西表島一日目
西表島大原港に到着。上原港が着岸できなかった。見た目はそれほどの風でもないのだが、この程度で上原港は着けないのかと驚いた。大原からバスで祖納に向かう。一時間余分に時間がかかった。石垣から2時間かかったことになる。船もバスも空いていたが、窓は開いて乗った。
石垣島から西表島に2泊3日で来た。竹富町島々応援クーポン券を利用している。売り出されたのはもう半年ほど前のことである。これは竹富町の島々を活性化するために石垣島市民向けに売り出されたものだった。西表島は竹富町の島なのだ。どこかの島に行きたいと思っていたし、島々を応援もしたいということで、購入した。
ところが石垣島でもコロナ感染が広がってしまい、簡単には他の島には行けない状況になった。いつになっても感染が続く、いよいよクーポン券の期限が近づいてきた。思い切って、この機会に西表島に行くことにした。目的はイリオモテヤマネコの保護活動に協力が出来るのかどうかを知りたいからである
イリオモテヤマネコは間違いなく日本で最も貴重な哺乳類である。絶滅危惧が強く心配されている。そもそも、西表島ぐらいの面積の島に固有種の肉食の哺乳類が生き残っていたと言うことが奇跡的なことなのだ。アマミノクロウサギ、ツシマヤマネコとどの種も島という、天敵のいない中で起きた奇跡である。
イリオモテヤマネコに関して一番の危機は交通事故である。毎年交通事故死が起きている。現在の推定生息数は100匹と言われている。ずいぶん昔の調査の数で実数の確認はいまでは誰にもできない。交通事故死がない。これがヤマネコ減少のためか、コロナで観光客減少のためか。ヤマネコ安全対策が効果を上げているのか。意見は分かれている。
専門家の意見では減少傾向では無いかと推測されている。このまま世界遺産にでも成れば、イリオモテヤマネコは絶滅してしまうのかもしれない。もし絶滅すれば、日本オオカミ以来の後世に語り継がれる悲劇になる。不安に駆られている。
この状況の中、クラウドファンディングでイリオモテヤマネコの保全活動をするという企画が立ち上がった。西表島で植物の研究をしておられる高相さんという方の立ち上げた企画である。高相さんは元琉球大学におられた先生のようだ。植物の方が専門の方らしい。
早速応募したのだが、残念ながら300万円の資金が集まらなかった。まさかと言う結果である。日本人のイリオモテヤマネコの保護意識は300万円のお金が集まらないレベルなのだ。テレビ局や報道機関は応援をしてくれなかったのだろうか。意識の低いものだ。
そもそも、300万円では何も出来ないだろうと思っていた。祖内部落から浦内川を登った当たりに、昔田んぼだったところがあり、そこを整備してイリオモテヤマネコが給餌できるような場所を作ることが構想のようだ。田んぼの周りに周回道路を作るらしい。そこからは道路の方に出てこれないようにもしようと言うことらしい。もちろん人にもその場所はわからない。
もう一つの疑問は公的機関との連携は取れているのだろうかということ。西表には国の野生生物保護センターがある。そこで必要だと考えるものであれば、300万円ぐらいの費用は出るのではないか。事務所の方に質問を出してみたが、このクラウドファンディングには反応なしである。反応なしは公務員の取る態度としては良くあることでおどろかない。
そこで、ともかく高相さんにお会いして、どのようなことなのか現状を教えていただきたいと考えて、11月23、24,25日と西表島に行くことにした。西表島は石垣島から45分である。往復の船賃が4000円ほどである。
朝一番の7時10分の船ならば、8時には西表上原につける。上原からの最終の船は17時30分である。つまり、一日の作業を日帰りで可能だと言うことになる。道具はどうすれば良いかとか、現地まではどうやって行けば良いかなど、課題はあるが、月に一度ぐらいはイリオモテヤマネコのために作業をするのも悪くない。
その作業予定地はイナバ林道のそばらしい。イナバ林道とは今は廃村になった祖内集落から稲葉集落への道である。稲葉集落は仲良田節の生まれた今は失われた集落である。祖内集落は数年前旅行できた場所だが、時間が静止しているような静かな部落である。田んぼが熱心に耕作されていたことが印象に残っているが。どの田んぼも電気柵で囲われていた。
24日25日はニライナリゾートに泊まる。前に来たとき泊まったニライカナイホテルは今はホシノリゾートに変わり、予約が取れないほど満杯である。前とまったく変わらないのに、星野の名前は絶大である。ニライナは小さなホテルであるが、こちらの方が気さくで気分の良いホテルである。ホシノの作られた自然は気持が休まらない。
24日の夜は初枝というお寿司屋さんを予約してたべた。とてもおいしいお店だった。なぜホテルで食事がないかはよくわからない。ニライナリゾートでは夕飯が無く、食べるところまで送迎してくれるというシステムである。ちょっと不思議だが、これはこれでいい。
高相さんから祖納部落周辺を案内していただきながら、どういう保全をするのかを教えていただいた。まずは計画を縮小してもう一度クラウドファンディングをする。今度は100万円だそうだ。これができたら、来年には活動を開始するという。
昔田んぼだったところで、げんざい原野に戻っている場所を昔のように水がたまる場所を作る。そこをイリオモテヤマネコがえさ場として使えるように維持する。それは人間を防ぐことを含めて、監視カメラのようなものを設置するということである。かなりすごい場所で、見つからないところだ。
これなら私も草刈りぐらいなら協力できそうなので、日程を合わせて参加できると思った。実際の大きな作業はクラウドファンディングで集めた費用で、現地の専門家に重機による作業はお願いするのだそうだ。田んぼを整備するというなら、何度も経験があるから、周辺整備ということならそれなりに役立つだろうと考えた。
なんと、こうした池については刈部さんも見えているという。連絡を取ってみて、西表に見える時には会いたいものだ。刈部さんの広い行動力には驚かされる。
むしろ緊急事態はアオウミガメだといわれた。この話にはびっくりしたのだが、アオウミガメが急速に増えていて、西表島周辺の海藻を食べつくしているのだそうだ。そのためにほかの魚への影響が出てきているらしい。その理由に驚いた。
アオウミガメはそもそも石垣島では専門の食堂があるほどの食材であったそうだ。その専門の漁師さんがいて、年間400頭から500頭は捕獲していたそうだ。ところがその方が亡くなられた後、ウミガメ漁がなくなった。そのために急増した。どう考えればいいのだろう。
急増したら、海藻がすべて食べつくされてしまい、日本中の山でシカが増えて困っているのと同じような状態になっているのだそうだ。現在一部をカメが入れないように囲って、海藻が再生できるのかどうかを調査しているところだそうだ。海藻がなくなれば、カメが減少するというようなことは起きないのだろうか。
初めてうかがう、希少生物に指定されたアオウミガメが、増えすぎて淘汰しなければならないという話だそうだ。そのほか、西表の帰化植物のことなどいろいろ教えていただいた。話はまだまだ合ったのだが、それについてはまた次回。