組長をかたぎに変えた犬

   

 雷田 ドンちゃん

湘南タッズでは、10名くらいの人が、東北から来た犬の世話で一生懸命働いていた。若い女性ばかりである。「組長を堅気に変えた犬」㈱角川学芸出版 1,360円タッズの物語。犬は人間を変える。犬から学んだことの方が多い位である。確かに言葉に出来るようなことを、犬は教えてくれている訳ではない。しかし、犬は人間と暮らしながら、大きな自然の摂理のようなものを、自らの身体を持って教えてくれる。犬という動物が持つ、仲間意識や、生き抜く本能や、我慢強さ。言葉にすればそう言うことなのだが、彼等は自分の在り方に自然界の掟のようなものを、直の命で伝えている。「絆」がテーマとなっている。プロ野球がどれだけのものを我々に教えてくれるだろうとも、一匹の犬が示す、命がけの愛情にまさる絆は示せない。反抗的少年のだった私に対し、無言で伝えてくれたものの大きさは、今も忘れることは出来ない。彼等は「そう言うなよ。」といつも私の顔を見ていた。少年よ犬を飼え。

タッズさんとの出会いは、雷田である。子供のころブルドックを飼っていたが、その病弱なことで、つらい思いをした。しかし、その品格ある性格から多くのものを得た。又ブルドックを飼いたい。こう思っていた。しかし、「弱いからな―。」たまたま、ブルドックとブルテリアを交配した人が和歌山の方におられた。それで分けていただいたのが、「ドンちゃん」である。どんちゃん騒ぎのドンちゃんである。犬は1頭で飼うのはかわいそうだといつも考えていたので、その相棒を探した。そうして出会った犬が、ピットブルである。にんそうはまるでドンちゃんと変わらない。しかし、この犬凶暴に着き、要注意ということだ。しかし、どうも意見が分かれている。その中でグロリータッズ犬舎を知る。家庭犬のピットブルである。これだとひらめくものがあった。闘犬が戦うのは飼い主を助けようとする愛情であり、忠誠心である。

早速タッズさんに連絡したが、なかなか譲ってもらえなかった。ちゃんと飼ってくれる人以外には売れないというのだ。不思議なブリーダーがいるものである。話しているうちに、はっきりと断られてしまった。そうなるとまるで犬を飼う資格がない言われたようで腹が立つ。タッズさんよりも私の方が犬のことは知っている。犬とともに育ったのだ。しばらくして、やっとこさ信用してもらい、雷田を迎えることが出来た。想像通りピットブルという犬種の特徴は愛情の深さである。頭の良さもラブラドルに劣らない。この犬種は人類が作り出した最高の犬種かもしれない。ブルドックがブルバイティングから出来た犬でありながら、素晴らしい家庭県に成ったように、ピットブルは遠からず家庭犬種として最高と言われる時代が来ると思う。ところがこの犬は不幸なことに、飼育禁止の国もある。

闘犬などやる人間が悪い。犬には少しの責任もない。この素晴らしい犬種を何とか認めさせたいと、やくざな組長が思い立つ。そして、いつの間にかやくざが堅気になり、ドックシェルターを必死に引っ張っている。犬にはそうした力がある。タッズ父さんは能力が極めて高い。実行力は人並み外れている。信頼度も厚い。経営能力もある。こういう人がドックシェルターにはまったらどうなるか。素晴らしい事ではあるが、大変なことが起きている。それを天国のタッズとの約束だと、ひたすら突き進んでいる。今回の東北での大震災では、もう1カ月も仮眠生活を続けながら、奮闘している。出来るかぎりの支援を続けたい。この本の売り上げも、支援につながるので是非ともハンカチを用意して読んで欲しい。

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