大磯田んぼの始まり
大磯田んぼの一回目の作業があった。大磯の西端の谷戸田を田んぼに戻す作業だ。ここは冬水田んぼの出来る。またとない環境の田んぼだ。以前から、このすばらしい田んぼが、このまま荒れてゆくのが、忍びなく気になっていた。作業の途中犬を散歩されていた叔母さんが、夢中で話を始めた。ここが一面黄色い稲穂の海になった頃の話を、どんなにかすばらしかったかを、またあの景色が戻る事が、どれほど楽しみか、語られるのだ。作業が終わる頃、あわてて戻られて、そのころの写真があるからと、見せてくれるのだ。散歩コースに田んぼがあることが、どれだけ豊かな気持ちになるか。その日の作業はそのことだけで、もう満足だった。東京から参加された16名皆さんは、若い。こんな若者がいるというだけで、日本も捨てたモンじゃない。という気になる。この田んぼの一年が、彼らの気持ちを育てる何かになれば、また田んぼにはその力がある。
午後は中川さん宅で、お弁当を食べた。中川さんは京都、銀座、加賀市で、旅館をされているそうだ。以前永塚田んぼに息子さんが参加されて話しをしたことがあった。大磯に家をもたれた、市民活動に開放してくれるのだそうだ。その後、どんな田んぼにして行くか、話し合いがあった。このプランを聞いた時、ジョウタンジャナイヨ、10時に来て、昼までじゃ作業は1時間ちょっと、ダイジョウブカイ。そう思った。こういうのが、都会の若者のペースかな。などと思いながら、話し合いにも参加した。話を聞いていて、空気は少し見えた。いつもそうなのだが、先輩とか、年配者の余計な一言というのは、控えたほどいい。何も言わないで本当によかった。内容のある、いい話し合いになった。中心になる中村さんの覚悟も有り難い。
今年は、こっこ牧場の田んぼも始まる。こちらも2度ほど作業日があったのだが、待っていても来ない。しかし、余計な一言を言わないというのが、方針だから、1度目は30分待って黙って帰った。2度目はさすがに戻ってから電話を入れた。どうなっているのでしょう。なるたけ穏かに言ったつもりだったが。早速、車で杉山さんが見えた。笹村が来ないので、待っていたというのだ。おかしな事があるものだと思っていたら、何と田んぼを間違えていたのだ。1回目の作業も他所の田んぼでしていたのだ。CLCAの田んぼだ。確かに、似たようなものとはいえ、お茶畑の入り口の田んぼで、お茶摘には来ているのだから、間違えようも無いのに、ビックリした。控えるのも、いい塩梅にしないと、とんでもない事が起こる。
CLCAの田んぼは更に若者の田んぼだ。高校2年生が自主的に運営する田んぼだそうだ。足柄地域はこうして市民が参加して、田んぼをやってゆくには実に恵まれた条件なのだ。市民の暮らしと、農業環境が混在している。専業で経営してゆくには、面積が細分化され、利用しにくい。機械が入らないような田畑も多い。こうした地域こそ、これからの暮らしの見直しのための、農業。こういう視点から捉えてゆけば、市民も行政もやるべきことはいくらでもある。行政は法の整備、市民は暮らしのちょっとした見直し。いずれも、既存の農業者を支援してゆく形になるよう。現実的な検討が必要だ。その辺のいいバランスが見つけられるのが、足柄地域だろう。