アメリカと中国の競争

   




 アメリカは中国に追い抜い抜かれるかも知れないと恐れ始めている。中国人は広大な国土で、しかも13億人も優秀な人々の居る国だから、国の仕組みが良くなれば経済成長するのは当然のことだろう。アメリカの経済を追い抜く可能性も高いだろう。

 問題は中国の独裁的な政治体制がいつまで続くのかである。100年前の中国は近代化が遅れ、国の成り立ちがおかしくなっていた。西欧の列強や日本が進出をして、戦争になりその後共産革命が起こる。遅れてしまったこにの体制をなんとか建て直すためには、強権的な政治が必要だったはずだ。

 急速に国力を向上させるためにはこうした、強権的な政治体制をとり、共産主義を標榜し人心の改革が必要だったのだろう。そして、国家資本主義で国家改造をするほかなかったのだろうと思う。その結果、人権が無視されてきた側面はあるが、生活がめざましく良くなった。そして50年の間に世界の水準に追いついた。

 独裁的に経済を国家運営と連動させ、世界の経済との競争に勝ち抜く方式である。WHOの枠組みでは中国はまだ先進国に指定されていない。にもかかわらず、中国がアメリカに追いつき始めているという、経済大国という世界経済全体から見ると歪んだ構造である。自由主義経済が想定しなかった競争の形なのだ。

 かなり鈍化してきているとは言え、未だにGDPの成長率は中国は高い。遠からずアメリカに追いつくところまで来ている。アメリカは中国の国家資本主義の中にある矛盾を問題にしている。具体的に言えば中国が独自に開発する技術よりも、アメリカの企業が開発した技術を盗んでいると考えている。

 中国が公正でない競争をするという指摘が当たっている面もあるのだろうが、遠からず中国は開発する能力でも、アメリカに追いついてゆくと考えて良いだろう。中国は短期間に良い教育制度を作り上げ、真面目に学ぶ人が多数存在する。しかもその数がアメリカの数倍なのだ。

 今まではノーベル賞をもらうような人が現われないが、いつかそうした先端の科学者も輩出するような国になると考えた方が良い。今の中国人はよく働くし、頭脳的にも優秀な人が多数いるのだから、そもそも高い文明と文化を持つ中国なのだから、環境さえ整えば、競争に勝つ人が現われても不思議ではない。

 これからの問題は政治体制に残るのだろう。習近平に見られる独裁政治である。少数民族の弾圧は問題とされなければならない。国家資本主義の有利さを優先する余り、不都合な部分は権力によって、自由が抑制されている。いつまでも都合良く途上国だから、個人の権利が軽視されて良いとはいえない。

 香港が中国の独裁政治に巻き込まれて、活力を失うのか、あるいは新しい経済発展を生むのか。この辺りに今後の中国の展開が見える。香港の個人GNPはアジアではトップである。寿命は世界のトップが続いている。香港は1国2制度の有利を生かし中国の中でも経済成長を続けたのだ。

 ところが中国が無理矢理に中国の独裁政治家に併合したために、香港は活力を失い始めた。それはコロナによる経済封鎖も大きく影響した。動じに人材の海外流出も起きた。現状では香港経済の衰退が始まって居るように見えるが、コロナが終わり、香港経済がどこまで回復するのか見ておく必要がある。

 中国の国家資本主義が香港の自由経済の仕組みを奪ったとして、香港の経済に活力が戻るのかどうかである。これは中国の新しい経済の朝鮮の形になる。自由な経済活動の利点を、国家資本主義がどのように適合できるかである。地方の遅れた状況をどう改善してゆくことが出来るのかである。

 現状の中国はまだ高度経済成長の最中であるので、日本もそうであったように、様々な矛盾があったとしても、昨日より今日の方が頑張っただけ暮らしがよくなるという実感の中で、多くの人が抑圧を我慢できるのだろう。国家権力が横暴な政策を行ったとしても、我慢し受け入れることが今のところ出来る。

 アメリカは自由主義国家の目線から、中国の途上国的な強権政治の姿を批判をしている。果たしてアメリカが中国を一方的に批判できるものかは疑問である。アメリカ国内にある人種差別状態は、中国とは違う意味の差別国家と言えるものであり、白人至上主義と言える根の深いものである。

 中国の独裁には大きな問題があるが、それをアメリカの目線で批判する場合、アメリカの国家的な利益に基づいてゆがめられていると見える。中国を悪い国と決めつけることで、同盟国間で共通認識を作ろうとしている。日本の自民党の政治家の多くはそうしたアメリカにへつらっている。この存在が日本の国益を損なっている。

 中国は去年の間に台湾に軍事侵攻をすると叫んでいた。繰返し繰返し、中国経済は崩壊すると言いつのる。こうした自民党議員は日本の国益を侵害している。こうした議員はまず中国をその目で見てきたらどうだろうか。日本の後進国化に気付くはずだ。人の批判どころでない日本のゆがみを見るべきだ。

 自由主義経済圏の諸国は、中国が覇権主義国家だと決めつけるわけだが、果たしてアメリカの姿こそ覇権主義ではないのか。中国側から見れば大きくは違わないようにも見
える。例えば沖縄や、韓国や、フィリピンや、ガゥムの米軍基地の存在は、中国から見ればアメリカの覇権主義に見えるだろう。

 現在のアメリカは巨大国である。軍事的にも経済的にも技術力も生活レベルも、世界水準よりもかなり高い国家である。その優位性を脅かされることに、恐怖感を持っているのだろう。トランプを支持するアメリカ人の醜さ。そのために中国と必要以上に敵対している気がする。

 むしろ、中国の経済成長は世界を豊かにする一つの要素だと考えれば、中国の経済成長を歓迎し、受け入れて、共に豊かない成る道を模索すべきではないのか。本来経済という物はそういう物のはずだ。中国の成長がアメリカの経済にも良い影響を与えている現実を見るべきだ。米中の貿易額が世界一の貿易額なのだ。

 資本主義経済の競争主義の側面ばかりが意識されるために、中国との経済競争に敗れることを恐れることと考えてしまうのだろう。中国人の暮らしが豊かになり、状況が飽和してくれば、独裁的な強権政治が終わる可能性がある。また、日本は中国が自由な国に成長するよう上手く付き合って行くべきではないか。

 現状の中国が、未だ後進国のような狭い視野で外国に対して居る側面がある。しかし、それは続かないはずだ。中国の一帯一路政策もなかなか成果は上がらない。中国が大国としての広い視野を持つ国にならない限り、中国の国家規模に相応しい扱いは受けない。

 まだ色々な面で途上国状態を併せ持つ中国ではあるが、眠れる獅子だった大国中国が、立派な国として進み始めているのは確かなことなのだから、近隣諸国はまず、普通の付き合い方をすることだろう。中国人はその点十分信頼できる人達である。

 アメリカの反中国政策にのせられてはならない。中国との間に立ち、台湾の独立を確保するくらいの日本でなければならない。その点では、日本、韓国、台湾の3国の緊密な連携をとれば、中国の経済規模に負けない物になる。アジアの自由主義の要になるくらいの、構想が必要なのだろう。

 - Peace Cafe