米産牛肉の輸入再開
いよいよ、牛肉の輸入が再開される。どうも畜産にかかわる者の感覚から言うと、アメリカとの政治的駆け引きに終始していて、何を今更という気がしてくる。BSEに対して、アメリカが関心が無いことだけは確かである。日本向け牛肉と、アメリカ人が普通に食べている牛肉とはそもそも違うものだ。
アメリカではヤコブ病が既に発症している、らしい。にもかかわらず、アメリカでは環境団体もこの問題にどうも関心が無い。この問題のさなかアメリカで暮らし、最近アメリカからもどった、有機農業研究会の理事から状況を聞いた。不思議な事だが、アメリカとの文化の差としか言いようが無い。グルメ向きの牛肉を食べる人は少数派なのだ。きっと、アメリカでも急速に変わってきているとは思うが。
アメリカでも、都市部では有機農産物の生産は日本と同程度あるようだ。しかし、BSEを心配して、牛肉のサーベランスを要求するところは無いようだ。ある意味当然で、アメリカでは牛は放牧が普通の事だ。草を食べて放し飼いされている。安全な肉を選択できるのだ。ところが、日本の悪い影響で、指しの入った美味しい黒毛和牛を食べようというので、濃厚飼料を与えるようになった。
日本では、狭い小屋に繋がれて、アメリカから来た、濃厚飼料と呼ばれるものを与えられている。ここに肉骨粉をわざわざ混ぜていたのだ。そもそもこうした飼育法に、危険が潜んでいる。BSEはその一端だ。肉骨粉がダメだとなれば、合成化学物質が、混ぜられる事に成っている。こんなものが安全というたのだろうか。
世界には安全な肉はいくらでもある。放牧され、草しか食べた事の無い牛の肉だ。これをまずいといって、食べない事がおかしい。危険な肉を柔らかいとか、刺しが入っているとか、有り難がる日本の食文化がゆがんでいる。日本の影響の少ない、アルゼンチンの肉などどうだろうか。
BSEの原因は、いまひとつ明瞭にならないが、大方の推測では肉骨粉を与えた事のようだ。草食動物に、何故、こんな物を与えなければ成らないのか。結局おいしいものを食べたいという、人間の曲がった欲望だ。美味しいが、柔らかいとか、アブラが乗っているとか、ねじれた方向に進んだ。甘い。これも困ったものだ。甘くて、柔らかくて、油が乗っていれば美味しいのか。情け無いことだ。
そのものが持つ健康な、本来の味を楽しむ事が、食の基本だろう。実は牛肉は殆ど食べないので、なんとも言えないが。草だけ食べている牛がおいしくない。というので、食べないという事はおかしい。無理やり美味しくして食べようと言うので、共食いになる、肉骨粉などを与えるような、飼育法が許されるものだろうか。
これがヨーロッパから広がった、という事は、ヨーロッパも曲がったグルメなのだろう。フォアグラのように、そもそも病気の鳥の肝臓を食べようという、食文化だから、人間の食欲は不思議に曲がっている。
牛肉でも放し飼いの物は安全なはずだ。硬くて、油の乗って無い奴を食べればいい。アメリカでは自然交配が普通だ。だから、20ヶ月以下と言っても、はっきりはしないというのは、不思議が無い。
これに対し、消費者団体の指摘というのが、肝心のところに目が行かない。そもそも狭い小屋につないで、薬で管理し、人工的な餌を、詰め込んだような、日本の牛を何故安全と考えているのだろう。むしろアメリカの牛の方が、全体としては日本の牛より安全だ。食肉処理場の検査を日本から行って行う、これで安全が確認されたなど、全く方向が違う。
この機会に、肉牛生産の安全性そのものに目を向けてもらいたい物だ。日本でもごく少数だが、放牧牛をやっている人達はいる。こうした人たちが日本では理解されず、どれほどの苦労をしているか、実際のところを見てきて欲しい。牛乳の問題も、同様の深刻な問題がある。いつも、安全の本質を考えなければならない。