石破幹事長の報道抑制発言
石破氏は11日の記者会見で、漏えいが禁じられる「特定秘密」を報道機関が報じた場合に処罰されることもあり得るとの見解を示し、その後に撤回した。一度は、「処罰される。」と答えたが、後に、「処罰されないが、抑制すべき。」と訂正したということである。前回は秘密保護法反対の絶叫デモはテロと同質だという発言もあった。この人は民主主義の価値を理解していない。デモなぞない方がいいし、報道は独自の判断など持たない方がいい、こう考えている。この人が軍事オタクだからと言って、軍国主義者であるとは思わない。自民党衆議院議員の代表的人物なのだろう。頭のキレる、なかなかのテレビ向きの人だと思う。キャンディーズの追っかけというようなことをテレビで発言するあたりが、なかなか抜け目のない人だという印象もある。自信に満ちたブログを書いている。主張の目立つ次の首相を目指す人なのだろう。何故、自民党が安倍氏、石破氏と、保守色が目立つ人が、あえて発言をするのかである。
日本の経済力が、アジアの近隣諸国に追い上げられていることにある。競争して勝たなければ、日本の存在が危ういという危機意識が、財界を中心とした日本の保守層に芽生えた。貧しいアジア諸国を日本が支えるというようなような、誇りを伴った気持ちが失われた。保守層は民主党政権の決められないねじれ国会では、日本は世界での経済競争に負ける国になる。これは、3、11以降の日本人の受けた、文明的な絶望感とも重なり、屈折した保守思想が回帰してきている。科学技術の発展が、暮らしを豊かにするとは限らないという、進歩信仰の消滅。このままの方角で行けば、さらなる崩壊が待ち受けているのではないか。暗い想念に多くの人が捉えられている。経済の衰退が何をもたらすのかの不安。こうした状況下、頑張ろうニッポンで、ある種の希望と、反動とで、保守的傾向が逆バネとして強まったのだろう。安倍氏も、石破氏も、変わった訳ではない。むしろ以前より本音は押し隠している。
競争に勝つためには、秘密は重要である。企業の技術力は競争の武器である。当然秘密保持を考えるだろう。たぶん稲作技術が先端技術であった、4000年前には、稲作を支える水土技術を確立しているものが、日本国というものを形成したのだろう。江戸時代には、幕藩体制であり、各藩が独立していながら、幕府の支配下にあるという、政治体制がとられる。経済は藩ごとの経営で、その技術力は、藩ごとに技術革新が奨励推進される。技術の秘密保持はいつの時代も存在した。人の移動は禁止されると同時に、百姓は資源として大切にされる。この点日本独自の封建制度を考えてみる必要がある。報徳思想を考えてみているのだが、倫理によって、経済が豊かになる。勤勉、倹約、報恩、であれば、自らが栄えるという思想。しかし、貧しさの根本原因が、藩や国という経済の問題であり、自己努力という範囲では乗り越えられない壁が存在する。国の問題を、個人の倫理の問題にすり替えてしまう危険。この点は改めてもう少し詳しく考えてみたい。
競争に勝つために、格差社会の方が、有効であるという考えが生まれる。機密は国の競争の根幹であるから、勝つためには情報管理は、徹底しなければならない。反政府的な発言は競争に勝つためには、邪魔なものとなる。いわば利敵行為と認識され、統制の方法が意識される。競争社会は、そもそも民主主義社会ではない。本当の民主主義社会とは、競争を越えた共存共栄の社会のはずである。意見の異なるものを認め、互いの存在を大切にする社会。弱者も、少数者も等しく大切にされる社会。これでは国際競争には勝てない社会ということになっているのだろう。アメリカのような能力主義社会が競争に勝つ社会という認識。サムソンの社員になることが人生の目的になるような韓国。何故能力主義になるかと言えば、人間というものを信頼していないということだと思う。建前では、誰もが同じ人権があるとしながらも、実は能力によって、差別されるのはいたしかたないとする社会である。石破氏は有能な自分に黙ってついてきてくれれば、競争に勝てるという考えなのだろう。