畑の作り方

   

私は杉林を畑にした経験があるが、これから畑を作ろうとするものなら、もともと畑だったところで始めた方が良い。たとえそこが山に戻っていたとしても、昔畑だったところの方が、畑を作るにはずっと楽である。一度でも畑になった土は、交錯しやすくなっている。畑の場所を探するなら、日当たりの良い場所である。日当たりは、朝日よりもむしろ西日の方が良い。西日の方が温度があるからである。作物には西日の方が熱を持っていて良い場合が多いい。最近まで畑として使われてきたところを、そのまま借り受けるという事も多いいだろう。そうした場合は、土壌は砂漠化していると考えなければならないことが多い。心配はいらないが、いつまでもそのままの土壌で作物ができるとは考えない方が良い。一般に畑の土壌は腐植質が不足している。作物を育てる要素となる、土が含み込む力に不足している。土壌が水耕栽培の基材として使われる化学繊維のマットと同じようなものになっていると考えておけばいい。

日照のある場所ならば、土壌は育てることできる。それは元杉林であった場所でも同じことで、時間がかかるかどうかという事に過ぎない。畑だったところなら、3年もすればかなりの収穫が見込める。杉林であれば、5年である。いずれにしても、日当たりの悪い場所というものは、何万年も悪い場所なのだ。100年で良くなるというものではない。日当たりの良い場所が見つかったら、まずは誰でもそこにある草や木をどけるだろう。当たり前のことだが、どけるときに、土壌をかく乱させないことである。もし草なら、その場に敷き詰め戻すのが一番だ。その上に、米ぬかのようなものをまき散らしておく。そして、その草がとろけるのを待って、ウネを切って、枯草の間に作物の種を蒔けばいい。平らにしようとして、土を動かすことはできるだけ止めた方が良い。

もし、木が生えていたとしたら、根元から切り倒し、出来るだけ細かくして畑の隅にでも積んでおけばいい。この時米ぬかを混ぜておけば、やはり分解が早まる。残った木の切り株は、そのままにしておいて、その周辺で作物を作ればいい。機械を入れて耕すのであれば、邪魔になるのでどけなければならないが、自給の範囲であるなら、むしろ根を掘り起こす手間暇と、土壌の攪乱を考えれば、そのままで3年もすれば無くなると考えておけばいい。腐ってからどけるのは簡単なことだ。はじめは良い作物は出来ないかもしれない。たぶんおかしな雑草が生えてくることだろう。これを根気よく取り除いて、作物の根元に敷き詰めておく。そして、又米ぬかをまき散らす。もちろんその時に堆肥があれば、堆肥の方が効果が高い。最初に作る作物は、緑肥作物が良い。冬の間ならヘヤリーベッチは土壌を肥えさせるし、雑草との競争にも勝つので、蒔いてみるのもいい。季節によってはもったいないので、土壌をよくする作物を作ればいい。

 良い畑とは、気の流れの有る畑である。良い気流があれば、美しい畑になる。美しい畑で働くのは、気持ちが良い。気持ちが良ければ作業もはかどる。細かなところに目が行く。ゆっくりと観察ができる。苗箱などで苗を作り時間稼ぎをして土を整えて、苗を植えるといい。大豆、麦、玉ねぎ等の苗を植えたとすれば、一番大切なのは、徹底した観察である。その観察から畑の良しあしが見えてくる。麦の種を蒔いたとしたら、同じに出てくるわけではない。畑の場所場所によって違いがある。その違いをゆっくりと観察できる畑でなければならない。自分の美しいを目標に、畑を作ってゆくことだ。私は定規で引いたような線を美しいとは感じない。傾斜に沿って美しくゆがんでいる線が美しいと感じる。里山を描いていると、そういう美しい畑があるという事に気づく。それは、意識されたものでなく、何十年という年月が、作りやすい形を求めている間にできたものなのだろう。

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