中国の不動産不況
中国政府が不動産不況を公式に認めた。中国政府が経済の悪いことを認めるということは、よほどのことだと考えなければならない。共同富裕の考え方と、不動産投資は相容れないのだ。中国は豊かにはなったが、格差は大きな社会になった。
今までの習近平の独裁は良いこと以外公表しなかった。やっと発表したと言うことは、不動産価格が公にせざる得ないほど下がってきたのだ。下がり始めれば、投資の対象にはならない。政策的に下がる方向に舵を取ってきたこともあるが、下がり始めたと言うことを政府が認めて、投機熱を冷まそうと言うことかもしれない。
住宅の購入が投機の対象と言うことはいつか終わることだ。人口が減少期に入った中国ではどこかで住宅は余り始める可能性が出てきても不思議ではない。現状では住宅の必要数は13億の人口から考えればまだまだある。しかし、購入できる層がそろそろ限界にきた。
実需による買いではない以上将来住宅がいらなくなるかもと言うことで、投機の対象からはずれたと考えられる。もちろんそれは地方から始まるのだろう。地方が下がり始めれば、上海のような都会でも値上がりばかりではなくなる。日本では放棄される地域が出てきているが、中国でも同じことだろう。
しかし20年前もそう思ったが、日本の数倍の速度で経済成長をした。中国は計り知れないところがある。日本とは違う展開があるのかも知れない。問題は若年層が高学歴化して、就職が出来ない層が生まれている。このことと不動産不況との関連があると考えるべきだろう。
単純に考えれば、投資の対象は中国国内の不動産投資から海外に移るのだろう。中国の投資家はまさに金儲けの鬼であるに違いない。お金儲けの神様と言われた邱永漢氏や投資家ソフトバンク孫さんは分かりやすい。マンションを買うのは暮らす為が一番だ。
マンション投資をする人も日本にもいるが、税金との兼ね合いが大きい。住宅控除や相続税対策を上手く利用するわけだが、たぶん中国でも政府の考え方次第でマンション投資をどの程度衰退させてしまうのかは微妙なところではないだろうか。
25年前の中国国内では、すでに投資競争が起きていた。その頃の不動産価格が、日本と変わらなかったので驚いた。こっちで今買って置けば必ずもうかるからと、進めてくる人すらいた。私が名義を貸しても良いというような話だった。当時なら日本円の方が強かったからだ。まさかと当時は思ったのだが、その後の25年は確かにそう言う流れだった。今時私は富裕層だったかもしれない。
ところがいよいよその不動産神話が崩れたのだ。不動産価格というものは全てを表していると考るべきだ。日本でもこの30年の停滞期は不動産は上がらなかった。その前のバブル時代は急激な不動産投資が起こり、不動産価格はうなぎのぼりだった。この時代が日本の潮目だった。
日本毎年様子が変わるほどの高度成長だったが、中国は毎月様子が変わっていったのだ。よくあの高度成長に人間がついて行けたと思う。いや、やはりついて行けない人の方が沢山いるはずだ。その格差の底辺の人を何とかしたいというのが共同富裕の考え方なのだろう。
日本では不動産といえば土地である。ところが中国ではマンションになる。土地の所有が実に複雑で何度か教わったのだが、理解できなかった。この不可思議な土地利用制度の良さから説明をしようとするから、へんてこりんな制度にしか思えなかった。国家資本主義国中国である。マンションを投機対象にしたところが日本とは違う。
中国は日本以上の急激な経済成長である。相当に貧しい国から、一気に世界第2位の経済大国になった。それは優秀な中国人が、国家の号令の下に商売に熱中したからだ。一部の富裕層を作ることが、世界の経済競争に有利だからだ。その国家資本主義は商業主義の中国人にはよく理解できた。
そうした有数な金儲けの神様や投資家孫さんのような商売人が、日本の10倍以上入るのだ。25年前まだ貧しかった中国で、すでに日本よりも富裕層の数は多いと言われていた。その富裕層目当ての農業が有機農業だったのだ。牛乳をどのように集荷するかが問題になっていた。生産農家が毎朝自転車で配達をしていた。
私の関わった有機農業の普及でも、商売の話ばかりで、なかなか生産の方の話にならないことが普通だった。中国には伝統農業を続けている人も多くいて、何が有機農業かと考える人も多かった。農薬が悪い物と言うより、変えない人が多かったのだ。
その富裕層の投機熱と、富裕層を目指す教育の沸騰が恐ろしいほどだった。この日本の数倍の商売の熱狂をうまくコントロールして、中国の経済成長に結びつけたのが、習近平政権である。金儲けをさせてくれるから、気に入らなくても支持しているというのが本音であろうと想像している。
だから、金儲けが難しくなれば、中国全体に不満が渦巻いてくる。今のところ不動産不況は始まりが見えたに過ぎない。大半の中国人は習近平なら何とかしてくれると期待しているから、支持されているのだ。もし金儲けが出来ない独裁者では中国人は許さないだろう。
それが国家資本主義だ。日本で土地売買で儲ければ、それが中国の利益になる。そんな時代が日本にもあった。ニューヨークのビルを買う日本人がいたのだ。為替レートの問題がある。25年前、中国へ行けば何もかも安かった。ラーメン100円ぐらいの感覚だった。
筆や硯をいろいろ買った。上質な物は少なかった。向こうの画家の方と筆の話になったら、何と日本の鳩居堂で買っていると言われたのには驚いた。いま日本に来ればなんでも安い国だと思うのだろう。これが中国の爆買いなのだろう。
しかし、中国の元も下がり始めている。中国の住宅投資の背景には膨大な数の住宅を持たない人たちがいるので、住宅を持ちたいと考えるだろうという情勢が織り込まれている。ところがここにきて高学歴若年層の、就職先がなくなってきている。そこでマンション投機が覚めた。
苗場のリゾートマンションも億ションと呼ばれた物が、100万円単位に下がっている。マンションは土地と違って、年数が経てば評価が下がる。修繕費は年々上がって行く。中国のマンションもそうした年代に入ってきてくるだろう。かなり状況は厳しところがある。