苗代の水管理
「田んぼは水で採る。畑は土で採る。」という言葉を読んだことがある。その通りだと田んぼをやればやるほど思うようになった。田んぼに入る水が良ければ、この言葉通りで、田んぼの土壌に何かを加える必要はない。それだけで、10俵まで採れるはずだ。山が良い落ち葉の堆肥場になっていて、そこからの絞り水が田んぼに入るなら、その水で最高のお米が畝どり出来る。屋根などに落ちる雨水だけで田んぼを作った経験がある。この場合、田んぼの土に肥料を加えて作るしかなかった。山が海の恋人だとするなら、山は田んぼの母親である。水は母乳のようなものである。田んぼに入る水の大元にある山がどういう状態であるかを判断しなくてはならない。針葉樹だろうが落葉樹だろうが、木が十分にあればまずは良い。黒木ばかりの山では、確かに良くはないが、全くダメという訳でもない。田んぼに良い山は、単純林でないことだろう。草でもいい、表土が何かに覆われているということは大切なこと。
水の透明度で気づいたのだが、ただ上から見て透き通っているは間違えのようだ。今年は種もみをきれいに澄んだ久野川に浸して置いたのだが、溜まる泥の多さは驚くほどだった。これは、昨年6月に4か所?で山が崩れたためと考えられる。最近までの川の濁りは、林道の土木工事のためだった。これが終わり、だんだんきれいになってきたと言われていたのだが、今度は豪雨による山崩れが起こるようになった。これは今後さらに深刻になるだろう。林道の作り方と、残土の処理の仕方には工夫が必要である。ますます、山の管理が重要になると思われる。母親が荒れていたのでは、良い田んぼの水はできない。豊かな森のある山は田んぼを行う最も大切な要素だ。ミネラルが豊富で、腐植質が混ざっている。しかし、泥は入らない。
4月21日より苗代の水管理が始まった。当面の目標は出来るだけ早く芽を出させることである。早くて5日ぐらいかかる。保温と水管理。陽が当たった時の午後2時に水温は27,5度あった。水は苗箱が濡れているくらい。水没するほど水を入れるのは良くない。水やりのような気持ちで水管理するのがいい。セルトレーのそこ穴から、水を吸い上げる状態が良い。水温は上げられるだけ上げる。今年は一枚上の田んぼで貯め水にして、温めた水を入れている。苗代の水は排水はしないで浸透と蒸発で無くなるぐらいの量を入水する。川の水位や湧水の量を見ながら、入水量を調整する。保温のことでついでに書いておけば、どのようなシートであれ、べたがけはだめ。シートによっては芽が絡んで取れなくなる。またテント状に空気層を作り温めたほうが、良い状態になる。穴あきビニールでもできる。この場合風邪対策とシートで完全に水を閉じては良くない。また外す時期の見定めが必要。
芽が出たなら水は少しづつ増やしてゆく。あまり深くないのであれば、水没しても大丈夫である。水没させ、また水を抜くを繰り返してゆくことが良い。そして2葉期を過ぎる頃には、ひょろひょろせずがっしりした感じになるように持ってゆく。その頃からは、常に水がある状態にしておく。5月に入れば、それほど寒い日はなくなるので、しっかり水を貯めてゆく。4葉期から5葉期の分げつが始まるような苗を目指すには、根元は水没するくらいの水位がある方がいい。根がしっかりとセルトレーの底から伸びて、苗代に広がってゆかなくてはならない。以上の考え方は、野生の稲が河岸に昨秋種もみが落ちて、やがて眼を出してくる過程を想像して考えた方法である。苗作りは稲作全体に影響する重要な作業だ。良い苗を作るには、良い水と水管理こそ重要である。野外で滞りなくすくすく育つ状態が一番だと思う。苗箱で成苗を目指す場合は、2葉期まではハウスで管理することにしている。その後、苗代に置く。田植え以降の水管理は、改めて。