自民党と民主党の農業マニュフェスト
参議院選に向けての自民党と民主党のマニュフェストの農業政策を、検討して見た。地方の票が勝負を分けるとして、久々にどちらも農業に関心を見せている。一番の特徴は両者が自分の主張もさておいて、互いの問題点をやたら指摘していることだ。幾つかの対立点がある。
1、個別販売農家への所得保障制度の是非。2、集落営農などの大規模化の是非。3、食糧自給100%の現実性。4、農産物の貿易自由化。 順次考えて見る。
「所得保障制度」選挙の公約だから、保障制度の違いはあるにしても、どちらも保障で農家は経営が良くなると書いてある。民主党が新しく打ち出している。保障制度は輸入の卵が一個5円で売られるようになったら、私の所の卵は55円なので、50円を保証してくれるという話らしい。どうやってその差額を査定するのだろう。国内での差額も当然様々。現実離れしすぎていて、自分との繋がりが理解しがたい。といって、自民党の場合はEU並みの規模となった畜産・酪農については、コスト縮減でこれまでどおり応援します。とあるのみで、これまで応援された覚えはないから、これまでどおりと言う事は、たぶん私のような小さい所の邪魔ばかりする大規模向きの保障制度という、理解でいいのだろう。
「大規模化の是非」日本の場合、大規模化など間違っても出来ない。大規模にして経済合理性があるような基盤がない。自民党が繰り返し主張する大規模化は、言葉だけ絵空事。現在、政府自民党が推進しているやり方が、日本の農村に止めを刺す。結果になるだろう。では民主党はというと、大規模化については触れていない。小さい兼業農家も、非農家さえも大事にしてくれると言うので、そのやり方はと言うと、書いてない。大規模化即経営合理化と考えていないだけいい。大きいから苦しいと言う事は最近つぶれた、静岡の大手養鶏業の事例でも分かる。
「食糧自給」民主党が100%自給をうたっている。ところがよく読むと10年で10%の自給を向上させる。さらに将来的に60%にする。目標としては100%を目指す。何か、だんだん、だまされている様な、まぁー現実的なような。しかし、その方法論が個別所得保障だから、現実とのつながりはどうも見えてこない。しかし、100%自給可能と言う所がいい。自民党は何と、100%自給するには今の3,5倍の農地がなければ不可能と断言している。根拠が明らかにおかしい。今現在40%自給している現実はどこへ行くのだろう。たぶん、国際分業の計算を無視している。もしそう考えるなら、農地を3,5倍に増やしても、あるいは人口を3,5分の1にしても、あるいは肉食禁止にしても、食糧自給するのが、政府の役割だ。
「貿易自由化」両者とも自由化を進めるそうだ。これは両党とも間違っている。食料を他の工業生産品などと、同じに考えてはならない。どのような保障制度をつくろうとも、あるいは輸出農産物を作り出そうとも、食料は生存権にかかわる問題だ。貿易自由化のなかで、食料を同等に考える必要がない。
いずれにしても、このマニュフェストで農家の未来が開けると、思える農家の人がいるだろうか。たぶん、どちらにしても駄目だな。と言うのが、農家の本音だろう。日本人が今のままの暮らしをしながら、生活の利便性を維持したまま、農業の未来を考えるから、現実とかけ離れるだけだ。日本人は暮らしを大きく変えるしかない。