ごみの歴史
「キャンパスおだわら」という所から、生ごみクラブに講義の依頼があった。活動について話した。以下はそのメモである。
◎ごみは江戸時代は、存在しなかった。すべての製造物が、循環利用されていた。糞尿ですら高価な商品であるほど、それは徹底していた。特に農地を3000年継続して耕作可能にする農法を、東アジアでは確立した。4大文明が世界で誕生したが、循環型社会を確立して、今に至る永続性を確立しているのは、東アジア世界だけである。
◎産業革命以降工業化社会が形成され、工業製品が大量生産を始められる事に伴い、循環型社会が崩れて行く。ついには、人類はごみで滅びるのではないかと、予測される状況に至った。
◎放射能廃棄物に象徴される、処理方法の内ごみの登場である。環境ホルモンのように、微量でありながら、徐々に生物に影響を与えていると思われるものも存在する。
◎適正処理困難物が廃棄物法では決められている。加えて、小田和市では条例で定めている。(1) 有害性物質を含む物(2) 著しく悪臭を発する物(3) 危険性を有する物(4) 容量又は重量が著しく大きい物(5) 前各号に定める物のほか、市の行う処理に著しい支障を及ぼす物。という形で定めている。
◎化学合成物質の登場。アスベストを含む電化製品、農薬、医療系廃棄物。PCBのように一般には処理できないものが、生成されている。また、塩化ビニール類のように、焼却するとダイオキシン類を生成するものも登場した。環境ホルモン、放射性廃棄物。又、量的にも土壌が消化しきれる量が、日本のような一地域に集中する現象もある。エントロピーの増大。
◎長年、ごみは海に流したり、海の埋め立てに利用されていた。日本でも江戸時代にごみ埋め立てが、始まる。地球上全体でみれば、埋め立て処理が中心である国も多い。日本では何でも燃やしてしまえば煙に成って消える。という文化的思い込みがあった。大量消費大量廃棄時代に入り、焼却がごみ処理の主流になる。
◎最初は野焼きに始まる。金沢医王山の谷間で1970年代行われていた。谷間の埋め立てと焼却の混合。次にごみ焼却炉の登場。東京では、1960年当時夢の島の埋め立て処理でごみ戦争ぼっ発。各区1カ所の焼却処理が始まる。
◎しかし、小さい非効率な、焼却炉では着火時と埋火時にダイオキシンを出す。狭山での小さなごみ処理業者の乱立による、ダイオキシン騒動のぼっ発。これを契機に、より効率良く燃やそうと言う方向に進む。背景には、鉄鋼業や造船業の営業不振から、大型溶融炉開発への営業転換があり、政府経団連が連携を取って、進める。
◎大型溶融炉で、1800度以上高温にして、連続燃焼をする。この方式をごみ処理の主流にしようと言うことが、環境省によって進められてきた。その為にごみ処理広域化が登場する。これが、ごみは小さく身近で処理することが減量につながる。という、従来の処理思想を一転するものになる。これは灰処分が限界にあると言う事もある。特に、事業系ごみ、産廃との混合処理の問題が内在する。
◎小田原市でも2市8町を一地域として、大型焼却場を作ると言う話が進められる。ところがこのことは、ごみ減量社会とは逆の方向である。一定量のごみがなければできない燃焼法。遠距離を集めるための輸送コストの増大。溶融炉と言う巨大炉の事故の多発。高温であらゆるものを混合燃焼させた時に新たな、化合物の生成が起こる危険。危険なのはダイオキシン類だけではない。
◎小田原では1、燃やせるごみ。2、紙、布類。3、ペットボトル。4、トレー・プラスチック容器。5、缶類。6、ビン類。7、燃やせないごみ。8、蛍光灯、スプレー缶等、乾電池ほか筒型乾電池、ライター、ビデオテープ等、廃食用油食用油。9、大型ごみ。の9分別となる。とても難しい分類がある。
◎例えば江戸時代商品だった「灰」これはごみとして出す事が出来ない。本来、すべえの製品は廃棄に及ぶまで製造者責任が問われなければならない。これが義務づけられれば製造する段階で使用後の処理法が検討される。ところが、日本の法律では、その点が不徹底で、処理困難物が製造されているのが現状である。
◎各家庭の製造者責任と言えば、各家庭の生ごみである。燃やせるごみの40%を占めている。小田原ではごみ全体を見ると一人一日1100グラム。ここには事業系ごみが入っている。これが近年増大している。増大すると同時に、事業系ごみの区分けが変わり、家庭ごみとの境が崩れてきている。農家が営農に使ったごみは事業ごみだが、家庭ごみとして出されているものも多い。
◎一人当たりの家庭ごみ量でいえば、家庭ごみの中の燃やせるごみが584グラム程度。そのうち40%233グラムが生ごみ。一世帯(2,5人)人口総数197,853人。78,185世帯でいえば毎日580グラムの生ごみと考えればいい。これをごみとして出さなければ、ごみの減量が大きく進む。減量出来れば、広域化の必要がなくなる。今の炉を修繕してまだまだ使える。
◎では小田原市の1キロ当たりのごみ処理費は幾らか。持ち込みごみ処理費で言えば、1キロ25円。によると、すべての費用で総量を割ると40円と言うことになる。今後ごみの価格は精査されなければならない。つまり、各家庭で生ごみを処理してくれると、1日あたり14円から、23円位が節約になる。一年で見ると5100円から8400円を節約したことになる。◎廃棄物会計は環境省が作ったもの。今後ごみ処理費が有料化にならざるえにと考えられている。一袋10キロなら、400円くらいが原価になる。と言うようなことを明確にするために、作られたもの。
◎ごみ発電は経費節減にはなっていない。むしろ施設費や輸送費を入れると赤字である。こういう事も廃棄物会計を行うと見えてくる。
◎生ごみの堆肥化に取り組んでゆこうと言うので始まったのが。生ごみクラブの活動である。生ごみは、畑や庭に埋めてしまえば処理できる。もっと簡単に、もっと有効にと考えだされたのが、「段ボールコンポストである。」一つの段ボール箱で50キロから100キロの生ごみの処理が出来る。この点は後半の講義で笠原代表が担当します。
◎小田原市では、加藤市長が生ごみの堆肥化を政策として取り上げ、生ごみ堆肥化検討委員会をたちあげる。笹村は市民員として公募に手を挙げる。2年間にわたり生ごみの全国の事例を研究し、報告書を作る。市民自身が一字一句精査し作ったものである。「経費をかけないで、簡単な技術で、小規模にやる。」という考えで取りまとめられている。それは生ごみを集めると公害問題が起こる。費用が莫大にかかる。家庭では資源であるが、集めればごみになる。