のぼたん農園の稲の品種の選定

のぼたん農園の自給稲作技術は「あかうきくさ農法」と「ひこばえ農法」の二つの技術を基本としている。現状では課題が見えてきたというところである。石垣の気候に適合する稲の品種がまだ見つからないと言うことが、最大の課題である。
沖縄県では稲の奨励品種として、「ひとめぼれ」と「ミルキーサマー」餅米品種としては「ゆがふもち」が指定されている。この3種を3年間栽培してみたが、葉が13枚までしか出ないという不完全な生育に留まった。この先繰り返しても十分な稲作にはならないと判断した。新しい品種を探さなければならない。
それでは何か可能性がある品種が無いのかと、様々な機関に問い合わせてみたが、期待できる品種はないと言うことである。また石垣島の気候に適合する品種の作出も、どこの研究施設でも試みられていないと言うことが分った。台湾や中国では行われていることが、日本の研究機関では諦めてしまったと言うことになる。悲しい日本の稲作の未来が見えてしまう。

石垣島にはJIRCAS熱帯農業研究センター(熱研と呼ばれている。)という物がある。本来であればここで研究すべき事であろうが、ここでもそういう熱帯気候に向いた品種の作出努力はされていない。日本の稲作研究者の数は極端に多いのだが、どんな研究に力を入れているのだろうか。日本全体が亜熱帯化してきているのに、大丈夫なのだろうか。
亜熱帯向きの品種の作出で成功している事例を見ると、ジャポニカ種とインディカ種の交配によって行われているようだ。そうした交配は戦前に台湾で磯博士によって交配された事が始まりである。蓬莱米と呼ばれた台中65号が先駆的事例である。
台中65号を昨年手に入れて作ってみたが、欠点が多く現代にあらためて作るほどの品種ではないことが分った。ただし、インディカとジャポニカの交配種の中に、亜熱帯気候で安定して作れる品種がある事は確かなので、色々試作してきた。「台光」は比較的良かったが、ばらつきが大きすぎた。

その中で一番、栽培結果が良かったのがハッピーヒルである。のぼたん農園でも、初めて満作になったのだ。ハッピーヒルは自然農法を提唱された福岡正信氏が作出したものである。終戦直後、ビルマの奥地から日本兵が持ち帰った長稈多粒のモチ種と、日本の穂重型の品種を交配して、福岡正信氏が1986年に固定した品種。
長稈強稈で倒伏に強い。耐干性が強く、陸稲に近いものもある。雑草に強い。条件が悪い田畑で特性が発揮されるので、不耕起、無肥料、無農薬の自然栽培に向く。多肥栽培した場合、超多収となり10a1tどり以上も可能。(一穂300~400粒着生し、平均200~250粒実る。(一平米の茎数を200~300本に留める)。
晩生種で分けつ多く大株になるので、条間・株間40〜45cm位で1、2本植えが最適。30cm間隔、3〜4本植えでも栽培可。 ●粘土団子を用いた水田稲作自然農法・米麦連続不耕起直播では、秋の麦粘土団子蒔きから始める(春の稲作りから始めると失敗する)。
稲刈り前の9月上旬に緑肥クローバーまたはウマゴヤシ等を播種し、10月下旬に麦(裸麦が最適)を団子蒔きした後、11月に稲刈りが終わったら稲わらを全面にふる。翌年4月に麦が出穂した後、5月に稲を団子蒔きし、5月末麦刈りを行う。6月繁茂した緑肥クローバの間から稲の芽が伸びてきた頃、田に水を入れてクローバを枯らす 。
のぼたん農園では圷さんが野口種苗さんから分けていただいた種で始めた。60㎝角1本植えで栽培した。最初は戸惑うような栽培で、枯れた株もあった。しかし根付いてからの成長は、めざましい物で分ゲツも40以上になった。ともかく野太い分ゲツに驚かされた。
ひと株に平均して40ほどの穂がついた。株の大きさは一番大きな株は1m50㎝にも成った。穂の様子にはばらつきがあり、確かに粟のような穂になるものもあるが、普通の稲のような穂もある。穂は確かに大きいが200粒を超えるかどうかと言う気がする。
株が他の品種の稲とは競べられないほど太く長い茎になる。この10㎜はあるしっかりした茎のために強い風に吹かれても、不念になる確率が低いようだ。圷さんは不耕起、無肥料に近い形で栽培しているのに、満作の株になった。肥料分が少ない土壌でも栽培できると言うことでは無いかと思われる。

圷さんは4月に田植えをして9月末に収穫予定だという。かなり晩生の品種だと思われる。晩稲品種でなければ、自然農法向きではない。ゆっくり成長でなければ満作には出来ないと考えて良い。もち品種とうるち品種があるということなので、食べてみて食味の合う方を作ってみたいと思う。
12月末田植えで6月始め稲刈りを目標にしたらどうかと考えている。それならば台風を避けられる。6月に稲刈りをして台風を避けることは石垣の稲作では重要なことになる。6月に出るひこばえならば、何とか11月稲刈りに出来るのでは無いか。
これからひこばえの試験を圷さんがしてくれることになっている。ひこばえの生育も悪くないのであれば、この品種をのぼたん農園の主要品種にして良いのではないかと考えている。今までのひこばえ栽培の経験ではインディカ種とジャポニカ種の交配種はひこばえは比較的上手くゆくようだ。