財政再建は、出来る訳がない。
消費税は上がることに決まった。それは必要なことだし、待ったなしである。消費税を社会保障目的税化して、社会保障の充実をはかると、一応は言われているが、これは消費税を上げるための理由にすぎない。今度消費税が3%上がり、8%になるが、5兆円くらい税収が増えるだろうということだ。それくらいでは、どうにもならないほど、今のままの社会保障制度を続けるには足りない。年金制度が作られた時の感じでは、月々1万円の積み立てをしておけば、年をとって10万円くらいの年金がもらえるということだった。ところがいよいよ年金を払わる時代になってみると、月の積み立てが、5万円くらいないと無理ということが見えてきた。その増加分を若い世代に積み立ててください。とお願いしている状態なのだろう。払わない人が増えるのもうなづける。今の年金世代は、大儲けしているのである。もちろん私も入れてである。票田になる世代は優遇される。団塊の世代はあれやこれや得をしてきたのだ。
同時に財政再建もすると主張している。でたらめと言えるほど、ほど遠いい話だ。社会保障費で足りなくなるのに、どうしたって、借金を減らせ訳がない。消費税を上げれば、何とか息が付けるというくらいのことと考えるしかない。道は1つしかない。社会保障全体を抜本見直しをして、もっと減額するほかない。今の社会保障のまま行くなら、消費税は30%にしなければならないという、経済状態なのだ。もう一つの道は、他の税収を増やすことだ。共産党なら、大企業から取れというところだろうが、自民党政権だから、むしろ法人税の減額が検討されている。財政再建どころではない。選挙お礼の大盤振る舞いのようなものだろう。国民全体で、東北の復興にまい進しようという時に、復興に充てる特別税を前倒しで、下げなければ日本から出てゆくと、経団連から脅かされているのだ。そんな連中には早く出て行ってもらった方が、日本の将来のためだ。
企業の景気が良くなり、税収も増加する。こういうことを安倍政権は考えている節がある。それもあってほしいことだが。日本の企業が独り勝ちできないのは、当たり前のことなのだ。世界経済は世界中の企業の競争で行われる。これは全く平等ではない競争である。敗戦後の日本は、あらゆる有利さを生かして、いち早く、競争に勝利した。主たる要因はすべての分野で、良く働き、良く頭を使った。日本人の江戸時代からの蓄積のすべてを注ぎ込むことが出来た。勤勉とか、観察能力が高いとかだ。協調性があり、自己犠牲の精神があった。しかし、日本人が田んぼから離れるに従い、そういう能力は失われた。後発グループもそれぞれの有利さを生かしつつ、追いつき追い越してゆく。当たり前のことだろう。民族間で能力差を考えるなどおかしなことだ。現状では競争に勝ち始めたのは、極端な能力主義の国である。1万人を犠牲にしても、一人の天才を生かそうという国である。
日本が国としてやるべきことは、どこに行くのかを決めることだ。運転の仕方ばかりが議論されて、どこに行くのか目的地が決まっていない。何となく、北欧型福祉国家にあこがれがあった訳だが、どうも日本人には上手く行かないようだ。日本の伝統的地域社会が1年ごとに、失われている。それを再構築しようという機運がない。公という考え方が、個人主義、能力本位によって、失われた。又それでなければ、国際競争に勝てないと考えているようだ。こういう基盤が崩れ始めている国家の状態の中では、良い人間関係が作りにくい。すべての組織の内部では、そういう人間劣化が目立つはずだ。JR北海道の状態は、日本中に蔓延していると考えた方がいい。瑞穂の国の公の復活は、もう不可能なのだ。日本の行く先が定まらないままに、競争だけに目を向ければ、個人と公が遊離する。阿倍氏の方針では、財政はさらに悪化してゆく。企業が良くなれば、国民の暮らし全般に波及するというのは、全くのウソだ。