足柄の農業の可能性
2016/08/08
この地域に住み始めて21年経った。この間農業に関わり、その可能性を追いかけてきた。様々な有能な、この地域の農業者に出会い、教えを受け、目を開かれてきた。今、この地域で農業を続けている人達は、地域の宝となる人達だ。その行われている農業を、見つめてみることで、この地域にある可能性は見えてくるところだ。
市、県、行政が、農業と言うものに、本音では展望を持っていないという事は悲しい事だ。翻って日本全体を見たとき、農業に展望が持てないなど、言っていられない地域が、いくらでもある。神奈川県、そして西湘地域が産業がそれなりに存在する為、他産業と比較して、農業の経済効率の悪さを、感ずるのだろう。
西湘地域に於いて、農業に展望がもてないとすれば、日本の農業は何処でも成立はしない。観点を変えれば、これほど農業に大きな可能性のある地域は少ないと思う。
経済地理的に考えてみる。
○大消費地が、混在している。
○気候条件がいい。
○農地がいい。
○水が豊かで、水利がいい。
○農業者の補充が、利きやすい。
○優秀な研究機関が存在する。
欠点と言えば、大規模農業が出来ない。ことぐらいか。以上の条件から今後の地域の農業を考えるなら、
一言で都市農業だ。この成功例をモデルに考えれば、様々な方向が考えられる。
行政が行うべきは、その成功事例を元に、農業の形の転換を提案してゆくことだろう。
西湘地域の農業の歴史的背景は、大きく2つ考える必要がある。
1、バブルによる、地価の上昇。2、みかんによる農業の成功体験。この2つの為に、健全な農業の展望が、農地所有者にとって、考えにくくなっているんだと思う。農地の地価が、坪10万円を越えて、言われていた。行政の買収価格が、そうした価格を裏付けている。ところが、暴落して、今直、下落しているが、所有者の脳裏には、高値の農地のイメージが定着してしまい。新しい、公共事業、あるいは住宅開発などでの買収を、期待してしまう気持ちが存在する。
同時にミカン農業での大成功があり、無理な農地開発も行われ、ミカンに変わる農作物の開発が出来ないでいる。
以上の心理的な重さから、都市農業の可能性を模索す前向きな思いが、生まれにくい状況になっている。ここに国の農業政策の、大規模化、生産コストの削減と言う、この地域の農業にとっては、マイナスになるばかりの政策の為、行政も展望が持てなくなっているのだろう。
しかし、この地域の土地の持つ経済地理的条件を、客観的に見直せば、充分農業に可能性がある。一つは、観光農業だ。すでに成功している人もいるが、山梨の果樹のように集積されることで、より効果がでるので、地域で取り組む必要があろう。例えば、「油絞り園」等はどうだろうか。油を絞れる作物を、オリーブ、くるみ、菜の花、ゴマ、などを栽培して、生絞りをして、持ち帰ることが出来る農園。
いずれにしても、これからの農産物は物語が必要だ。「根府川の、美しい自然の中で、夢を持つ農家の、ごん太郎さんと、ドン子さんが、心をこめて作った、みかんですよ。」これが大切だと思う。儲からないから止めたいけど、土地の値上がりがあるから、我慢して作っているミカンでは、売ることは出来ないだろう。