景気拡大過去最長という嘘

   

景気拡大が過去最長の74カ月になったと発表した。その景気拡大の実感どころか、何処に景気拡大があるのかと不安になる程見通しが悪い。景気停滞の74カ月というところが実態だ。そう発表した方が現状での正しい判断ができる。例えば、中国のGNPの伸びは6.6%で減速鮮明などと書かれている。日本はそれどころか、この74カ月でかろうじて1.2%のGNPの伸びと出ている。悪いという中国は長らく2桁の伸びだったのだ。その頃は中国のデーターはでたらめだと盛んに宣伝していた。実はデーターの基礎が日本こそでたらめをやっていたのだ。GNPは例えば高速道路や原発のように、物を作ることでそれを片付けるためのマイナスが生じるものだ。日本のように成熟社会になると、負のGNPを計算に入れなければならない。つまり、GNPはすでにマイナスになっているのが実態であろう。これで景気拡大などというのは言葉の嘘ではないか。個人消費はこの間0.4%とわずかな増加にとどまっている。

社会的には非正規雇用の問題が深刻化している。格差社会の出現である。全体で0.4%の個人消費の増加という事は、賃金が上がる富裕層は確かに消費を増加させていて消費を押し上げる一方で、消費を減らしている貧困層がかなり存在しているというのが実態だ。政府の財政は莫大な借金財政である。その中で財政支出を増やして円安誘導をしている。こうして、かろうじて1.2%の増加は作り出されている。日本の経済の実態はアベノミクスで誤魔化している間に、相当深刻に行き詰まりにある。これは日本人や日本の社会の問題というより、人間というものの行き着く姿でもある。昔は英国病などと言われた。どうにもならないことなのかもしれない。一定満足した人間は進取の気性を失う。もし日本人が新しいことに挑めなくなっていることがはっきりしているなら、国の方向を変えなければならないという事だろう。社会や民族には成長期があるのだろうか。もう日本は成長期を過ぎて、後期高齢化まで来たのであろうか。もしそうであれば、日本の将来の姿を作り直さなければならない。

円の価値が90円から、110円に下がるという事は、輸入品が2割高くなったという事だ。日本の国力の評価が2割下がったと言えるようなことだ。日本を安売りしている輸出など、喜ぶようなことではない。外国に輸出する企業は当面良いだろうが、生活は楽にはならないという事だ。海外から日本に観光客が増えているのというのも、円安だからだ。円安誘導するという事は身を削っているという事が実際である。国民が輸出企業に犠牲を払わされているのが今の経済だろう。問題の基盤にあるものは日本の経済は新しい技術革新が出来ないでいる。世界からの競争に遅れ始めている。根本は日本社会に、日本人に新しいことへの意欲が衰退したところではないだろうか。それが自民党支持者が減らない原因でもある。経団連の会長が日本は再生エネルギーは無理だと主張している状況だ。原発にしがみ付く以外ないというような後ろ向きな精神状態にある。後ろ向きな政府だからこそ、こんな状況を景気拡大で大丈夫と言いたくなるのだろう。アベミクスが成功しているなどと、言葉で誤魔化している間に、世界から後れを取る状況はますます深刻になっている。

東日本大震災の後、蓄電池分野では日本は世界をリードできるのではないかと、想像した。それまでの戦後社会を立ち直らせた日本の技術力であれば、新しい発想でより効率の良い蓄電池を開発するのではないかと想像した。背景には国民が高い価格の電力でも原発よりは望ましいという機運が生まれていたことがある。ところが政府はそれをブレーキをかけた結果になった。何を血迷ったのか、無用の計画停電から、原発再稼働である。野外の自動販売機がそのまま使われていながら、計画停電をしている姿は悪意すら感じた。あの時の暗い海を今でも思い出す。日本を襲った津波が流し去ったものは、日本人の挑戦する魂であったのかもしれない。今や過去の成功体験にもぐずり込む姿しか見えてこない。深刻な災害を契機にして、負を正に変えるような、前向きになることができなかった日本人。今やそういう状況の中で、自分はどうするかと考えるほかなくなっている。

 

 

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