袴田事件再審決定

   

富士山 10号 何故こんな絵を描いたのだろうと思う。いわゆるリアルな感じになった。リアルさとは何かと思う。籠坂峠で描いた。

袴田事件の再審が決定された。死刑囚として48年間どれほど辛いことであっただろうか。村山裁判長は「捜査機関が重要な証拠を捏造(ねつぞう)した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止(釈放)も決めた。死刑囚の再審開始決定は免田、財田川、松山、島田の無罪確定4事件と、後に覆された2005年の名張毒ブドウ酒事件の名古屋高裁決定に次いで6件目ということだ。実に恐ろしいことだ。やってもいない殺人事件の罪を背負い、いつ死刑に成るかという不安を抱えながら、獄中で生きる。これほどの悲惨はない。今回の再審決定で一番大きな証拠と成ったのは、犯人が着ていたとされる血染めの衣類の証拠である。最新の精密なDNA鑑定の結果袴田さんのものではないということが分った。これは弁護側の検査でも検察側の検査でも、同様の結果であった。実におかしな捜査が行われていたらしい。

事件では起訴から1年後の一審公判中、突然、現場近くのみそ工場のタンクから血染めの白半袖シャツやズボンなどが見つかり、検察側は犯行時の着衣を、パジャマから変更。静岡地裁判決は自白偏重の捜査を批判し、45通のうち44通の自白調書を違法な取り調べによるものとして証拠排除した。5点の衣類を始めとする間接証拠類と自白調書1通で、死刑を選択した。証拠となった、自白調書がねつ造されたことは、当時も確認された確かなことだった。犯人を袴田さんと思いこんだ、捜査機関の不可思議な熱意で証拠をどうもねつ造したらしい。こう裁判所はついに認定した。当初からこの血染めの衣類が、味噌ダルの中にあるにしては、新しすぎると、袴田さんのものではないと弁護側は主張してきた。しかし、当時は血液型が一致したという程度で、証拠採用されてしまったのだ。DNAの正確な鑑定をすれば、分ったことだ。つまり、捜査機関もまだDNAまでは考えておらず、こんな証拠をねつ造したということになる。しかし、これで、本人の毛髪などを利用して、DNAまでねつ造されていれば、完全な一致という証拠がねつ造されることになる。

捜査機関の中に、犯人をどうしても作り出そう。あるいは手柄を立てようという動機が働いている場合がある。6件の冤罪事件に見られる、共通の傾向である。そして、いったん仕組んだ犯人像に向けて、自白を強制して行く。人間の心理や、弱さに付け込んで、自白調書のでっち上げである。これは、かつての捜査機関がそうだったということでなく、今の捜査機関も何ら変わっていない。もし変わってきているなら、この血染めの衣類の証拠を自ら鑑定した際に、捜査がおかしかったという反省が出来たはずだ。ところが、捜査機関も検察も、昔以上に人間力が低下してきていると思われる。村木さんの冤罪事件を見ればそのことが良く分る。冤罪を作り出す動機が、自分の手柄を上げたいという、そして出世がしたいという、自分が良ければ他はどうでもいいというようなタイプの人が、捜査機関に集まっているようなのだ。

今回の袴田冤罪事件でも分ることは、捜査段階からの、全面可視化以外に方法はないのは明らかだ。何故それを嫌がるのか。理由は自供が取りにくくなるということなのだろう。そのために、10%犯人を逃すことになるかもしれない。しかし、一人でも冤罪で死刑にするなどという間違えが起これば、社会正義は貫かれることがなくなる。実はすでに、死刑が執行されてしまった事件でも、冤罪ではないかとされている事件はある。DNA鑑定を正確にやりなおしてみたら、そういう恐怖の事件が掘りおこさえるはずだ。そのことは想像するだけで悪夢のような怖さがある。さらに怖いことは、こういうねつ造証拠が、裁判に置いて見破れないことだ。最高裁まで裁判が行われ、多くの人が関与して、6件もの事件が間違ってしまったのだ。こんな状況で、裁判員制度が行われている。もし自分が袴田事件の裁判員であれば、どれほどの重荷を背負うことになるだろうか。人を裁くということは難しいことだ。

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