ウクライナ危機
下田港 10号 前景と遠景の関係を描いてみたいと思う。全く場当たり的にしか出来ていない。
ウクライナで革命的政変がおこり、ロシア寄りのヤヌコーヴィチ大統領がロシアに亡命した。そして、ロシア系住民ガ60%を占めるクリミア半島は、ロシアが一気に占拠してしまった。近くクリミヤ共和国として、住民投票が行われるらしい。ほぼロシア編入が想定されている。ウクライナの欧米より新政府としては、分離を認めない方針を出している。ウクライナがソビエト連邦の崩壊後独立して、ついに国家分裂の危機に陥っている。ロシアの主張には相当の無理があるが、同様に選挙で選ばれた大統領を強引に追い出したことも、当然何らかの西側の後押しがある。国際紛争には常に複雑な背景がある。クリミア半島がロシアにとっても重要な拠点である。北に位置するロシアとしては、南への窓口は重要な地点なのだろう。何度も戦争を繰り返してきている。クリミヤ半島もロシアから独立し、ウクライナに所属はした訳でだが、そもそもロシアの影響が強く、キエフを中心とするウクライナとは、意識が別なようだ。
クリミヤ地域に存在したウクライナ軍も抵抗なく、ロシア軍に降伏した。今回のウクライナ危機の背景にあるものは、独立後の経済的困難である。ソビエトから独立した国家は、その後どこも経済的な困難に陥った。それまでソビエト連邦の一部として、抑圧されてきた諸民族は独立が長年の願いだったはずだ。ところが、独立するとなれば、ソビエトからの経済的な恩恵は失われる。搾取はされていたのだろうが、恩恵も受けていたに違いない。それは良く言われる、朝鮮半島と日本の関係を思い出すところだ。植民地経営は利益ばかりでなく、出費の方が勝ることもままある。ウクライナは経済の困窮を、EU加盟によって切り抜ける方策を取ろうとした。当然、ロシアからの干渉があったはずだ。ヤヌコーヴィチ大統領はEU加盟路線を突然ロシア重視に切り替える。そもそも、初代の大統領は毒殺が企てられ、かろうじて命を取り留め、政権に就いた。その後、経済的疲弊、社会的混乱が続き、ヤヌコーヴィチ大統領が登場した。
ロシアから独立をしたものの、経済の好転が見られない所に、親ロシアの大統領の独善的な政権運営。そこで、ついに民衆革命が起こったのだろう。しかし、それは欧米の扇動による反ロシア勢力の、ロシア語系住民に対する弾圧ということにも見える。巧みにロシア軍を展開した、プーチン大統領の手腕には恐怖を覚えるほど高いレベルである。欧米諸国が何もできない内に、やることはやってしまった。日本はいくらか、欧米側の旗を上げかかった位である。これでは反中国でロシア支持を進めようとした、安倍路線など簡単に手玉に取られそうだ。一枚も2枚もロシアは上手だと思う。中国はさすがに反ロシア路線で珍しく欧米と同調した。あとはロシアに対する経済制裁の実際がどうなるかである。日本はロシアからのエネルギー輸入分をアメリカが保証してくれるのかであろう。いずれにしても、北方4島問題は解決が遠のいた。
日本には武力を背景にした、外交戦略を行うことは無理だと思う。どこかでつまずき、戦争に巻き込まれる。日本人は正義の意識は高いが、したたかさに欠ける。日本はあくまで武力から距離を置く、平和主義を前面に出すことでこそ、存在価値を高められる。武力がないことで損もするだろう。損をしても武器を持たない国として、世界各国のバランスの中に上手く希少価値を持つことが良い。現在の武力というものは、原爆にまで至っている。原爆を保有する国と対等に、武力で対抗するためには核武装する以外にないのであろう。それは北朝鮮の考え方と同様である。人類が消滅するような、軍事力を人類が持ってしまった以上。武力を使うことは人類滅亡につながると考えざる得ない。その危うい綱渡りが、ロシアの今回の戦略であった。これに対して日本が何をできるのか。日本だけ経済封鎖に乗らないのか。