ソバカス抑草考

   

稲作に於ける雑草対策としての、ソバカス抑草法は、5つの効果を期待していまる。ソバカスとは、蕎麦を製粉する前処理として、蕎麦殻の外についているけばのようなものを除去する際に出来るものである。
1、 浮遊して、物理的遮光効果。 ソバカスは晴天であれば、5日間浮遊している。
2、 ソバの持つアレロパシー物質ルチン等による発芽抑制効果。
3、 沈んで発酵し、分解する過程での放出する有機酸の一種といわれる発芽抑制効果。
4、 ミジンコ等の大量発生による、ふわふわ層の形成。小さな草が埋もれる効果。
5、 緑肥の漉き込み残渣の分解を早め、代かきによる土壌の腐敗方向を食い止める。
その前段として、4つの前提が必要であるのは、田んぼをはじめる際に考えたて変わらないことである。
1、永続性のある、循環技術になっているか。
2、誰にでもできる簡単な技術に整理できているか。
3、経済的合理性があるか。
4、裏作ができる技術か。

ソバカスが4つの条件に適うためには、まだまだ今後の検証を継続しなくてはならない事である。幾つか気が付いた事を書きとめておく。

1、地域の平均収量に達しなければならない事。
2、冬の景観的植栽は裏作に等しい評価をして良いということ。
3、水の使用量が地域の事情と矛盾しない方法であること。
4、土壌条件の分析法の研究。沈殿法による、数値化。
5、抑草技術と健康な稲作が矛盾しない事。

①地域の平均収量は、単純に全国的でも良いのだが、それなら、反収550キロと言う事になる。日照の多少、水温の違い、土壌の条件などによって、実際は地域ごとに大きく異なる。江戸時代の年貢米の査定法のように、上田、下田の区分を踏まえ、その田んぼに相応しい収量を設定し、その程度の収量は上がるような、技術体系でありたい。過ぎたるは及ばざるが如しで、多すぎる技術も良いとは言えないだろう。舟原、坊所は420キロ反収を設定する。鬼柳であれば、480キロ反収とする。下大井であれば、もう少し多いいかもしれない。これ以下になる技術では、農業技術に値しない。

②クリムソンクローバーがとても地域で喜ばれた。菜の花の時とは大違いである。菜の花は黄色い。黄色い花や、白い花は、駄農のイメージと繋がっているかもしれない。その点、レンゲもよかったようだが、クリムソンクロバーは圧倒的な評価があった。わざわざ見に来て写真を撮る地方紙もあった。美しい農村の価値からすると、裏作的価値を考えてもいいのではないかと思われる。

③水のことは深刻に考えておきたい。地域によっては不足してゆく可能性も考えておく必要がある。深水によるヒエの抑草が許されなくなる可能性も考えておく。ドンブラコの水だ。こう言われる口調に何となくある、批判的ニュアンスを感ずる。地域によって異なるだろうが、水の足りなかった時代の残存だけではないかもしれない。水神様を祭るような、水を大切に使う意味、水に対する畏敬の気持ちの存在。これから、水が日本の一番の重要な資源になるであろう中で、水を大切にする農法が求められる。

④土壌の違いが、農法に与える影響はきわめて大きい。関西系の人の意見がもうひとつピンと来ないことがあるのは、どうも粘度質の違いのようだ。粘土タイプは谷戸田と平野部の田んぼでも大違いである。クサリを引くチェーン除草法は、土の粘土質により、浮遊状態が変わるようだ。沈殿時間を量り、何分、何時間以上なら効果有りとか、区分できるように思える。

⑤健康的稲作、と言うとどうもイメージだけになるが、草1本ない田んぼがいい状態には思えない。草が適度に出てくるぐらいの方がいい。稲の生育を阻害しない限り、草が発芽できる土壌環境の方が良い。今年の観察では、田植え後の生育の比較で、抑草効果の高い田んぼは初期生育が、良いとは言えない。生き物にもダメージが強い場合もあり、環境的影響も多分に考えられるので、一言では言えないが、草が全くない状態には何か違和感がある。これはおかしいのだろうか。

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