与那国島に台湾村構想

のぼたん園の見学者
在沖縄郷友会有志によって与那国島に「台湾村」を作る準備会が立ち上げられた。その目的の一つに移住希望者への土地の提供だと書かれている。可能性のある魅力的な計画である。若い頃ならばすぐにでも与那国島に移住しただろう。さすがに今からでは残念ながら無理だ。
その趣意書では、台湾の商人の与那国島への進出の支援をするとある。文化、教育、ビジネスでの台湾との交流拡大。そして、与那国台湾航路の復活。台湾観光客の西表、石垣、那覇への渡航拠点としての与那国島の充実を計るとある。いずれも出来れば素晴らしいことになるだろう。
与那国島の人口減少に歯止めをかけ、将来の目標を3000人を目指すとしている。台湾村に提供する土地は4万9000平方メートルの土地を想定して、地権者に呼びかけている。又、台湾有事に置いては台湾から与那国への疎開も想定しているという。
この計画は夢があって良い。しかし、実際を考えてみると、実現はなかなか難しいものがありそうだ。台湾からの観光客が与那国島に来る魅力をどのように造り出すかである。現状では台湾人が台湾村を観光することは無い気がする。日本の観光客が与那国に行き、台湾村の観光をすると言うことが考えられる。
与那国島の観光客の現状はコロナ前一年36,323人とある。つまり土日で200人くらいである。半分の100人が台湾村に行き買い物をしたとしても、賑わいの創出はむずかしい。新しい商売が成り立つことはかなり難しとかんがえていいのだろう。
このままでは台湾から出店があるとも思われない。残念ながら、現状の観光客を当てにした台湾村は難しいようだ。台湾の人が気軽に行きたくなる外国の島。台湾の人にしてみれば、日本の離島与那国島は行ってみたい魅力があるはずだ。又それだけの魅力もある。
日本の観光客は与那国島の台湾村より、台湾の方へ惹かれてしまう。どうもその辺りが難しすぎる。一番の可能性は台湾から船での観光が気楽に出来る条件が可能かである。問題は船や港湾である。距離的には台湾とは、約111kmの距離 。石垣島から約127km 。
与那国と石垣の間には週二便のフェリー航路がある。4時間である。3550円。石垣からの飛行機だと1日三便あって8400円。与那国那覇間には一日一便が就航している。21640円。これを見ると台湾から1万円以内で飛行機があればと思うのだが。
問題は台湾と与那国の間をどのように結ぶ事ができるのかである。ここに成否がかかっている。船便を考えた場合、台湾与那国の間の海は荒れることが多いという問題もあるようだ。台湾からの大型フェリーが与那国島に立ち寄るためには、港湾の規模の問題があり難しい。
石垣との定期船が可能なのだから、台湾との間に週2便でも定期船が運航されれば、状況が変わるかもしれない。採算がとれるかと言うと現状では難しいだろう。台湾観光客の関税の免除とか、何か特別立法による政府の支援がなければ、成立しないだろう。
このように考えてみると、台湾村が実現するためには、様々な仕掛けが必要と思われる。良い仕掛けを思いつく能力はないのだが、台湾観光客向けの教室はどうだろうか。台湾に行ったときに、一日台湾語教室があればと思ったのだ。日本語がしゃべれる先生が、台湾観光のための語学教室をやってくれると良いと思った。
石垣島には中国語教室はある。しかし、台湾の現地で教えてもらえれば、身につき方も違うという物だ。同じことで、与那国島で1週間の日本語教室があれば、台湾から来てくれるかも知れない。お試し日本語教室である。宿泊と観光と美味しい食事と、日本語教室付きの高くはないツアーが出来れば希望がある。
与那国島の人口増加策にはやはり、離島観光だけでは難しいと言うことだろう。台湾村は与那国島の魅力的な暮らしを求めて与那国島に移住する人達の拠点と言うことしなければならない。与那国島に行ったときに感じた一番残念な点は与那国島に暮らす人との接点がまるでないと言うことだった。
やっと田んぼでおじいさんを見付けて声をかけて、色々聞かせていただいた。何故田んぼがやられなくなったのかを、教えていただいた。教えて頂きながら、島の農業者と話が出来たことが、一番の収穫だったし、大きな魅力になった。
石垣島でも同じことなのだが、観光客と石垣島の住民がどのように接点を作れるかだろう。直接はなかなか難しいことだから、その取り持つ通訳のような役割が必要になる。それは、民芸教室でも語学教室でも、マリンスポーツでも良いのだと思うのだが、場を作ることが必要だ。
私が石垣島に移住した一番の理由は生活そのものは小田原よりも便利と言うことに尽きる。日常の買い物や外食は歩いて行ける範囲でかなり充実している。ホームセンターの充実はかなりのものだ。電気製品の大型店やドンキホーテ大型ドラッグストアーも多すぎるほどある。観光客需要を見込んでのことなのだろう。今は通販もあるから、買い物で困ることは全くない。
レストランの多様さと食料品の充実、生のクロマグロ、石垣牛、車エビと日本でもも屈指では無いだろうか。だから、美味しいものが食べたい中国や台湾からの観光客は石垣に来たいのだと思う。石垣島と与那国島は大分違う。与那国島から石垣に移住した人は多い。
与那国島はほかに無いくらい魅力的で条件の良い島だ。かつては6000人を超える人が自給的に暮らしていた島だ。その島の最高の人口数を記録した時代が江戸時代というところがある。青ヶ島はそうだ。たぶんほかにもあるはずだ。与那国島もそうかも知れない。
江戸時代はすべての人が自給的に暮らしていた。だから、島は案外に暮らしやすい条件だった。島流しなどと言うが、流されなくても島にわざわざ移住して暮らし、島から出ない人がいくらでもいたのだ。島の人口減少が進んでいるのは、今の今である。
これから世界が食糧危機の時代に入る。それは世界の耕地面積はもう限界なのに、人口が増加を続けているからだ。現状でも食糧危機に陥っている人々が、9人に一人なのだ。8億人の人が飢餓状況にあるのだ。そして、日本の食糧自給率は37%なのだ。
日本政府はそれに対して何の手立ても打てないでいる。その点政府に期待はしても無駄だ。スガ元総理大臣が強調したように自助努力しか無い。そういう時代が来るのだから、与那国島は悪くない。台湾村は自助努力の村がいい。
台湾村にはいつも台湾の人が来ている状況を作り出す。日本語教室や民芸教室、与那国馬や水牛などとのふれあいの広場もあると良い。そして日本の観光客と交流できる状況を作り出す。台湾村の住人はその両者の通訳になれるひとである。
私は必ず、のぼたん農園にいる。居るだけなのだが、それでも違う。台湾村で働いている村人がいる。村人はどこから来ましたかと話しかけるだけで良い。水牛がいますよ。与那国馬がいます。どうですか。中国語を勉強してみませんか。日本語を勉強してみませんか。こう言う空気が作り出せるかどうかだ。