ヤフーオオクション

   

三線を購入したのはヤフーオオクションである。生まれて初めて宝物を購入した。この三線は沖縄のある老舗の三線店に委託されて、置かれていたものだ。制作したかたは、与那国島の上間さんという方だと伺った。与那国島で何か仕事をされながら、三線も作っているらしい。そしてその材料は与那国島のクルチだと言われた。その物語を信じている。三線を鳴らすと、与那国島の音がするからである。それくらい、八重山クルチの三線という物に憧れがある。物語がある。楽器の棹は硬い変形のしない材質が必要だ。そこで、黒檀という事になる。黒檀にも色々の種類があるようで、今は八重山には三線が作れるような黒檀はない。あったとしても、伐採が出来るわけがない。それ程貴重なものになっている。そこで台湾にも同じような黒檀があって、それも良い材という事で使われる。今では、アフリカの黒檀まで三線になるようだ。きっとアフリカの音が鳴るだろう。

沖縄好きとしては、なんとか八重山クルチの三線が欲しかった。申しわけない位ぜいたくな話である。長い事憧れていて、ついに、ヤフーオオクションで買ってしまった。買う前に、間に入られていた、三線作りの長老に本当の八重山クルチのものかと電話でお聞きした。間違いない品だと言われた。それを信ずる事にした。それが本物の八重山クルチであれば破格に安いものであった。しかし、安い理由の話しがおまけとしてあった。その与那国の上間さんが長い事温めていた、クルチで棹を作った。そして病気をされ那覇の病院に入る事になった。そのとき入院費として、その棹をいつも委託している、三線店にお願いしたということである。緊急にお金がいるので、格安で良いので販売したいと言うことで、ある方がヤフーオオクションに出した。誰もまさかという感じで購入しなかった。本物の与那国島のクルチがオオクションに出てくるなどという事が、あるわけがない。

と思いながらも、この物語を信ずる事にして、購入した。今は、信じて良かったと思っている。先日、那覇の三線店さんにもお尋ねをし、物語の確認をしてきた。どうもこの物語は、ノンフィクションだったようだ。信じて良かった。治療費になるのであれば、とても良かったと思っている。毎日三線を手に取る。そして水牛の角で作った爪で、鳴らしてみる。水牛の角の大きな爪は、三線の日のイベント会場で、山の様に有った爪を一つづつつけて見て選んだものだ。選んでいると、親切な諸先輩が、選び方の事を教えてくれた。爪も自分の勉強の方向で大きさや材質が違うのだそうだ。薄いギターのピッグの様なものから、8センチもある巨大なものもある。爪は手に取らなければ、自分にあった物は選べない。勿論三線もそうなのだが、直接お店で買う事が出来なかった。それもあってオークションで購入した。お店に行けば、どうぞ弾いてみてくださいなどと言われてしまう。私は、大工哲弘さんじゃないし、沖縄人でもない。弾けもしないで買おうと言うのだから、困るのだ。

先日、三線の演奏者のタケシーにもこの三線の自慢話をした。一度見せて下さいなどと言われて、嬉しくなってしまった。ヤフーオークションはいい。この時代にぴったりである。長年探していた、桐の絵をしまう箱が、やはりオークションで見つかった。大きな戸棚の様な物なのだ。何故こんな不思議な物があったのかは分からないが、所有者は困っていただろう。置き場にも困るが、随分上等なものだ。捨てるわけにもいかない。タダ同然で買わせてもらった。多分日本中で私以外にこれを欲しいと思う人はいないと思えるほど、特殊な家具を誂えたという具合で、絵を描く台として使っている。消費税分が送料と考えれば、出掛ける手間いらずだ。これからオークションはさらに広がるのではないだろうか。一種の物々交換ということにもなる。物を大切にするということにも繋がるであろう。

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