石垣アトリエの座り机を作る。
長机を4つ作った。楠材が3つ。天板の厚さは30ミリ。幅が30から50センチ。長さが2.7m。一つは杉のような古材の立派なもので厚さ60ミリ。絵を描く壁の下に並べた。柿渋を何度か塗り仕上げた。なんとも良い風情である。壁側だけまっすぐに切りそろえ、手前側は自然のまま。この4つの机は、まっすぐに切りそろえた方を向かい合わせて並べて、宴会用の80㎝×540㎝の大机にもなる。伐採から6年は経過したから、十分枯れている。この材は燃やされてしまう寸前のところを、確保して板に挽いてもらった。6年寝かせてあったものだ。そしてある程度ゆがみが出たものをもう一度挽き直してもらった。それからまた2年経過した。ほぼ歪みはでなくなっている。アトリエを設計した時から、この壁にはこの机が来ることは決めていた。白い壁で絵を描くのだが、その下に少し締まった色が必要だった。そこを絵を載せる台にすれば描きやすい。想定通り、うまくいった。
中央の2点が今描いている絵。絵のサイズは中判全紙。ファブリアーノ。こうしてみると少し絵がおとなしくなっている。
絵を並べるとこんな感じになる。これも予定通りである。絵が見やすい。描きやすい。今、名蔵湾で描いて居るものも、帰ってきたらここに置いてみる。中央の2点が描いてきたものだ。そして眺めている。天井の天窓からくる光である。光の加減、静かで柔らかく絵が見やすい。この光も予定通りである。この壁には絵を上からつるせるようにもしてある。机の上には、柿渋で染めた、結城紬を敷いた。その上に昔、高校生の方がくれた、手織りの布も置いてある。その高校生だった人が、今台湾に住んでいる。右に下がっているのは、友人の壁掛けの作品。奥に少し見える机は杉材だと思うのだが、すごい存在感がある。こんな立派な板はめったにないから、利用しないわけにはいかなかった。ともかく重い古材だ。上には陶芸の作品を並べた。
兼藤忍さんに指導していただいた時の私の作品が5つ並んでいる。左端は小島郁子さんという青森の方の作品。
ここが篆刻と書の場所。壁には絵が飾れるようになっている。時々字を書きたくなるのだが、書きたいと思ってそのまま座って書ける状態がいい。気に入った硯が5つ並んでいる。このすわり机は大正期笹村の祖父が指物師に頼んで作ったもの。関東大震災も、戦災もしのいで今に残ったものでやはり捨てがたい。収まるところに収まるものが据え付けられた。絵を描く気が盛り上がってきた。すべてが片付かなければ絵には入りにくい。やらなければならないことが全くない。こういう状態が絵を描くにはよい。それが石垣に来た大切なところとなる。