口内環境
口の中の微生物の状態は健康にとっては影響大である。口は外部からものが入って来る場所だ。口は人間の体の入り口である。ここから悪いものが入れば、病気になる。また、外部から入るあらゆるものの関門でもある。本来の目的は食べてよいものと、食べてはならないものの判別機関である。おいしいという事を楽しむのであるが、美味しいものは体に良い。まずいものは体に悪い。これが健全にできていることが重要である。健全な味覚を育てるという事は健康にとって重要なことだ。塩分のあるものが美味しいのは、肉体を使っていた時代の名残でなかろうか。甘いものが欲しくなるのは、ストレス社会の結果ではないか。口の中の環境が悪ければ、味覚が悪くなる。口の中の良い環境とは良い菌が繁殖している状態である。良く歯を磨けばいいというようなことではない。殺菌するというような、うがい薬や、歯磨きに騙されてはならない。健全な微生物環境である。
人間の身体は自分ではない菌で支えられている。人間は微生物によって生かされている。菌というものを悪いものと決めつけてはならない。自分の細胞の数よりも自分の身体の中に存在する微生物の数の方が多いと言われている。そのすごい数の菌がどんなバランスで存在するかが人間の健康には重要なのだ。長年生き物を飼い、発酵利用の養鶏をやってきて痛感したところである。人間が歳をとり最後に死ぬという事は、たぶん体内の菌の環境が悪くなるという事だと考えている。虫歯になるという事も実は口の中の菌のバランスが崩れるという事だ。口の中の菌を除菌したり、殺菌したりすることでは、いつまでたっても良い口内の環境にならない。殺菌という対症療法より、良い菌と共存する環境。歯を磨くのは良いことである。本来の野生動物であれば、歯磨きなど要らないようなものを食べている。ところが、柔らかいのはおいしいの文化である。ほって置けば口内の環境は悪化せざる得ない。
私の叔父に生涯歯磨きをしなかった人がいる。大学の名誉教授までやった科学者である。単に不衛生な人ではない。この叔父は死ぬまで一本の歯も失う事がなかった。もちろん虫歯もなかった。そういう体質の人だったのだ。口の中の菌の状態が特別で、虫歯菌が繁殖できないような免疫を持っていたと思われる。似たような体質のいとこもいる。彼は小学校の6年生の時に歯が良いというので、学校で表彰を受けた。ところが歯磨きなどしないので恥ずかしくて、口を閉じたまま表彰を受けたといっていた。いずれもだらしのない家系の公表のようで困るのだが、彼は今市役所に勤勉に勤めている。歯を磨かなくとも普通に暮らしている。私は虫歯もあるが、何とか死ぬまで自分の歯で暮らせそうである。歯は磨いている。実は電動歯ブラシを使っている。食事のテーブルに置いてあり、磨きやすいようにしている。食後その場で磨くのである。うがいも特にしない。機械を使うなど後ろめたさはあるが、この方が短時間に効果が高い。歯磨き粉は使わない。
口の中の環境を良く保つには、良い食事である。常に良い微生物を補給することだ。そしてよく攪拌してやる。そして歯垢のような悪い菌の巣になるものを取り除くことだ。口の中や歯の間に食べ物が残って歯垢を作るようなことが一番良くない。歯垢内に存在する悪い菌が身体に入り込み、病気を起こす可能性もある。歯間ブラシを使って歯垢を完全にとる。血が出ても何ら構わないので、ガリガリとってやる方が理にかなっている。野生動物は歯が衰えて死ぬのだ。歯茎のマッサージも良い。口の中を活性化させておくような気持で管理すれば、良い微生物環境になる。歯を磨くのではなく、歯の根元、歯ぐきをこすり、刺激してやることが大切である。口の運動も必要である。食事の際には十分に口を使う。よく噛んで食べる。元気な口内環境には悪い菌は近寄れない。それは体全体の環境整備につながる。