TPP賛成論
TPP交渉が始まっている。アメリカから今年の暮れまでに結論を出したいという方針が打ち出されている。これでは日本の意見は、十分に聞いてもらえるのかどうか、不安が大きくなるばかりだ。米の例外品目の要求は、現段階で入れていないということである。交渉事だから、色々のやり方はあるのかもしれないが、米自由化問題を軽んじているとしか思えないが、大丈夫なのだろうか。主食の生産は、安全保障の問題でもある。経済を越えて自給して行くことが、国としての基本要件になると考えている。TPPが単なる自由貿易協定圏の設立を目指すのではなく、国家を越えたものとして、国家解体の方向が含まれているなら、別である。いまのままではグローバル企業の為に都合のよい、自由貿易圏の設立だけが先行する。瑞穂の国日本の文化を失ってからでは遅い。日本人が、パン食民族になっていいとは思わない。
TPPの思想自体は、まちがっているばかりではない。賛成の人に良識のある人が居ても当然である。TPPがEUのように、当面の貿易協定を越えて、未来に、国家の枠が取り払うことにつながるかもしれないという期待がある。TPP賛成論には、良識派の知識不足の意見がある。例えば熱心な農家はむしろ、TPP加盟を望んでいるという意見だ。もちろんそういう農家も沢山あり、テレビではバランスを取るために、必ずそういう農家の撮影をする。良く確認してもらいたいのだが、その農家は、果樹農家であったり、野菜農家であったりするはずだ。その通りで、すでに関税などない農業分野の農家なのであり、TPPなど関係のない農家なのだ。そういう農家をわざわざ取り上げて、努力する国際競争力のある農家もいるのです。一方頑迷なTPP加盟反対農家として、全農の集会などが取り上げられる。そして反対する農家として取り上げられるのが、田んぼを前に苦悩を語る稲作農家か、乳搾りをしている酪農家ということになる。
TPPで打撃を受けるのは、畜産農家と、稲作農家なのだ。これは別段稲作農家や、畜産農家が努力不足なのではない。ここを間違えないでほしい。ここを十分に調べてもらいたい。是非この違いを自覚したうえで意見を主張してもらいたい。農業は自然環境に大きく影響される産業である。沖縄を中心にしたサトウキビ農家もTPPで明らかに経営できなくなるのだが、それは、熱帯のサトウキビと、沖縄のサトウキビでは自然条件が違いすぎるのだ。沖縄の人がのんびりしていることが理由ではない。労賃の違いも当然出てくる。一次産業だから、労働費の占める割合が大きい。努力では越えられない壁もある。稲作では歴史的、文化的な側面もある。水土の成立と、地域社会の関係を深く考えてみる必要がある。縄文後期から、稲作を続ける中で日本人の成立に深くかかわったものだと思う。
日本が稲作を止めてもいい。と考えるかどうかである。国際競争力のある稲作は、ありえないことである。日本の稲作農業の特徴は、永続する農業である。同じ場所で、肥料もさして必要とせず、豊かな山の形成があれば十分に収穫がある。治水を兼ねたため池である田んぼ。総合的な経済性が、砂漠に井戸を掘り収奪的に土地を利用する、国際競争力だけを問題にする稲作と、競争をせざる得ないかになりかねない。それでも稲作など要らないというのであれば、国際競争力など言わずに、稲作を止めるべきという意見にしてもらいたい。そうでないと、努力不足の稲作農家を救済するために、TPPの交渉が不利に展開しているというような認識になりかねない。稲作が成立するためには、総合的な条件が必要である。稲作を残すべき地域を明確化する必要がある。それは残すべき地域ということでもある。そういう国のあり方を踏まえて、TPPを議論しなければならない。