戦う覚悟などいらない。

   



 麻生氏は台湾で講演をして「戦う覚悟が必要だ」と叫んだ。これには驚いた。麻生氏が戦う覚悟が必要としたのは誰のことだ。台湾に戦う覚悟が必要と発言したのではないだろう。台湾は致し方なく戦う覚悟を持っている。では自衛隊に覚悟が必要とのことなのか。

 自衛隊は台湾で戦う準備もないし、計画もない。大半の隊員には覚悟はないだろう。もし自衛隊の式典で発言したのであれば、退職者が出るだろう。では日本国民に戦う覚悟を呼びかけたのか。まったく驚くべき発言だがどうもそうらしい。

 どだい年寄の麻生氏など戦争で戦う覚悟などした所でまったく役立たない。日本国民が軍備に対して、意識が低いことを腹立てているのだろう。そして対中国の軍備態勢を強化しようと言う呼びかけなのだ。最近の岸田政権は盛んに台湾侵攻をあおり立てている。

 私には戦う覚悟など全くない。軟弱なへなちょこで沢山である。勇ましいことが立派なことであるなどまったく考えない。戦いを回避することが政治家の力量だと思う。どうやって戦わず、国際紛争を解決するかが日本の政治家の力量だ。平和憲法によって政府に指示されていることだ。

 年寄の冷や水でついつい勇ましいことを言いたくなったのだろうか。昔の日本軍人を思い起こしてしまう。年寄は所詮精神論者ばかりだ。自分にはやれないことなのだ。「必要なことは覚悟ではなく、中国に台湾侵攻をさせない政治的戦略」が必要なのだ。平和の為には戦う覚悟などと大声を出す輩は、百害あって一利なし。

 中国と平和的な関係を作れるかが政府の一番の役割なのだ。そう日本国憲法にあるだろう。国際紛争は平和的手段で解決する事が決められている。麻生氏はそういう努力をしたことが無い。平和の努力をしないで、憲法違反の戦う覚悟を国民に呼びかけるなど犯罪である。

 最近の岸田政権は中国脅威論を盛んに吹聴している。今回の麻生氏の台湾訪問や、戦う覚悟発言もその路線にある。台湾を支持するのは大切だし。私も是非台湾を守らなければならないと考えている。それを現実の世界情勢の中で、どのように実現するか、政治的戦略が必要なのだ。

 まさか戦う覚悟ぐらいで、何かの抑止力になると考えてはいないだろうな。精神論を持ち出すところが、日本の政治家が世界の軍事情勢が見えない証拠である。具体的に中国が戦えないようにするための、例えば「台湾と日本で、半導体を共同開発しよう。」こういう発言の方が意味がある。

 麻生氏がこうした馬鹿な発言をした本音は、日本人の大半が極楽トンボで危機感がない。これではアメリカに要請されている、南西諸島のミサイル基地化が進まない。アメリカの属国の忖度政治家としては、防人の島を作る義務があると考えているのだ。この国民を無視した、特に先島の住民を無視した考えが実におかしな考えなのだ。

 アメリカは中国が怖いのだ。中国は遠からずアメリカに匹敵する経済大国になるだろう。これだけは間違いない。国土は広いし、人口もアメリカの数倍である。アメリカよりは国内の人心も安定している。国民の学習意欲も高い。アメリカは競争に負けると考えて恐ろしくて仕方がないのだ。

 アメリカは日本や、韓国や、台湾を対中国の防人国家にしようと言うことだろう。確かにアメリカの軍事力の圧力で、中国は台湾侵攻を思いとどまっている。アメリカは戦う覚悟ではなく、戦う実践の軍事配備を進めている。麻生氏は自衛隊に台湾侵攻に対する実戦配備を進めようとしているのだろう。しかしその覚悟など、まだ国会で議論したことも無い。

 こうした歪んだ防衛論議が出てくる根本原因は、核抑止論を信仰していることにある。核を持てない日本はアメリカに依存する以外に国防はないと考えているのだ。だからすべてがアメリカの言いなりになるのだ。もし南西諸島を防人の島にするなら、危険の増した島の負担の見返りは何なのか。原子力廃棄物の受け入れ自治体とおなじではないか。

 しかし、世界ではロシアがその核抑止論を崩壊させた。戦争に負けるときには、原爆を使うとウクライナを脅しているのだ。プーチンには核抑止は出来ないことになった。それこそ核抑止は精神論なのだ。核爆弾を使う覚悟の問題なのだ。この抑止力がロシアによって崩壊した。

 プーチンは自分が戦争犯罪者で処刑されるぐらいなら、核爆弾を使うだろう。金正恩も習近平もおなじだ。核抑止は独裁者には通用しないのだ。そもそも国民の命など考えていない人間に、核抑止論は通用しない。もうアメリカの核の下にいたところで効果が無い。

 ナトウ軍の原爆使用の覚悟があるなら、ナトウ軍はもしロシアが原爆を使えば、すぐ打ち返すと発言するだろう。ロシアの原爆攻撃が現実にあるかも知れないという情勢では、自国の安全が優先で、ロシアに原爆を打ち込むとは言えないのだ。最後は我が身が可愛い。

 アメリカが日本が原爆攻撃をされたときに、果たして自国が原爆攻撃される可能性が高くても、中国に原爆を打ち込めるだろうか。それは出来ないと言うのが、ウクライナ侵攻におけるナトウ軍の態度である。だから、ナトウにウクライナを加盟させないのだ。ここで加盟させたら、ナトウとロシアが全面戦争になりかねない。

 それはアメリカと日本の日米安全保障条約でも同じである。中国が核爆弾で脅したときに、日本の為に中国の核攻撃の危機を受け入れることはないと言うことだ。核兵器が抑止力になるためには、世界中のどこの国も核攻撃すれば、その他の核保有国から一斉に核攻撃がされなければならない。

 ところが、ロシアが核攻撃しても、中国は静観するだけだろう。この状態では、核抑止論は成立しないのだ。これは別段核の問題だけではない。通常兵器であっても同じである。ナトウはウクライナへ武器の援助を行うが、専守防衛の枠がはめられている。

 ロシア国内を攻撃できる兵器はウクライナが自国で生産した物だけなのだ。どこの国も他国の戦争で、自国が巻き込まれることを受け入れることはない。戦う覚悟を強調するとはそういうことなのだ。具体的なことが出来ないから、精神論が出てくる。このようにしてまた戦前の世界に戻ろうとしている。

 日本がやるべき事は中国が台湾侵攻をしにくい、東アジア情勢を作ることだ。もし台湾侵攻をすれば、大損をするという経済的な状況を作り出すことだ。そうすれば商人的気質の中国では、商売の邪魔になるようなことは止めた方が良いと言うことになる。

 先ずは台湾、韓国、日本が共同経済圏を作ることだ。3国が緊密に協働して中国の経済に対校することが出来れば、決して中国の経済に劣らない規模になる。フィリピンまで加われば、さらに良いだろう。軍事同盟は危険を増す。経済連携の方が良い。台湾に行ったならば、そのことを話し合ってもらいたい。

 アメリカを加えない方が効果が高まる。平和外交とは経済外交のことなのかも知れない。独裁国家が戦争に走るのは、国民の暮らしを考えていないからだ。日本人が、南西諸島に暮らす人が、安全を確保するためには、間違っても戦う覚悟などではない。

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