竹の楽器作り
竹の楽器を作る。場所はカヨ子さんの彫刻作業場
竹は暮らしに役立つ便利な植物である。少しの竹藪があれば、自給生活には何かと便利である。子供のころは、ざるから、背負いかごまで、ありとあらゆるものが、竹で作られていた。竹だけで作られたトイレまであった。実に爽快なトイレでトイレの下にせぎが流れていて、しばらく発酵浄化されると、溢れて池に流れ込むようになっていた。大抵はその前に肥料に汲みだされてしまう。その池では鯉が飼われていてお客さんが来ると御馳走になった。壁は割った竹で編まれていた。薄い一枚だけだから、冬場は寒かったが、臭いが籠らないで、爽やかなものだった。床は細目の竹が丸いまま並べられていた。下がすき間から透けて見える。ギシギシは言うが、かなりしっかりしたものだった。屋根は杉皮で吹かれていた。何故あんなに風流なトイレを作ったのかが不思議だ。近くの竹やぶのあり合わせの材料で作ったら、風流な茶室の様なトイレになったという事なのだろうか。窓に覆いかぶさるようなもみじがあって、トイレに入ると眼が緑に色づくようだった。
竹の楽器作りをしている。太田さんと言う田んぼの仲間の方が、竹と民族楽器に詳しいので、この冬はそれを教わっている。太い孟宗竹で以前、打楽器を作った。側面に切り込みを入れて、音階が変わるようにした。これをたたいて楽しんだ。一年くらいは何でもなかったのだが、あるとき虫が入って穴をあけた。中から粉が噴き出すようになってしまった。音もだんだん悪くなってきたようだ。一緒に竹取りをしてくれて、楽器を作ってみようと言う事になった。冬の内に先ず竹を切ると言う事で、坊所にあるお茶畑の上の孟宗竹を一本切らしてもらった。久しぶりに竹藪に入ったが、良く管理されていた。先ずどの竹を選ぶのが良いかである。3,4年以上経った古い竹である。あまり古いものはやはり良くないとのこと。田んぼを新しく始める近藤さんによると6年ものが良いと言われていたが、近藤さんもどの竹が6年ものかは見た目だけでは分からないと言われていた。10月の新月に切ると虫が入らないとも言われていた。少し今まで聞いた情報では9月の新月が一番と書いてある本もある。
どんなものを作るかと言えば、ケチャックの打楽器である。今回は3つの節を使って、低音、中音、高音と三種類の音階が出るように出来ればと考えて始めた。切り込みの入れ方が深いと低い音になる事ぐらいしかわからないのだが、切り込みの入れ方の工夫を考えたい。これはとても難しくてうまく行かなかった。音階は諦めて、今度は低音が籠るようにと節を抜いて、長い空洞を作ってみた。これはある程度は成功したのだが、節を抜くときにできた穴がどういう事になるのかが分からない。古い竹で作ってみたら、音が柔らかく響いてくれる。気が完全に枯れるまでは、案外に良い音にならない様でもある。尺八などは、どうも何年も寝かして、気を完全に枯らしてから作ると書いてある。竹は枯れてゆく過程で随分変化する様だ。
まず、油抜きと言う事を教わった。徐々に焼いて行くと色が分かって来る。そのうちに表面に油が湧いてくる。これをふき取ってゆく。竹の色が変わり、独特の艶が出た。竹の中に虫がいれば、ある程度死んでくれるかもしれない。それから10日程してから、穴あけの作業になった。良い音がどうしたら出るかで色々切り込みを入れて試してみた。節の長さで音が違う。節を通してしまったものも案外に良い音になった。恥の節だけは残してあるが。案がいには時の音も抜いてしまってもいいのかもしれない。この後も色々試してみるつもりだ。結果が出たら、この後に続きを書きたい。