ロシアの状況を考えてみた。

ロシアはウクライナに武力行使をした。許しがたいことだ。何でこんな暴挙をするところまで進んでしまったのだろうか。ロシアは利権が武力によって守ることができると考えているのだろう。そんなことはあり得ないのだ。国内によほど深刻な問題があるのだろう。
武力行使をしなければ、ウクライナが西欧社会の一員になり、ロシアの孤立が深まると考えているのだろうか。それはジョージアも同じ状況である。ロシアは余りに孤立して、歪んだ思考に落ち込んでいるのかもしれない。
ウクライナは旧ソビエト連邦の一国である。ロシアはかつて共産主義を目指す、ソビエト連邦を作っていた。その目標は現在放棄され資本主義経済の国になった。連邦を形成していた衛星国が次々にソビエトに反旗を翻し、独立しNATOに加盟し、西欧的自由主義国家を選択した。ソビエトの支配を快く感じていなかったとしても当たり前の事だろう。
旧東ドイツはソビエト連邦の優等生と言われていた。オリンピックでも大活躍だった。しかし、1970年代に東欧のいろいろの場所を旅行して回ったことがあるが。EU諸国に比べてやはり生活が自由で無い苦しさという点がめだった。各国のウラ寂しい雰囲気は冷え冷えとした印象だった。ロシアは特に冷たい印象がつよかった。
結局のところソビエトは経済が停滞して、衛星国の維持ができなくなっていき、東欧諸国やソビエト連邦内の離反が起きた。ソビエトは経済崩壊をして、食べるものにさえ事欠くという状態まで落ち込んだことがある。それを資本主義経済で再生させたのが、プーチン大統領である。
1991年12月、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が崩壊した。 それから30年結局のところ産業と言うより、資源大国として石油輸出で経済を持ち直した。しかし2014年クリミア併合以来、世界各国から経済制裁を受けて、経済は良い状態とは言えない。ますますエネルギー輸出に依存することになる。
ソビエトは戦争をすることで、エネルギー価格が高騰して、ソビエト経済が好転する可能性を見ているのかもしれない。すでにエネルギーは急速に高騰している。もしそんな地獄の鬼のような発想をしているとすれば、ネロよりもヒットラーよりも悪い独裁者になる。
ソビエト連邦が崩壊して、資本主義経済に転換しようとしたエリチン政権は経済政策の失敗を招き、ソビエト時代に比べてさらにひどい貧困状態をもたらした。資本主義経済への移行に失敗をした結果である。一部の富豪が登場して、一般国民は食べるものさえなくなり、自給自足でしのいだのだ。
そこに登場した大統領がプーチンである。国民の絶大な支持を受けて経済の再生を断行する。国民全体に富が行くように富豪に制裁を加え、国民生活は大改善されることになる。ところが、徐々に世界との経済競争において、エネルギー輸出に依存しすぎ、価格の低迷によって経済が立ち行かなくなる。
2014年クリミアの併合が起こる。そして、世界から経済制裁を受けることになる。これでロシア経済はますます苦しくなる。特に、コロナ蔓延以降のこの2年間はエネルギー価格が下がり、国民の不満もかなり増してきた。結局のところ期待はエネルギー価格の上昇である。
本来であれば、新しい産業の創出であるが、それは日本でも同じで、新産業の創出はできない。貧困層がどのくらいいるかといえば、それでも日本よりはるかに良い状態で、10%程度とされている。日本は貧困率16%である。
貧困層を社会的セーフティーネットで救済するためには多額の税金を必要とするが、それが厳しくなっているのが、現状のロシアのようだ。日本は膨大な量の借金をして穴埋めをしている状態。もちろん日本は戦争をしたところで、何の解決にもならないのは当たり前のことだが。
ロシアはそうでもないのかもしれない。エネルギー価格が上がれば、そこそこ国民の生活は好転するのかもしれない。すでに最近のガソリンの高騰はソビエト経済には悪くないことなのだろう。資源大国ロシアは経済のために戦争を仕掛けている可能性がある。
ロシア経済の好転のためには本来であれば、産業構造の転換である。外資を導入して技術革新を図る必要がある。ところがクリミア戦争によって外資はロシアから撤退したままになっている。日本も極東シベリア開発を約束して反故にした。アラスカの天然ガス共同開発は継続。北方領土の返還はお預け。新産業の創出ができずロシア経済の脱皮は難しい状況にある。
資源輸出依存から転換しなければ、結局のところ経済の展望は生まれない。それは中東の石油依存国すべてに言われているところのことだ。プーチン大統領としては、ロシア経済を立て直すためには、ぎりぎりの地点にいたのかもしれない。
ロシアは経済制裁を踏まえて、中国との接近を図ることになった。中国とは以前は社会主義の路線の違いもあり、対立する関係であったが、両国とも資本主義になった。中国ロシア双方が欧米諸国から経済制裁を受ける状態になり、経済関係を深め貿易額も大きくなっている。
ロシアではある程度公正な選挙が行われるようになり、プーチン大統領の支持率は徐々に低下をしている。20年も権力を維持し今後も維持しようとすれば、何か経済に変わるべき求心力の強化を図る必要があるのだろう。それはやはり、外敵を作ることである。
国民の団結を図るためには、悪いのはNATOだという構図が必要になる。ロシア国内では反政府デモが起こるような状況も生まれている。反政府的な報道記者が暗殺される。半プーチンの政治家も殺されるような事件が起きている。求心力を再びと考えるプーチンはこの点でも戦争を行うしかなかったのかもしれない。
翻って考えてみると、日本の客観的情勢はロシアよりもひどい状態である。今のところは国民の不満は抑えられている。日本人の平和主義的な性格と、あきらめてしまう国民性のために、この生活の低下を仕方がないと今のところ受け入れているのだろう。
それがこれほど社会状況の悪化が続き、期待できるような展望も打ち出せない政府に対して、支持が続いている不思議である。確かに戦争をするよりはましだが。日本もこのところ、中国を仮想敵国に仕立てて、国民の目をそちらに向けようという誘導が目立つ。
ロシアが戦争が必要と考えるように、日本にも敵が必要な社会状況と考えているのが日本政府なのだろう。ロシアに必要なことは戦争ではなく、生産構造の革新的構築であろう。日本に必要なものはそれこそ放たれなかった第3の矢である。
そうだ、今の、今もロシアはウクライナをミサイル攻撃しているのだ。何とか止めて貰いたい。