のグループは大会に参加しても遜色ないのでは無いかと思われた。

 大会にも高校生の方の参加があり、はつらつとして唄った。なかなか良い唄だと思ったが、奨励賞を受けることになった。最優秀賞は東政太朗さんで、石垣市宮良の人で、二十七歳の青年であった。

 ひとつ気づいたのはこれは若い人が唄う叙情唄である。若い声で切々と歌い上げたときに、この唄の魅力が発揮されるのでは無いかと思えた。これだけの高音の唄であると、若くなければ高音部が苦しくなると言うこともある。

 もちろん、八重山民謡はどの音階で唄ってもいいので、低く歌い出す人もかなりあった。しかし、それでも2オクターブぐらいは上がる。しかも息継ぎが無いに等しい。高音部で息を出し切ってしまい、最後の落とし部分というか引いてくるところで苦しさが出てしまう。この苦しさが想いの苦しさのようにも聞こえて良いときもある。

 歌詞については、自ら作詞した唄を唄う人もいる。どんな歌詞でもしま言葉であれば良いのである。だから、戦争の時の手を引いて逃げてくれた母親の思い出を唄にされた方もある。このときには思わず涙が出たという、感想もあった。

 残念ながら、シマムニがからないものには理解して味わうことはできなかった。本島の方では、ジャズとコラボしたとぅらばーまを大会で試みると言うから、現代の唄い方というのも出てきているのだろう。歌詞が自由である。音程も自由である。唄い回しも自由である。

 もちろん昔からの唄の歌詞を唄う人もいる。最優秀賞の東さんはそうであった。昔からの歌詞はやはり聞き慣れているから聞きやすいと言うことがある。また、時代を超えて残った歌詞のすごさというものもある。

 この歌は、男女の掛け合いで唄われることが基本である。男が唄い、返しを女が入れる。この女の返しが極めて高音である。この良い返しが入るかどうかも、かなり唄の善し悪しになると思えたが、中には返しなしで唄う人もいた。演奏についても、自分の弾き方に変えている人もいた。

 この男女の掛け合いの中に、八重山の女性の地位の確立が示されていると言うことである。女性の自立が唄の中にあると言う。返しが旨く唄に重なるとそれは見事である。そういうことは採点では無視されるのだろうか。
 
 高音の所を余り上げない人も何人もいた。不自然というわけでは無く唄うのであるが、楽譜的にいえば違うと思える。でもそれで良いらしい。すべてに自由である所に、この唄の特徴があるのかもしれない。正直よく分からない部分だ。
 
 歌詞部門では九十歳の方の世話をしてくれる家族への感謝を唄った唄が最優秀に選ばれた。良い唄だと私も思ったが、何か胸に迫るものがあった。ここでも、皆さん挨拶をするのだが、さすがに良い話をされるのでじんときた。

 私個人としては、大阪大会で優勝されて、本大会に出場した、村上創さんの唄が良かった。唄い回しがこなれていて、熟成していた。すべてが楽譜通りで完璧に思えた。もし、カラオケ採点機械であれば、最高点では無いだろうか。そういうものでは無いというのは分かるのだが、まだ私にはとぅらばーまの魅力というものが分からないのだろう。

 こうして、石垣島には唄文化が生きている。来年はもう少し唄を聴けるようになりたい。自分が唄うことはとうていできないが、せめて聞くことができればそれだけで楽しい。

 13日にはアートホテルで歴代最優秀賞の方々のとぅらばーまの夕べがある。これにも行くことにした。つまり、3回も楽しみがあるのだ。前夜祭として行われた、誰でも唄って良いというとぅらばーま記念碑の前での唄会。本大会。そして最優秀者の唄を聴く会。

 この3つとも聞かせて貰う。それでも少しも退屈するなどと言うことが無い。それほどこの唄は興味深いものがある。

 - 石垣島