石垣島名蔵アンパルや流域の自然環境保全と適切な利用
ラムサール条約に指定されている石垣島名蔵アンパルや流域の自然環境保全と適切な利用の推進に向け自然保護団体や行政機関、地域住民などでつくる「名蔵アンパル保全・利活用推進協議会」が25日、設立された。
環境省の生物多様性保全推進支援事業と石垣市まちづくり支援基金を活用する。現状を調査し、課題を整理した上で保全・利用計画を策定。名蔵アンパルや流域の自然環境保全と利用ルールにのっとった適切な利用を推進したい。ということのようである。
いつも絵を描かせて貰っている名蔵アンパルの環境保全が是非とも上手くいって貰いたい。名蔵アンパルの自然環境が素晴らしいものであるのは、人間の暮らしと、アンパルの自然環境のほどよい調和しているところにあると思う。
かつて、隆起珊瑚礁の湿原だった場所に田んぼが切り開かれた。人間の暮らしが作り出した自然の豊かさを見逃してはならないと思う。手つかずの自然に戻すことが自然環境保護だなどと考えては方向が違う。
生物の多様性はむしろ人間が関わることで、進められる場合もある。同じ農地であっても、一律に考えることはできない。サトウキビは単純な生物相になるだろうし、田んぼであれば、作り方次第で手つかずの自然よりも多様性を持つ可能性はある。
名蔵アンパルは人間の暮らしが織り込まれることで、自然の豊かさが維持されてきている場所なのだと思う。ラムサール条約では田んぼも対象に加えている。宮城県の蕪栗沼・周辺水田では水田がラムサール条約に登録されている。
「作られた自然」の何が悪いのか。「自然再生事業」の倫理学ーー吉永明弘 / 環境倫理学と言うものを読んだ。同感である。同感以上のものがある。太古の自然等というものを評価をしない。自然のままであることを一番だとは思わない。
人間にとって良い自然というものは、人間がつくりだした自然を含んだ調和した環境のことである。その意味で外来生物を忌み嫌うこともおかしな事だと思う。水田のイネも在来植物ではない。人間にとっての自然というものは人間の暮らが作り出すものだと思う。
どういう植物がそこの環境の豊かさを増すものかを考える必要がある。その観点はあくまで人間の暮らしという視点を失ってはならないと思う。水田農業の自然調和力を大切なものとしてみなくてはならない。
「自然林が素晴らしい。人工林は良くない。」こういう考えが環境原理主義者には広がっているが、人間の暮らしに良い林が一番良い自然環境である。黒木の単一性は問題であるが、雑木の林は多様性が生まれる。人間の手が入らなければ、里山の自然というものも存在しないものなのだ。
人工林が自然林と上手く調和した状況が、人間にとって良い自然である。人工林が利用される自然として貴重な場なのだ。それは人間の手が入ることで保たれる自然である。
里山の自然である。神社林や屋敷林は手つかずの林よりも大切なものだ。人間が踏み入ることの無い場所の自然よりも、里山の自然こそ人間の営みには大切なものなのだとおもう。人間が手入れによって関わることで、生まれる里地里山の自然環境こそ重要なものとしなければならない。
田んぼであっても畦や水路をコンクリート化するのは、自然環境を破壊する。あぜ道や田んぼの水路が管理によって自然の多様性を生み出す。それは手つかずの自然に、多様性を加えることになるかもしれない。
日本の自然環境である、里地里山の意味は世界に、自然環境保護の事例として、意義を示していいものだと思う。石垣島の名蔵アンパルは良い調和の可能性があると思う。今はひとつの過程なのだと思う。名蔵湾は赤土の流出が課題であろう。
赤土を流出させない農業のあり方を模索しなければならないのではないだろうか。今度、アンパル上部にゴルフ場ができるという。ゴルフ場がラムサール条約の観点からも歓迎されるようなゴルフ場を作って貰いたいと思う。それができれば、世界で一番美しいゴルフ場になるだろう事は間違いが無い。
人間の作為を含み込んで、豊かさを増してゆくのが里地里山の自然である。日本は世界に対して、世界里地里山条約を提唱してゆくといい。今、日本中で急速に失われていって居るのが、里地里山こそ生物多様性を確保できる自然環境である。
ここぞ残すべき里地里山である場所を指定して、保存する。私が知る限りでも、次々と失われている。私の生まれた場所である、山梨県藤垈もすでに里地里山環境を失いつつある。あの豊かだった山や川はどこに行ったのかと思う。
幸いなことに、石垣島の名蔵アンパルは独特の自然とそれを取り巻く農地がかろうじて調和をしている。そして手つかずの自然林へと続く。水田ばかりでもない。畑も様々にある。そして続く山には、牧草地が広がる。そしてさらに上部には、自然林がある。
ここにある条件が重要なのだと思う。今はバランスが崩れ加減にも見える。人間の関わり方の方向性である。人間の暮らしを優先しながらも、どう豊かさを維持できるかの良い事例になるのではないだろうか。
農地に関していえば、流域全体で一定の環境に負荷をかけない農法が約束されなければならないだろう。できれば有機農業が推奨されるべきだと思う。例えば、名蔵アンパル米として、付加価値を付けるようにする。
アンパルには山がある。沢水が流れ出ている。しみ出し水で作られている貴重な田んぼもある。その水が海岸付近では湿地を形成する。この形であれば、赤土の流失は避けることができる。今後より良い方向が打ち出されることを切に願っている。