吉田調書の示すもの
東伊豆海岸 10号 手前にある赤い屋根とみかん。こういうものを入れるのが、絵づくりなのだろうか。その辺が良く分らない。
吉田調書と斑目委員長の3年目の証言さらに、細野剛志氏のインタビューの一部だけだが読んだ。日本がどれほどの危機に直面したのかが分る。運良く今ここで生きているとしか思えない、あの3月11以降の日時がよみがえる。あの時福島原発で起きていたことの証言である。これほど日本人にとって恐ろしい事態が迫っていたということに、改めて恐怖を覚える。人間は不思議なものだ。あの命の恐怖の感覚を、私自身も忘れかけている。完全に忘れ去った、政府を笑うことはできない。日本は消滅しかかったと言っても良いほどの危険だった。こんなことは2度とやっては成らないということが教訓である。あの後のしばらくは、大多数の日本人がそう思ったはずだ。ところが、もうそのことを忘れて、まるでなかったことのように、原発の再稼動を受け入れようとしている。人間は忘れる。
あの当時も、東電や政府のやったことを記録して置かなければならないと、よく言われていた。ところが案の定すでに、良く分らない部分が出てきている。東電と政府の指示の関係が良く分らない。東電は福島第一から、撤退すると言ったのか、言わなかったのか、そんなことすら良く分らない。幸運が重なり、原子炉の爆発だけはまぬがれたというのが、あのときのあった状況である。日本の半分が住めなくなり、半数の日本人が高濃度の放射能に被災するところだった。政府が、本当の所を発表出来なかったのは、それを現実として受け止めていたためということだ、避難対応すら立てられなかったのが実情のようだ。それはそうだろう、5000万の人間が、どうやって避難すればいいのか、そんな方法があるわけがない。それが、たまたまの偶然で、水がプールにあり、その水が何らかの加減で流れ込んで空炊きになることが避けらてたというようなことを、当時の管総理大臣が述べている。
原発での発電は、高いエネルギーコストになるということは、日々明確になってきている。日本の貿易赤字が、火力発電所のエネルギー輸入の為だと、だから経済が好転しないと政府や報道や有象無象が説明している。これは虚偽で騙そうとしているのだ。天然ガスの輸入量は2011年が、83,183千トン、2013年が87,731千トン。5%の増加に過ぎない。原発が止まっていても、この程度にすんでいる。貿易赤字の大半は円安の為である。電気が高くなっているのは、明らかに円安の為である。原発停止の為ではない。円安を歓迎しているのは、安倍政権と日銀であろう。放射性廃棄物の行き先はない。現実に、今回の事故に伴う、8000ベクレル以上の放射性廃棄物の行き先すら、見つけることができない。こんな状況の中、何故原子力発電の推進を政府が主張するかが、理解できない。理解できない中、想像するには、日立などの原子力発電メーカーの圧力ではないか。大企業だけを日本と考えている安倍政権は、原子炉メーカーを救済したのだろう。
このまま行けば、間違いなく世界のどこかで次の原発事故が起こる。さらなる悲惨を味わうことになる。原子力発電所の安全基準が、3,11の津波の前も、特別に日本だけが緩かったと思わない。世界では今も、その低い安全基準で原発稼働をしている国がある。そこで必ず事故が起こると考えることが普通の想像だ。それは明日かもしれない。その時に、世界はさらなる不安を抱え、反原発の機運は高まる。その時にやっと自然エネルギーにシフトするしかない。と気付くはずだ。その日の為に日本は先行して技術開発をすべきだ。次の事故の対応の為に、福島原発で何が起きたのか、そしてどんな対応に成ったのか。このすべてを世界に公開して、危機に際して何ができるのか。何ができないのか。どんな混乱が起こるのか。こういうことを、率先して公表して行かなければならない。このことを吉田氏の個人の尊厳というようなことで、非公開としている政府の姿勢は、意味不明である。