堆肥の作り方
堆肥は自給農業にとって一番大切なものだと考えている。作物を作ると並行して、常に堆肥の準備しなければならない。しかし、たい肥作りは手間暇がかかり、直接の成果が見えにくいため、つい怠りがちになる。そこで、どうすれば楽な堆肥作りができるかが重要になる。3つのやり方がある。一つは、山の中で落ち葉が自然に堆肥化するような場所を発見することである。昔であれば、誰かが目をつけていて、取ってくることは出来なかっただろうが、今は山に入って落ち葉を集めるような人はめったにいない。まず咎められることはないだろう。最近は同じことを考える人が増えてきたような兆候がある。広葉樹が上部にあり、吹き溜まりのような窪地を探す。厚く落ち葉が積み重なり、下方が堆肥化している場所である。匂いを嗅いでみて堆肥化の状態を判断する。そういう場所を何とか見つけて置き、いざというときに順繰りに回ればいい。大きな袋にぎゅうぎゅう詰め込んで、軽トラいっぱい積んでくれば、一年分という事にしている。もっとあればあった方が良いのだが、最低限それくらいはしたいと考えている。冬がその季節だ。
2つ目は、地域で出る残渣を探すことだ。常日頃、街を歩いているときには、その気で探すことだ。どこの町でもなるほどというものが廃棄されている。未利用資源という事で、地域なりに堆肥に利用できるものが廃棄物になっている。私はおから、魚のあら、米ぬか、そば糠、くず米、選定枝、などを見つけては集めてきた。探し出す能力も、自給力の一つである。以前は給食残渣ももらえた。工場や会社から出ていることもある。ともかく、貰えるものを探すことだ。頂く条件は相手にとって良い形が良い。自分の都合を優先する人には、廃棄物は探せないだろう。相手に喜んでもまらえなければ長続きはしない。
3つ目が鶏を飼うことだ。堆肥の管理を鶏にさせると考えればいい。鶏小屋の床に山から集めてきた落ち葉を入れる。剪定枝を敷き詰める。このことを自然養鶏の本に書いたところ、剪定枝はどこにあるのかという質問がたくさん来た。ある場所を自分で探せない人には、自然養鶏は無理だ。魚のあらや、そば糠を鶏の餌として使う。鶏を飼っていることが、自然と堆肥の生産になっている流れを作ることだ。1反の畑の堆肥を作るには、100羽の鶏が必要である。但し、畑の土壌が良くなればだんだん鶏の数は減少する。1人の人間の糞尿をたい肥に使えば、さらに良いだろう。人間の糞尿を使うことは重要だが、今の暮らしにおいてはこれが難関である。合併浄化槽から流れ出る水を使おうとしたが、なかなかうまくゆかない。保健所からは使ってはいけないという意味不明の指導を受けた。
堆肥を畑に入れる方法は、耕作に応じて入れればいい。決まりはない。作物の肥料として、直接効果を上げるというより、土壌を良くしていれば作物は自然良くなるという、長い目で考えた方が良い。作物の収穫後、植物残渣を漉き込むときに、堆肥を加えて漉き込んでおく。さらに追肥の形で、表面に撒く事も行う。作物の根の周りを保護するような気持で、根元に敷き詰めてゆく。蒔くには雨の前が良い。上手に蒔けば風に飛ばされることなく、土に密着してくれる。緑肥を作るとすれば、緑肥の生育のために堆肥を与えているくらいの、長期的な気持ちで堆肥を使うと一番いい。堆肥は肥料として考えるのではなく、土を微生物で豊かにする材料と考える。微生物に、住家と餌を与えているという感覚である。微生物には土壌の空隙が大切なのだと思う。土壌の中に、堆肥や植物の藁がたくさん入り込めば、それを分解する微生物が増加し、土壌の中は豊かな世界が作られてゆく。作物を作るという事で消耗させられた畑の土壌に、腐植質や微量ミネラルをたい肥という形で加えてゆく。