日本経済の緊急事態は迫っているのではないか。

   



 日本人の一人当たりのGDPは毎年下がっている。20年前にはベスト3にいた日本が現在26位。格差社会が進み、貧困率は確実に高まっている。アベ政権はこれでもアベノミクスは成功していると強弁している。これは裏を返せば、他に方策はありませんと宣言しているようなものだ。日本に新しい産業が産まれないと言う現実を直視しなければならない。カジノ所ではないのだ。

 GDPが幸福度を表すわけではないが、毎年順位を下げて、韓国や台湾と同レベルになった。経済の状況が悪くなっているということだろう。その理由は日本が産業国家ではなく、投資国家になっていると言うことにある。ものを生産する国ではなくなってきているのだ。

 言ってみれば、日本はカジノぐらいしか新しい産業の創出が出来ない国になっている。新たな産業に取り組む意欲が企業に失われた。危険を冒すより、わずかな利潤を求めて投資しておいた方がいいという選択。新たな世界に挑む冒険心が失われかかっている。

 日本の利潤の半分以上が世界への投資の結果と言うことである。日本は金貸しをして利息で儲けている国になった。これは産業的に考えれば、末期的な病状ではないだろうか。一例で言えばソフトバンクの孫社長の姿である。何かものを生産するよりも、よその企業に投資をして利潤を上げるというやり方である。

 企業は内部留保を高めていると言うことが毎年言われる。人件費に回さないで内部留保された資金は投資に回されている。企業がものの生産で利益を上げにくいために、設備投資をするよりも、人材投資をするよりも金融投資をした方がたしかな利益があると考えている。

 国は莫大な赤字国債を保有していている。日本銀行の国債保有高は500兆円となっている。国債発行の43.9%を日銀が保有している。財政赤字の面から言えばGDPの198%超になっている。財政赤字総額は1122兆円の異常事態である。

 投資で生き延びている国日本に未来はあるはずがない。生産が失われ、新しい産業が生まれなくなった日本は衰退するほかない。アメリカや中国の経済成長に投資をして、その利潤を得て当面生き延びている状態の日本が良いはずがない。

 これは確かに日本だけの問題ではなく、資本主義経済というものが限界に達した結果でもあるのだろう。資本主義は民主主義を育てると考えられてきた。ところが、一部のエリートだけが富を得て、中間層と呼ばれる人達が先細りしている。資本主義が富裕層と奴隷の専制政治を作り出している。

 それでも今のところ人間が生きるには十分なものがある。格差社会と言っても、飢え死にする人が続出しているわけではない。この生煮え状態が、社会から希望を奪っている。遠からず崩壊するという予感がしてならない。

 一次産業中心の時代は人間の能力差はせいぜい、二倍程度である。優秀な農家であっても、せいぜいお米を倍収穫できるぐらいだ。ところが工場で労働するとなると、人間の能力は10倍もの生産力の差になった。ところが、コンピューターのプログラミング能力と言うことになると、100倍1000倍が当たり前の能力差になる。先端技術は超エリートの世界である。
 今の子供たちの半分以上が、就職するときには今存在しない職業に就くと予想されている。その新しい職業は間違いなく、能力差が極めて大きな職業になるだろう。この能力差が格差社会を産むことになる。

 必要な人材というものは、特別のエリートだけである。その他の労働力は奴隷労働のようなものになる。外国人労働力の導入。社会には極端な富の偏在が起き始めた。その富を再投資して利益を得る。これが日本の陥っている生産しない資本主義の姿だと想像している。

 最低賃金を上げられない理由は、自分の企業に勤務する人材や設備に投資するよりも、よその企業に投資した方が、利潤が見込めると日本の企業が考えているからだろう。企業自身が新しい産業の展開に自信を失っている状態である。

 その主たる原因は人材の能力の衰退である。日本における教育への投資は世界水準から見ると相当にひどい状態に劣化した。OECDから勧告を受けているという状況。教育不足による一人一人の能力の衰退が起きているのだろう。

 さらに現実的には人口減少によって、労働人口の激減である。背景にあるのは少子化である。少子化の原因は社会不安が一番の要因と考えられる。資本主義では労働力は資本である。人口減少は資本の減少になる。

 少子化の解決は未来社会の明るい展望である。この先よくなるという実感があれば、人口は増加して行く。社会が機会均等の教育を保証していれば、人口減少もいくらかは緩和される。子供が2人いれば、十分な教育が不可能という現実的選択。

 残念なことに、原発事故以来日本人は明るい展望を持てなくなっている。原発事故は文明の転換を意味した。まさか、いつまでも原発にしがみつくほど,政府が無能で、無気力とは思わなかった。再生エネルギーへの転換を政府が諦めてしまうとは思わなかった。

 エネルギー資源を輸入に頼る日本は再生エネルギー技術に未来をかけるほかない。ところが、再生エネルギー技術に向かうどころか、既得権益の原子力発電にしがみつく以外道を見いだせない政府なのだ。燃料輸入価格の高騰が日本の貿易赤字の増大につながる状態である。

 日本は国破れて山河ありを、敗戦後体験した。明治帝国主義の無謀な覇権主義はみじめな敗戦で終わった。しかし、日本の国土は残り、この豊かな国土から再出発することが出来た。日本列島という自然環境に助けられたと言えるだろう。もう一度ここからやる他道は無いはずだ。

 資源の少ない国と言われるが、実は自給自足可能な豊かな資源大国であった。ところが、この豊かな自然に対して、気候変動が猛威を振るい始めている。農業をやるものとして、前例のないような異常気象により、深刻な打撃を受けている。豪雨災害は森林の管理不足から、たちまちの大災害を起こすようになっている。健全な国土作りは破綻を始めている。

 自然災害の増大が、食料を輸入に60%依存している日本を不安定化する。しかし、農業者人口の減少から、食糧の自給率はさらに下がる方向である。政府は本気で食糧自給をしようとはしない。国民もすでに地道な農業労働に耐えられなくなっているかもしれない。農産物の国際競争力強化と言うことで、主食作物が軽視されている。食糧自給率の向上を行わなければ暮らしの安定はない。

 日本が維持されているのは外国からの日本への投資でもある。円が安定通貨とまだ見られている。しかし、これ以上財政赤字が増加して行けば、海外からの投資は日本に向けられなくなる。財政の健全化をしなければ、頼みの綱である円の安定通貨と言うことも危うくなるだろう。現在の財政赤字をどう処理できるかが、日本の最後の頼み綱である。

 今後世界経済は停滞するとみなければならない。中国の経済の頭打ち。アメリカの一国主義の破綻。こうしたことで、世界の企業価値が下落すれば、投資立国・日本は計り知れないダメージを被ることになる。

 今後かなり厳しい状況が待っていると覚悟して、もう一度足下からそれぞれがやり直す以外日本の方角はないと思う。


 

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