TPPと農業補助金

   

TPPに日本が加わると、農業には3兆円の補助金が必要になると、農水省は試算を発表した。半分はお米だそうだ。もしその試算が正しいなら、国民全体の合意は得られるのだろうか。今経済が苦しい。乗り遅れまいとTPPに加わるだろう。問題は日本という国をどうしようと考えているのかだ。併せて農業分野の根本的な改革を行うと言っている。6月までのその方針を立てるそうだ。いかにも泥縄である。本来、まともな政府なら、今この時点でその方針が立っていなければならない。しかも、その方針たるや、今行われている農家の戸別補償の延長線上という意見が出ている。この方針では日本の意欲的農家は壊滅的打撃を受けることになる。国際競争力のある農業を目指すなら、戸別補償は止めた方がいい。戸別補償は基本的には弱い小さい農家を存続させるための政策である。しかもその弱い小さい農家は、我々のような新規就農者ではない。

戸別補償の平均額が、北海道では200万円を超える、と民主党の議員が自慢げに言っている映像をテレビは放映していた。北海道では、平成22年産水稲の作付面積は11万4,600ha。北海道の農業は、少なくとも神奈川県と同じに考えても始まらない。戸別補償は地域的な配慮というものはない。農業に置いて、北海道と神奈川県で同じ政策がとられた場合。どちらかが不利益となり、辞めざる得ない結果になる。地域の特性に配慮した、きめ細かな対策が必要なことは誰の目にも明らかである。ところが、農業では神奈川県は不要な地域だ。いつも追い込まれて、その場しのぎの対策だけが出て来るから、結局大きな農業の方向性は失われている。このままの流れで畑作農家にも戸別補償が出るらしい。畑作と言っても特定作物のようだ。となると、我々はいよいよ不利になる。そうした補助金をもらっている農家と、競争してやってゆかなければならない。

何故、政府は補助金ももらわない。小さいといえ、この社会の中で競争力も存在していて、永続している、我々のような弱小の新規就農者を潰してしまう政策を行うのだろう。農業の最大の問題は、農業者の減少である。何度も書いていることだが、耕地面積の減少、農業者の老齢化、すでに限界産業である。政策として一番取り組まなければならないのは、農業を全国民的に行うことである。どうすれば、日本の食糧が確保できるかである。このことは、国の根幹であり、TPP交渉以前の大問題である。そのめどが立たない状況のまま崩壊にに向かっているのは、政治の責任である。仕事が無くても、農業には向かわない。戸別補償など幾らやっても、農業人口は減少する。農業を新しく始めたくなるような、希望の持てる状況を政府は提示すべきだ。戸別補償は既存農家が当面をしのぐ為の効果に限定されている。

今苦しくとも、将来頑張れば道が開ける。そういう思いでご先祖は農地を開き、営々と農業を行ってきた。日本の国土はそうして、作られてきた箱庭のようなものだ。それを放棄し、荒れ放題にしてしまうようなことでは、苦労して国土を作り上げたご先祖に、申し訳の立たないことである。子供の私だって坊が峰のサツマイモ畑の開墾にリヤーカーを押した。今は荒れ地になっている。そうした無念は全国いたるところに充満している。どうすればいいかは、このブログで何度も書いているが、『地場・旬・自給』の考え方である。日本人が生き方を変える以外ない。TPPはその意味では、チャンスとなるかもしれない。多分政府は何の手を打てないまま加わるだろう。そうして場当たり的な対策を打ち出すだろう。農業はますます衰退する。転げ落ちる石は止められない。

 - Peace Cafe