日中首脳会談から始まるもの
7年間もの間、日中の首脳が会談を行う事が出来なかった。尖閣諸島の国有化と靖国神社参拝から始まった日中関係の悪化である。アベ政権は仮想敵国中国を前面に出し、軍事的対抗政策をとっている。両者にそれぞれの言い分はある。日本は中国の覇権拡大主義が問題だとして来た。確かに中国はその国力の増強を間違った方向に進めている感がある。これを正すことも平和主義日本でなければならない。中国側から見れば、日本の軍国主義回帰と見えても仕方がない状況がある。所が日本の同盟国アメリカがトランプ主義で様子がおかしい。トランプ一国主義を旗印に、日本にも中国に対しても経済戦争を仕掛けてきている。中国に対しては敵対心をむき出しにした、軍事的圧力まで強め始めている。トランプ主義は地上げ屋の手法だから、結局は金もうけだと思う。先ず強硬に脅しをかけて、相手を震いあがらせる。次にもみ手ですり寄り、落としどころを模索する。今後の成り行きを見なければ、分からない事ではあるが、この米中の軋轢の間に、日本が漁夫の利を得ようというのがアベ政権の外交政策であろう。
アベ外交は実質の成果のない、表敬訪問ばかりだ。掛け声だけは大げさなのだが、現実を変えるような成果を上げたものはない。朝鮮との関係でも、日本外交は右往左往するばかりで、先日までは全否定であり、今度は具体的な方針も分からない。当然結果は出てこない。ロシア外交の方も何が経済協力なのか、その下調べばかりしていて一年も過ぎても、成果は出てきていない。世界は耳障りの良い掛け声だけでは動かないという事なのだろう。アベ外交というものは実は国内向けなのだと思う。自衛隊の憲法明記をしたいがために、中国を仮想敵国にする。北方領土を取り上げているという国内向けアピールが主目的なのだろう。仮想敵国の旗を降ろすのであれば、防衛大綱の見直しの中で、中距離ミサイルを保持しないことを銘記すべきだろう。敵基地攻撃の意思のないことを明確にすることが、日中の友好関係の出発点になる。ロシアの主張のように、駐留米軍の扱いを変えない限り北方領土返還交渉に乗らないという事になる。
安倍首相は(1)競争から協調へ(2)お互いパートナーとして脅威にならない(3)自由で公正な貿易体制の発展――の3原則を提示。と書かれている。共同声明の形で具体的な結果は出ている訳ではない。話が付かなかったと考えなければならない。仮想敵国として、対中国のミサイル基地建設。沖縄辺野古の米軍基地建設。沖縄を日米の防人にしようという、強硬な姿勢。こんな状況の中、中国が簡単に3つのお願いを聞いてくれる訳もない。中国の脅威にならない日本という事であれば、沖縄の米軍基地削減。自衛隊基地の建設取り止め。これが大前提であろう。もちろん日本側の言い分はある。中国の覇権主義による南沙諸島の基地化などとんでもないことである。中国の問題点を指摘することは大切であるが、同時に日本も似たようなことをしているという事に自覚がなければならない。まず日本から始める。日本国憲法に従う、平和主義である。国際問題を武力によって解決しないという事である。
中国は近隣にある大国である。日中関係の方が、日米関係より重いという事を考える必要がある。日本がアメリカの手先であり、走りであることを止めるという事が大前提である。トランプによって明らかになったように、アメリカはアメリカさえ良ければ構わないのだ。日本の為に駐留しているなどという事はないのだ。むしろアメリカは日本を監視するために日本に駐留してきた。日本を再軍備させないために駐留してきた。その結果日本は攻撃的武力を保持せず、核武装せず、かろうじて平和主義を維持できたのだ。その点では駐留を感謝しなければならない。トランプ主義によって、これが変わろうとしている。アベ政権の思惑もかなり近いものがある。しかし、小さな国力の日本が、トランプ主義をやったところで効果は知れている。むしろ、日本独自の平和主義によって、存在する場所を確保することの方が、安定度が高いと思われる。軍事競争に中途半端に乗ることは、一番危険な道になる。