緑肥・クリムソンクローバーと田ころがし

   

田植え、2週間後と言う事で田車を転がした。田車をころがすことを,除草とは考えてはいない。田んぼの土壌環境の改善の為に行う。田車は古い道具で、今使う人はめったにいない。江戸時代に作り出された工夫された道具。田んぼの土は、冬の間乾いた畑土の状態である。これが春になり水を入れる。土壌環境は一変する。田んぼによっても状態は違うが、水が溜まる事で一般に土壌は嫌気的になる。すきこまれた植物残滓は腐敗してゆく。土壌の状態を良い発酵に持って行くというのが、田んぼ土壌を作る、主眼となる。その為には、ミネラル分の補給や、冬の間の微生物の醸成が必要。田植え後2週間目辺りで、土壌をかき回し新鮮な水と酸素を入れ、表土と5cm付近の土とをかき回す必要がある。と考えている。当然、こんなことは今の近代農法では行わない。緑肥に由来する大量の植物残滓がすき込まれると言う事がない。しかし、腐食質を増やす事は土壌を良くする一番の方法である。有機農業においてははずす事のできない方法である。

一昨年、坊所田んぼで間違えで、田んぼの緑肥を全て一箇所に集めて一年間積んでおいた。それを昨年崩して田んぼに戻した。その辺りの出来は素晴しいもので、ススキが原のようになった。落ち葉でも草堆肥でも、大量に入れることが出来れば、間違いなく田んぼは良くなる。田んぼの外で植物系の堆肥を作り持ち込むことが出来るならいいが、それも力量的に困難である。せめて、それを緑肥で行おうと考える。今年は、クリムソンクローバーである。秋に耕運して、種を撒いた。発芽して少し育った所で、養鶏場の発酵した床を撒いた。ところが、雑にやった。道路に近い方は熱心に何度か撒いたが、奥の方まではあまり撒かなかった。そのために道路際はとても立派に育ち、紅い花が素晴しく喜んでもらえた。しかし、実の所奥の方は、ささやかな状態で、見られたものではなかった。その結果が、コナギがある程度生えた。スバカス抑草も緑肥とのあわせ技一本である。

2週目に行う田ころがしは、観察が重要な項目である。田んぼの隅々まで歩きながら、田んぼの細かな様子を観察する。これはとても大切なことだ。観察のポイントはいくつかある。まず土の状態。歩くと土からアブクが出る。このアブクの臭いが土からの情報。硫黄臭いような、ドブのにおいがしたら最悪。ガスが出ても、量が少なく、ほとんど臭わない場合は土は良い状態。大量の植物残渣のこの時点での腐食レベルの確認。ベージュ色になり、まだ形は残っているが、崩れそうになっていればいい。指で潰せば崩れてゆくが筋は残る。1ヶ月すれば、形もほとんどなくなるだろう。これも発酵状態を反映している。コナギの発芽位置や根の状態の確認。草が全くないというのも実は、稲の根を痛めている場合がある。稲の根を抜いて、根を確認、根が白く、健やかに伸びていれば良いが、そう言う事は少ない。大抵は茶色っぽい根が混じる。この時点では混ざるのは仕方がないが、根がまるで伸びていないようでは困る。分けつの状態。田植えから、1週間で分けつが始まり、2週目で平均4本ぐらいになっていれば順調。田ころがしの後一気に分けつが来る事が多いい。

そろそろ、イネミズゾウムシが出て、葉を筋状に食害する。かなり広がっても、影響はほとんどでない。ニカメイチュウも出てくる。下の方の軸が食われて、黄茶色になる。これは窒素分が多いいと、結構広がるが、そこそこなら大抵は収まる。稲藁を持ち出すのはニカメイチュウの増えるのを避けるためもある。冬の緑肥はそうした、病気の一方的偏りを正すためにも必要なようだ。畦など周辺の稲科雑草を減らすことも必要。今年は出来る限り、養鶏場の床堆肥を奥まで満遍なく撒いて、充分な量を作りたい。鶏糞を直接利かせるのでなく。緑肥を通して、間接的に聞かせるのは良いと思う。秋起こしの際に鶏糞を充分に撒いておき、落ち着かせてから、クリムソンクローバーを播種するのがよいかもしれない。撒いた後、少し均してやるのもいい。様子を見て、さらに堆肥の追い撒きもする。

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