柿渋染め
柿渋染めを毎日やっている。面白い。じつにおもしろい。面白いので意味なくついついやってしまう。白い絹の布をいろいろに染めている。結城紬の手紬の素晴らしい布。丹後ちりめんの布。松本製糸と判のあるの白い布。いろいろの布を染めてみて練習している。いずれも絹の布である。絹は染めやすい。昆虫の作った糸を、植物で染めるというところが良い。白い絹の服も一枚染めてみた。裾模様にスワトウの刺繍の有る着物なのだが、下の刺繍のところだけを切り取ってしまって、上の方を染めてみた。切り取った刺繍は今度何かに使おうと考えている。わずかにピンクがかっていたのだが、そのまま染めてみている。ムラになる。ムラになるところが面白いと思っている。柿渋液は実は自分で作ったもではじめたのだかが、今は購入したものになっている。自分の作ったもので染めたのは色の濃い2枚だ。面白くなって2年の熟成はとても待てなくなった。待っている間に練習と思ってやっている。
薄い柿渋液を作り、それで何度も染め返す。もう7回もやった布が濃い色のものだ。結城紬の手紬で糸が作られたものだ。貴重な布である。練習は貴重なものでやらなければ身につかない。手順で言えば、まず布を75度のお湯につける。1時間ほどつけたらば、絞る。布が何か処理されているかもわからないので、下処理のつもりだ。絞ったものを、薄めた柿渋液につける。薄める程度はまずは10倍ぐらいだ。と言っても根拠はない。そして日光に当てて乾燥する。乾燥したら水洗いをする。そしてまた絞る。そして2回目の柿渋液につける。そして干す。洗う。浸ける。以上の繰り返しをしている。気に入る色になるまで繰り返している。不思議なことに、一日日光に晒していた色と、二日日光にさらした色では違うということである。一日目効果がなかったかと思っていると2日目にぐんと色が出てくるのだから面白い。だから晴れていると嬉しい。朝日をみてさあ今日もやってみるかと作業を始める。
一日たったところ。染まってきたという感じがする。
高い防水・防腐・防虫効果がある。漁網、醸造用絞り袋、染色用型紙などのように、過酷に使われる道具の保護に塗られてきた。昔家でお茶を作っていたころ、お茶を練るの柿渋を縫った紙を使っていた。下には炭が起こされていた。その熱で蒸したお茶を練っていた。フライパン代わりにしていたのだから、いかに丈夫であるか。竹で編んだ大きなかごには、和紙が張られていた。柿渋を接着剤として使って何度でも張り重ねてあった。家の材に塗ることによって保護材にされた。渋染めのいいところは、定着材とか、媒染液とか特別の処理が要らない。良い水さえあればいい。柿渋は実用のものだ。使い込んでよい色になるものだ。醤油の絞り布が使い切って、良い色になつて布カバンになるのと同じことだ。石原さんの絵に刺激されて始めたのだが、石原さんが言われていたが、10年前に発表された時より今回の方が評判がいいと。時間がたって古色になって良くなる絵。渋い。さすが柿渋。
染め始めたところ。ムラがあるが、そこが却ってよくなりそうな感じがする。
何度でも繰り返し、布がまあまあの色になったら、これを袋にするつもりだ。袋を縫う手順も頭の中で何度も予行演習をしている。ひもで縛るように加工する。その紐も作り方を考えてある。袋には墨で、種袋と書く。そしていろいろの種を入れて、壁に吊るしておく。今は缶に入れてこの机の下にしまってある。見えるところにある方が何か良さそうだ。もう一つはのれんである。部屋の仕切りに、のれんをかけたいところがある。今考えているのは、織模様のある布を柿渋で染めてみたいと思っている。織模様によって、染まり方が変わる。この変わり方を生かして染めてみたい。初めて見ると、これは10年、20年の仕事のようだ。もっと早く始めればよかった。と言ってもこの渋い感じは、この歳になっていいと思い始めたのだから仕方がない。