中国の悪印象
中国の悪印象が、そして日本の悪印象。互いに90%以上の人が感じているという結果。日中共同世論調査の結果が公表された。9回行われた両国のアンケート調査の中で最悪の互い評価の結果だそうだ。たぶん誰もが感じている悪印象だろう。これは日中戦争時と変わらないほどではないか。何故こういうことになるのか。それは両国が互いを都合のよい仮想敵国として、設定しているからではないだろうか。中国政府は、日本が軍国主義化して進出してくる。という脅しを中国国民に示さなければならない、危うい格差社会の深刻化の事情がある。日本政府には、中国が覇権主義で利権を日本領土まで侵してくる。中国に浸食されてしまうという印象を強化している。ここに憲法改定し、国防軍を作りたいという思いを便乗させようとしている。つまり両国政府は日中の対立を本気で解決しようという意図は現状ではない。むしろ、武力的な衝突を待っているようなにらみ合いを歓迎している節がある。
戦後の両国の市民的平和への努力は、もろくも崩れ始めている。麻生副総理の冗談めかして、ポロっとナチスが出てくるあたりが、ただ事ではない。あの撤回コメントのでたらめ加減を聞くと、この人の頭の中は、漫画で出来ているのではないかと思える。全く、言っている通りで誤解を与えただけなら撤回する必要はない。こんなでたらめな論理を越えたような人間が、何故総理大臣になり、現在副総理を続けていられるのだろうか。麻生氏が日本の政府の印象なら、中国人の日本に対する、印象が悪化しているのもうなづけることだ。たぶんこの人は、戦前の軍国日本を素晴らしかったという、床屋談義のレベルの人なのだと思う。こういう無責任な発言の方が共感を生むというのも良くあることである。その結果、中国をさらに悪者にして置きたいという意図が強い。それは、これから起こる、財政の悪化と、軍事費の増大。社会保障の切り捨て、そして大増税。企業中心の経済運営。TPPの受け入れ。国民の反発を招くことが押し寄せてくるからだと思う。
中国の状況も相当に良くないと思われる。中国社会は歴史的に日本と比較してはるかに格差的である。富裕層問題と言うが、常にそうした社会構造で来たのだと思う。民族的にも多様であるし、南北対立が国内にあるほど広い国だ。近代国家とは言えないような側面と、極めて有能な中枢部と存在する。有能さと言えば、日本人を凌いでいるなと感じるような人と、そうでもない人とが混在している。日本のような均質社会ではない。中国にも家庭菜園がたくさんある。極めて熱心に作られている。そこにごみを平気で捨てる人もいる。蒋介石が中国人の新生活運動をやったという。これがなかなか興味深い内容で、反共国家主義と、儒教的生活倫理改善が一体となったものである。蒋介石に対する日本国内の分析と、蒋介石の国家的目標に、日中の対立の原因を感じる。
中国に置いて儒教的倫理が盛んに言われること自体が、倫理が崩壊しているからのような印象である。そこから立て直そうとした、蒋介石という人物はなかなか興味深い。中国人の優れたものから学ぶ姿勢を忘れない方がいい。民族の持つ体質そのものを改善することから、国家を建て直そうとする。中国を悪く言うことより、その良さから学ぶことの方が大切だろう。今その良さが見えなくなっているし、マスコミではあげつらうような問題点を拾い出すばかりである。農業においては、その4千年の永続農業はほかの古代文明とは、違う素晴らしさを持っていた。日本の自給農業も中国から学んで、作り上げられたものだ。日本人の根幹となっている、稲作文化自体が中国で生まれたものだ。井戸を掘った人を忘れてはならないだろう。