日米関係のきしみ
紅葉と雪 10号 紅葉も面白い題材である。色に引きつけられる。空の青さ、雪山の白と紅葉の赤と草モミジの黄色。どうも私にとって一番の材料は色彩の関係のようだ。
最近日米関係の風向きが変わってきた。アメリカは日本に預けてあるプルトニュームを返せと言ってきた。核武装の懸念を感じ始めたのだろう。ケリー副大統領が、中国韓国に訪問する際、日本にも寄るようにお願いしたら、時間がないと断られた。一方で自民党が妙にアメリカを軽視した発言をしている。アメリカ何するものぞという感じだ。アメリカに卑屈になり、土下座外交と言われてきた位だから、きちっとした姿勢でモノ申すことは重要である。きっかけは、安倍氏の靖国参拝である。アメリカは戦勝国として、敗戦国日本の軍国主義再生を強く恐れている。日本の宗教観、政教分離、については理解しにくいと思う。アメリカに対して強気になる背景が、北朝鮮と変わらないような幼稚な感じがしてならない。アメリカにしてみたら同盟国と言っても、軍事的に自分の手下のつもりだろう。対等でないのは誰が見ても明らかである。アメリカが安倍政権の跳ね返りを強く危惧するのは、無理もない。安倍政権が登場した1年前、安倍氏を軍国主義者だと書いた。そんなことはないというコメントがいくつもあった。確かに当時はまだ一般には安倍氏の本質は、そうは見えていなかっただろう。
ところが最近の安倍氏の言動に対しては、国民の半数くらいは、軍国主義者かもしれない、という危惧を抱いてきたのではないだろうか。後1年すれば、国民の大多数がやっぱり安倍氏は軍国主義者だったのかと思い知らされるだろう。普天間の米軍を再編して、辺野古に東アジアを統括する米軍海兵隊を置く計画である。これはアメリカにとっては、普天間基地が危険だから移転するという程度の問題ではなく、アメリカの世界戦略の問題なのだ。もちろんそれが日本にも影響する。しかし、本質はアメリカの日本コントロールが主目的である。日本にとってだけ考えれば、沖縄の基地は、どこかの無人島でやってもらえばいい。米軍間の連携が難しいとか、色々主張はあるが、やり方はある。そうすれば沖縄の人たちにとっても、ずいぶんさっぱりとするだろう。そういう島もある。それでは日本に居る価値がないと考えれば、フィリピンなり、ガゥアムなり、韓国なりに基地を移す可能性もある。そこではじめて、米軍の日本駐留の意味を明確に話し合えるのではないか。この辺のあいまいさが、安倍政権の屈折した憲法改定論に現われている。
アメリカの世論調査では、中国の方が日本より親近感があると最近出ているそうだ。安倍氏のダボス会議発言を契機に、中国と韓国は、あからさまな国連での反日発言である。それを許す空気が世界に広がり始めている。中国とアメリカは第2次大戦では連合国として、日本と戦った。日本のおかれている位置は、両国の敵対国であった。日本は日々アメリカから遠のいている。安倍氏の靖国参拝がもう一度行われれば、アメリカは本気で具体的な行動を取るであろう。その状況下での、ダボス会議の記者会見の日本の状況説明の失敗である。安倍政権に対するアメリカ政府、およびヨーロッパの空気は安倍政権批判が強まってきている。安倍氏が再登場した時からのアメリカの危惧が、はっきりとしてきたという感じだろう。それがむしろ、中国や韓国の方がましだという意識に現われてきている。東アジアの米軍の軍事力配置位置は安倍氏の動向次第で、大きく変わる可能性がある。それは安倍氏の織り込み済みの戦略なのかもしれない。
強い日本に進もうとすれば、どこの国も戦時中の尋常ではない日本を思い出すのだろう。その意味では確かに共産主義を辞めた中国の方がまだましだという、印象もあるのだろう。増して、中国の経済は日本を引き離し始めている。そして今後どんどんその差は開いて行くだろう。中国とアメリカの2強時代の可能性が高いと経団連では予測している。アメリカが日本に厳しくなる原因はこういうところにもある。だからと言って何も、アメリカのいいなりになる必要はない訳だが、強い日本など危険極まりないということに気付くべきだ。力の対決をすれば、どう考えても勝てない時代が来る。そうなれば核武装である。それがプルトニュームの返還要請であろう。次は放射性廃棄物の再処理の監視が言われるだろう。日本の世界での立場が、北朝鮮と同じことに陥入りかねない。武力で対抗するなど、無駄な抵抗なのだ。憲法9条を守る平和な、嫌われない日本を目指すことだ。それは江戸時代のような「地場・旬・自給」の日本である。それが本当の意味で強い日本である。