野田政権のあがき

   

野田政権は命がけで税と社会福祉制度の全体を見直すはずだった。ところが、増税だけは法案が成立したが、社会福祉制度や年金の見直しは、流してしまった。つまり三党合意の茶番劇はこういうことだったのだ。怖ろしい政治である。社会福祉制度や、年金制度は又改めてということになる。それなら、消費税に近いうち解散すらなくなった。これが野田政権の言う、実行しようにも出来ない、増税を実現したという政治の実態である。野田総理の個人的な末路や、民主党の崩壊なども、あまり関係のないことである。しかし、消費税の増税だけは、誰にもかかわることである。社会福祉も、年金制度も、関係のない人はいない。どうしてこうも政治がいい加減なものになってしまったのだろうか。尖閣や、竹島の問題が起きた。国家の非常事態である。解散どころではないだろうという意見が、マスコミに出てきている。東日本大震災後の国土計画。TPPや農業改革の行方。肝心なことはどうなったのか。

野田氏の領土問題記者会見は完全に国内向けであった。総理大臣の記者会見であれば、海外に向けて日本の主張を示す絶好の機会である。竹島の歴史的に日本である証拠の歴史的資料を特定して、示さなければ意味がない。尖閣も、北方4島についても今後の具体的な対応を示さなくてはならない。野田氏の会見での話しかたは、筋が通っているように見えるが、外交上では極めて不足している。ただ、日本の固有領土と主張するのでは、韓国の態度と変わらない。尖閣がいかなる意味で日本なのか、分かりやすく事実に触れなければならない。北方4島の人道的な問題などに触れていたが、こういうことは外交上発言すると、ここに付け込まれる可能性が高い。あくまで、戦後の日ロ不可侵条約の一方的な破棄に始まり、シベリア抑留と日本兵の強制労働、劣悪な環境による大量死に話を展開すべきだ。そうしたロシアの不当な日本の敗戦に伴うどさくさに紛れた、北方4島の不当な占領であることまで、触れる必要がある。世界に日本の権利をアピールする機会を逃している。

原子力の安全を監視、規制する委員の選定も流れた。おかしな委員長を内定したことがそもそも不思議なことだ。野田氏の方向性も、本気度もまるで見えてこない。どういう根拠で委員長候補の田中俊一氏を選んだのか。2007年から内閣府原子力委員長代理である。規制と推進との判別も付かないのか。何とか原発を再開したい一念かもしれないが、冷静さを欠いた人選である。原発を推進したいと考えるなら、規制委員会にはより中立から脱原発的な人を選ばなければならない。それが国民の不安への保障になる。この辺の感性が政治家としておかしい。基準が狂っている。総理という職が荷が重く、あがいているとしか思えない。命がけの増税で、肝心の政治の本質を見失ったということになる。

そして、民主党の党首選挙が近付いている。野田氏に変わる人が名乗りあげない。どうしたことだろうか。野田氏のままで選挙に入れば、民主党は崩壊する。唯一の可能性は、枝野氏が明確に脱原発を打ち出し、名乗りを上げることのような気がするが、枝野氏はどうも言動が揺れるので、問題はある。選挙はどこまでも先送りする。その内橋本新党も、みんなの党と同様に勢いを失う。いかに先延ばしにしても、来年にはやらざる得ない。多分、泥船に乗ろうと言うより、他の舟に脱出する方法を、大方の議員の模索するところとなっている。延ばせば延ばすほど脱出議員が増えて行くことになる。民主党のやるべきことは、マニュフェストの発表である。そして、0%への筋道を示し、脱原発を明確に打ち出す。多分生き残るにはこの方法以外にない。民主党は実現したい政策があると言うより、生き残りが一番の目的なのだから、この道を選択する可能性はある。

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