稲の葉色診断法

   

一番上がお隣の田んぼ。とても熱心な方で、長く連合自治会長をされていた方だ。農業技術も相当にレベルが高い方である。いろいろ教えていただいている。

小田原では、永塚や、千代、あたりには田圃地帯がある。一目で色の濃い田んぼが有機農業の田んぼだということがわかる。ああ、ここにも仲間がいるというので嬉しくなる。今年は桑原でも田んぼをやっているが、無肥料のような状態でやっている。走り穂が出たところだ。自然栽培ということだが、やはり葉色は濃い。稲作では葉の色で稲の生育段階の診断する方法がある。しかし、有機農法と慣行農法では葉色の変化は全く違う。一言でいえば有機農法では葉色が濃い。その理由も完全に理解することは難しいのだが、現代農業の今月号で有機農法の人が葉色が濃いことに問題があると書かれていた。この見方には刺激された。私の今までの経験では、葉色が濃いことが悪い結果になったことはない。むしろ葉色が上がらなくて十分な稲作にならなかったということは何度も経験した。もう一度、なぜ有機農業では、葉の色が濃くなるのかということを考えてみたい。

当然、自然状態に近い栽培をしていて、葉の色が濃くなるのだから、葉の色が濃くなるのは稲の自然な生育状態と考えていい。葉の色が濃くならない原因が、何か慣行農法にはあるというほかないと思っている。葉の色がいつまでも濃いようでは、倒伏するということがよく言われる。つまり、慣行農法では葉の色が濃いということは肥料分、窒素分がいつまでも田んぼに残っているという判断になるらしい。ところが有機農法では、土壌からの栄養分を根が吸い上げる力が高まるには、温度の上昇に従うことになる。当然日照が強くなり、光合成量が増加するということもある。その結果葉の色は濃くなってゆく。葉が健全である証拠であり、根の活力が高い表れである。冬の間の緑肥が春起こしですきこまれ、腐食して、分解して、肥料分になって、根が吸収するタイミングがだらだらと続くということがある。しかし、8月初めに出穂が始まり、稲穂が実るまでの間こそ、一番稲に力がなければならないのだから、この時期に肥料分がなければ、秋落ちと言われる状態になる。そこまでいかなくとも、粒張りの悪いお米になる。

8月に土壌が最大の働きを行えるように持ってくる必要がある。田植え前の代掻きから8週から9週の間、緑肥と土壌を混ぜてかきまわしているのが田んぼである。冬の間の土づくりもある。また土壌が十分の力を持てるようになるためには、最低5年くらいの土づくりを重ねる必要がある。よく土ができて来て、田植え前に土壌に緑肥がすきこまれ、水が混ざる。そして田植えをして、すぐソバカスをまく。この時撒く、ソバカスの肥料分の影響が秋落ちになるかならないか。あるいはよい栽培になるかどうかの分かれ目になると考えている。まかれたソバカスは表土に落ち微生物のえさになる。爆発的にミジンコが沸き上がる。その結果が、どのタイミングで効果を上げるかである。8月中判から後半である。6月の分げつ増加のためには、田植え前の土の状態の作り方のほうが影響が強いようだ。これも、1本苗でスタートするなら、より重要になる。

その結果、8月の葉色の強さが、よいイネの状態に反映すると考えている。止葉の長さ、葉幅、厚さが、十分になるのがよい穂を作る条件である。よい止葉は葉色が薄いと出ない。稲が倒れる原因は、茎が弱い場合だ。少々背丈が高くなっても、一本苗はめったに倒れない。今年、倒れやすいという山田錦を桑原で作っている。背丈も高くなるというので、抑え気味の栽培をしている。それでも他所より色も濃い。慣行農法であれば、倒れる稲である。倒れさえしなければ、葉の色は濃いほうがいい。ではなぜ、慣行農法では葉色が濃くなることがないのか。化学肥料での栽培は、土壌の力がなくなる。土壌は物理的な基盤のようなものになる。その上に除草剤によって、微生物が激減する。土壌が物理的な存在になって、化学肥料の効き具合だけで、葉の色が変化している。緑肥をすきこむと、稲の生育が早まるということが今年確認できた。理由はまだわからない。生育が遅れているところは葉色の濃さが残っていてわかる。

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