水彩人展開催

   

水彩人展が始まりました。10月3日(1日は休み)まで東京都美術館で開催されます。素晴らしい水彩画の展覧会に成っていますので、是非ともご覧ください。写真は美術館の方の厳しい最終確認の様子です。

何点か水彩人の考え方が伝わる作品を取り上げてみます。栗原直子さん(同人)の作品です。12号のPサイズくらいの絵です。水彩画の良さは作品の大きさではないという事が良く分かります。作家の世界が、親密さを伴って展開しています。絵が生まれて来ると言う事が良く分かります。描く人の世界が現れる。見ると言う事の意味が良く分かる。

山吉さん(会員)の作品です。大きさは10号位でしょうか。山吉さんは10年ほど前から、水彩人の仲間として活動してきました。少しづつ絵の世界を深めてきた結果が、今回の作品に、結晶のように表れていると思います。絵が良くなるということが、どういうことなのか見させてもらいました。水彩画で最も大切なものは作者のものの見方であることが、良く分かる作品だと思います。

山本さんの作品。やはり15号Fくらいの作品。色が格別に深い。水彩画の色彩特徴がよく表れている。描く内容が一気に深い。色がただ美しいということではなく、作者の感じ方に色が追随する。絵の具の色彩が、作者の色に成る。

大日野の作品20号位か。初めての出品された方である。絵がどういうものであるかを良く自覚されている。これからどのように絵画世界が展開されるのか。興味深い。

大原さん(同人)の作品。一見日本画の下書きのようにみえる作品。水彩画の位置が分かる。本来、作品は一つである。水彩画を志す物が、伝統的な絵画から構想するということは、世界を広げて行く試みとして興味深い。12か月図である。各月に漢字一文字の大がつけられている。芽:3月と言うような形である。

絵の展覧会の事だから見ていただくしかないことなのですが。14回目の水彩人展は一つの到達点であり、同時に再出発の場でもある。到達と言う意味では、10号程度の水彩画が東京都美術館と言う、穴あきボードの大きな壁に、埋没してしまわないかと言う事であった。小さな絵を公募展で展示することは、おかしいという事ということで、従来の水彩画の団体では拒否されてきた。しかし、水彩画の素材的大きさと言う事がある。誰しも普通に描く、大きさと言うものがある。水彩画が日常の中にあるという意味では、小さな作品にむしろその本質が存在する可能性がある。微妙な色調を生かして描く場合、大作という大きさに災いされることもある。今回の水彩人展は水彩画の当たり前の大きさで公募展が可能であるということは示していると思う。

もう一つは、水彩人としては、一般に公募して審査するという形は、ある意味初めてのことである。水彩人の考えている水彩画と言うものを、どれだけの人が理解してくれるかである。考え方を変えないまま、作品が集まるのだろうかという点で、とても不安があった。しかし、水彩人の水彩画と言える絵がこれほど集まった。ここからのすべてのことは始まると言う気がする。では水彩人の水彩画とは何か、それは同人の作品が表しているものである。同人の作品も様々である。今回も同人の作品評を審査の最後に行った。互いに感じていることを、対等に率直に厳しく、語り合おうと言う事だ。こういう事を続けているグループは少ないと思う。本気で物を言いあい、喧嘩に成りながらも、互いを認め合う。これをいつまで続けることで、水彩人の水彩画と言う永遠のテーマが探求されるのだろう。

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