アベノミクスの崩壊
八ケ岳冬 10号大
経常収支は3兆3061億円の黒字だった。黒字幅は前年に比べ31.5%縮小し、現行基準で比較可能な1985年以降では12年(4兆8237億円の黒字)を下回り最小だった。アベノミクスは成果を出せないまま終わると考えている。これはアベノミクスが実質経済を見ようとしなかったからである。全体が見せかけで出来ている。実際に経済の構造は何も変えることはできなかった。そして、経済格差を拡大させる役割は果たしている。この4月以降に、かなりの経済の衰退を予測しなければならないだろう。アベノミクスの主たる手法は、為替の変動による刺激策である。為替が円安に振れている間に、実質経済の転換が行われなければ、成果よりもそこから来る反動が日本経済の衰退させる。経済は公共事業の支出により、かろうじて上昇を示した。しかし、その後の反動により、4月以降深刻な不況に陥ると考えた方がいい。復興予算ということで、一定期間の財政支出も受け入れて頑張らなくてはならないという、社会的な理解があったと思う。しかし、その復興予算も、円高基調であれば、輸入に耐えることが出来た。円安に振れて燃料輸入価格の増加が貿易赤字として、膨らんできた。財政支出の膨張ほど、効果は上がらなくなる。
アベノミクス円安は、国内の一部製造業には恩恵をもたらしたが、こういうことは経済構造の転換とは何の関係もなく、既存経済を温存し、保護し、むしろ構造改革とはほど遠い結果をもたらしている。「給与を上げろ」などと、総理大臣が繰り返し唱えるのは、見苦しいパフォーマンスである。政府が本気で給与を上げたいのであれば、そういう政策をとる以外にない。しかし、実際には経済には給与を上げられる背景がない。安倍方式では、法人税を下げるから、給与を上げろと主張している。とんでもないことだ。給与を上げれば、企業の利益は減り、そもそも法人税は減るのだ。給与が下がったり、財政支出が増加するのは、日本の産業構造や、労働人口の減少、福祉予算の増加による。産業構成として高額の給与を出しても、利益を出せるような製造業は、海外に移転している。国内の労働人口が、福祉的産業に移動している以上、給与所得は増加するはずがない。
給与を上げるためには、賃上げではなく。賃金の高く出せる産業を作り出す以外にない。それが第3の矢のはずだった。ところが、古い企業体制を温存することばかりに、安倍内閣は熱心で、新産業については、建前論の口先だけで終わっている。法人税を下げるより、その分を新産業育成に使う方がはるかに日本経済の為に成るはずだ。アベノミックスの方向は、格差社会である。上の階層の人が頑張って、下の階層の方まで引っ張ってくれるという構想だろう。そういうことはあり得ない。大半の下の層の人たちは、給与の上昇など関係もなく、ワーキングプアーに固定化される。円安が日本の為に良いわけがない。日本人の下の層の暮らしは円高の方がいい。円安で企業が輸出をしやすくなるのは確かだが、その分暮らしは全体に苦しくなる。現代の暮らしは食糧すら6割が輸入に頼っている。エネルギーに関して言えば、大半が輸入だ。こういう構造で、円安誘導をするというのは、暮らしを追い詰めて、企業に一息つかせようということだ。
企業が良くなることが日本が良くなることになるというのが、アベノミックスである。だから給与を上げろなどと、口先介入である。給与が上がる政策をやればいいのだ。例えば、逆に法人税をもっと高くすれば、給与を上げる可能性はある。最低賃金を上げれば、全体の給与水準が上がる。このままでは日本はとんでもないどん底に向かう。新しい産業を創出しない限り、日本の可能性はない。それは例えば、山中教授であり、小保方さんである。政策として、そういうところに国を挙げて支援をするべきだ。それはエネルギー政策でも、原発にこだわる、既成製造業支援の為のものでなく、新産業として考え推進しなければ、世界をリードできるような新開発はできない。同時に、格差が縮小する政策をとる。頑張っている人が金銭でなく、誇りを持てる安心した社会である。農業をやることは収入は低いかもしれないが、誇りを持って、安定して取り組める仕組みを作る。はずれてくれればいいが、経済降下が近付いている。