円安危機

   

蔵王 中盤全紙 インドの水彩紙 残雪の蔵王を描きに何度か行った。蔵王山麓にも、美しい畑があった。

危機と呼んだ方がいいほど円安が進んでいる。円安に成れば輸出が増加して、国際収支が改善されるとアベノミックスでは主張していたが、むしろ国際収支は悪化している。円安は日本の国力を下げることになる。喜ぶようなことの訳がない。喜ぶのは、海外に輸出する一部の企業だけのことだ。材料やエネルギー資源を輸入する大半の企業は大変なことになっている。グローバル企業を優遇した所で、日本の景気が回復するわけには行かない。現状は生産拠点も販売も、日本国内とは限らないのだ。円安の分だけ日本人の暮らしに格差が広がり、苦しくなってきている。円安の為にエネルギー価格が増大していることが、日本の貿易赤字に繋がっている。原発を再稼働した所で、原発の危機管理費の増大が起こっている。円安では電気代が下がることはあり得ない。今度は法人税を下げることが言われているが、その財源を赤字企業からも法人税を取ることで穴埋めする案と言う主張が出てきている。その結果、大企業だけの国に成りかねない。これでは予測した通り、韓国の辿っている道を後追いしていることになる。

近づきつつある経済危機を考える上で、リーマン・ショックとは何だったのかを考えて置くことは重要だと思う。分らないながら考えてみる。リーマンという、住宅ファンドをしていた会社が投資に失敗したことで倒産をして、そのことを契機に起きた経済危機のことではないか。アメリカの住宅会社が、お金のない、返済のできない人にまでお金を貸して家を購入させた。そのお金の流れを投資として、ファンドとして、一般に投資対象にしていた。そこでリーマンの破綻が全体に波及する引き金と言われている。ショックという言葉が付いているように、これはあくまで契機として起きた事件で、経済危機の全体は、もう少し違うことにあったと考えなければならない。アメリカ経済からの連動する影響が、世界へのショック状態を与えるということなのだろう。アメリカで住宅地価の上昇が終わったということがどう日本に影響したのか。住宅を作るということは、消費の拡大である。住宅建設自体が消費全体に占める割合は小さいが、住宅を作るような生活を行うという暮らしの選択が、経済を活性化するということに成るのだろう。

地価と言うものは不動産である。大きな買い物である。だから、世の中の流れの本当の所が現われる。今もって地価が上がるのは都市部だけである。しかも海外から見れば日本の地価は、円安分だけ下がっている。小田原の舟原では現状でも下がり続けている。不動産取引が無いわけではない。住宅地は売れているし、家も建てられている。その価格が下がっているということである。都市部と地方との土地評価格差の様なものは、さらに開き始めている。それだけ地方の疲弊は深刻な物だ。すでに売買の対象から外れている地域も、いくらでも出てきている。持っていることで管理負担があるから、タダでも人にあげたいという土地である。荒れ果てた別荘地などの状態を見ると、今までこういう所に投資して、無駄になったものが膨大にあることを感じる。リーマンと同じことだ。国民総生産と言っても、負の生産も莫大に積み上げてきたということになる。住宅を作るという健全な暮らしが、住宅が負の遺産に成るという、不健全な状態が始まっている。

円安がさらに進めば、いよいよ日本の崩壊の始まりに成りかねない。安倍政権は女性の活用、地方の創生(再生)、を次の経済政策として主張している。第3の矢の変形したものらしい。女性の評価が高まるのは素晴らしいことだが、経済の観点からそういうことを考えたとしても、成功するはずもない。まず、自治会長の半分が女性に成る社会の実現を目指すべきだ。地方創生は言葉だけである。地方経済は円安によって、さらに深刻化する。西川農水大臣はお米の輸出を主張している。円が暴落すればないとは言えない。その時は、もう日本は沈没しかかっているときだろう。西川氏の農業の展望は、TPP妥結の為の展望である。それはグローバル企業だけが栄える日本の姿である。円安はまだ当分続けるようだ。日本の農産物輸出は増加している。日本のリンゴが台湾で売れる様な価格に成る。しかし、アメリカに米を輸出するという、西川氏の主張はまともな農水大臣の発想には思えない。本気なら、その構想を具体的に示してほしい。政府の円安誘導からはじまり、もう舵を失い始めているのではないか。軟着陸地点の構築は現実化してきている。

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