韓国徴用工の問題
韓国の最高裁判所で戦時中日本で強制的に徴用工として働かせられた韓国人に対して賠償すべきという、判決が出た。大半の日本人がもういい加減にしてくれと、不愉快な気持ちになったことだろう。私にもそういう気持ちがないと言わないが、公正に考えるとある意味正しい判決なのだ。個人の被害に対して、国が一方的に請求権を放棄できるかという問題である。名古屋の三菱で飛行機生産をさせられていたとある。私の母と同じである。母は名古屋の大学に行っていたのだが、戦時中なので、学校に行くより学徒動員で飛行機の製造工場で働いていたと話していた。朝鮮の人もいたと話していた。別の棟の工場で分けられて働いていたと聞いた。母と同じ工場の可能性がある。名古屋で大地震があり、工場が壊れた話。又工場に爆撃があり逃げ回った話をしてくれた。母はいやいや強制労働をさせられたという感じではなく、お国の為に必死に働いたと言っていた。母は軍国少女だった気がしている。同じ工場で働いていても、植民地から連れてこられた朝鮮人にしてみれば、複雑な思い、我慢できない気持ちがあったのは当然であろう。従軍慰安婦問題も同様である。解決など不可能な怨念が横たわっていることを考えておく必要がある。忘れがちな日本人への警鐘である。特に安倍政権の最近の軍国主義復活の姿勢を考えれば、当然なのかもしれない。
日本国と日本人はすべからく、この問題に対して謝罪の気持ちを持つ必要がある。そして、謝罪を繰り返したとしても、ぬぐい切れない傷が残るという事も覚悟しなければならない。若い人たちであっても、関係ないとは言い切れない問題である。国や民族が関係する、差別につながる問題については、差別され利用された側の視点に立ってみることが大切なことになる。日本政府は直ちに、韓国政府に対してすでに55年前に解決済みのことだから、その前提で対応するようにと安倍総理大臣が記者会見をした。もし、賠償を請求するのであれば、国際裁判所で判断してもらう事になるとも発言した。このことは忘れずやってもらわなければならない。アベ総理大臣の言葉の端々に、怒りが溢れていて謝罪の気持ちが全くない点が気になった。日本人として怒りの気持ちになることは理解できない訳ではない。しかし、そこをこらえて、過去の過ちに対して謝罪はすべきである。その上で、すでに両国政府が話し合いで、問題の解決を目指したいと言えばいいのだ。韓国政府に直接的には対応してもらう以外にないので、何か方法を両国で話し合いを持つという事だろう。
このように植民地を作り、戦争をしてしまい一度犯した罪は消えることはない。戦争で解決できることなどない。残るのは怨念である。恨みの気持ちである。そうであっても、両国が未来志向で協力し合うほかない。世界が平和になるためにはこの大前提がある。その大前提の上で、韓国という国の現状を考えてみる必要もある。韓国は日本のおよそ半分弱の面積、国民数である。そして、稲作を中心とした農業国であった。そして、近年極端な貿易立国を目指し、あらゆる競争を激化させ、徹底した社会変革をした。競争を激化した結果優秀な人材が一部の企業に集中し、数社の政府と結びついた企業が世界企業に躍進した。国の大きさが少し小さいがために、すべてが徹底して行われる。農業分野も日本に先行して衰退を始めている。日本の農村以上にすでに地域の維持には困難を極めているようだ。教育分野では激しい競争が行わる。格差社会がいち早く到来している。しかも、北朝鮮とはいまだ朝鮮戦争は終結せず、徴兵制度が存在する国である。
日本の戦後の復興は戦争には負けたが、経済競争では今度こそ負けない。こういう思いが、高度成長につながった。農村から優秀な人材が、都会に集まった。能力の高い、大量の安い労働力が世界の競争に有利だった。韓国では新しいIT産業分野なので高度な製品開発をして、競争に勝利している。海外に工場を進出させると同時に、国内にも外国人労働者を入れている。植民地化した日本に負けてなるものかという、恨みの思いが高度成長に繋がっている側面もある。これから韓国が豊かになることが、恨みの気持ちの解決になる可能性もある。まだ時間が必要であろう。日本はそれまで、反省の気持ちを持ちながら未来志向を一貫させる以外にない。韓国社会に有るものは日本に対して批判的なものばかりではない。日本をきちっと評価し、良きところは学ぼうという人たちも多い。韓国の未来の為に、日本との関係改善を望む人も多数存在する。今のところそうした人が声が出しにくい空気があるだけだ。感情的問題は時間が解決してくれるまで、待つ以外にない。