田んぼの土壌の変化

   

今年の舟原の田んぼでの大きな特徴は、上の田んぼと、下の2枚の田んぼとの土壌の違いが目立ってきたことである。舟原では、あらおこし、水入れ、代かきと、田植えに出来る限り接近させることにしている。水を入れたときから始まる、草の発芽を出来るだけ遅らせたいと考えている。今年も、金曜日に水を入れて、土曜日に代かき、日曜日には田植えと一気に進めた。草は水を入れて、一週間が勝負。この間に大きくしてしまえば、もう後は何をしても効果は少ない。早めの代かきで一度雑草を出してしまい、2度目の代かきでこれを根絶して、田植えをするという考えもある。舟原田んぼでは、あまり土を練りたくない、浅く代かきをしたいという考えもあり、一気に進めると言う手法になる。ですから、12日に水を入れて現在1週間と言う所。17日には、下の田んぼでは大量のミジンコが発生した。そして、18日には中段の田んぼでも、大量発生。所が上の田んぼは20日でもまだ発生をしていない。朝5時の入水温16度である。

このミジンコの発生に象徴される複合的状態が、トロトロ層の形成に大いに役立つ。トロトロ層とは何か。定義はないが、田んぼの表面に出来る、ヨーグルトと水中に溜まったほこりの間のだのような状態の層である。代かきで機械的にもある程度は作れる。しかし、代かきでできた、微細粘土による層と微生物が作り出した層とは少し違うようである。粘り気が違うと言うか、普通のヨーグルトと、べたつき感のあるカスピ海ヨーグルトの違いの粘り気の感触に違いがある。そして、この微生物が作り出す、トロトロ層を出来るだけ厚い層に育てたいと言う願いがある。トロトロ層が出来ると、大抵の場合はコナギ等の草が抑制される。発芽して、一度は2,3ミリの双葉状態になっても、土壌の中に埋もれ、蕩けて行く感じがある。そうとは言えない場合もあるので、断定は出来ないが多くの場合、コナギの発芽はない。何故発芽が抑制されるかの科学的根拠はまだわからないが、体験的にそういう事が起こっている。

このトロトロ層の形成には、水温が高い方が良い。25度以上あるといい。又、微生物の餌となる、糠物質、多分澱粉質のようなものがあるといい。所が、この二つが揃っても、ミジンコが発生するとは限らない。ここが又興味深い。今年始めてやった、鬼柳の田んぼは、30度近くの水温がある。ソバカスを撒いている。しかし、ミジンコの発生がない。トロトロ層も形成されない。何故なのかまだ解明できないが、微生物が乏しい感じである。今までの経験では、有機農業に変えて、3年目くらい経たないと、微生物の発生は少ないようだ。もちろん、土壌の性格が大きく影響するようでもある。粘土質が強いからトロトロになるともいえない。腐食質が多いと言う事は材料になりそうである。だから、冬場緑肥を繰り返し蓄積していると、トロトロ層が形成されるようになる。結局、総合的なもので全てがそろって始めて、トロトロ層に到る。何かが一つかけてもいけないようだ。例えば、ミネラル不足などもいけない。海水を撒くと良い効果の一つになる。

ことし、志村さんの実証圃場では、冬場の二見健やか堆肥のすきこみに加えて、ソバカス散布を行った。今の所とてもいい状態のようだ。チェーン除草の条件である、トロトロ層の攪拌による水の濁りが、長く続くらしい。ソバカスの発酵の速さが影響していると思われる。この点、米糠より有効である。冬の間に、土を育てておき、それを呼び水として、春の微生物の大発生に繋げる。ここで解ったのは、土壌の歴史によって、田んぼの履歴によって、同じ作業が同じ結果にならない。冬場に良く土壌を育てるというのは、生き物が居る、豊かに草がある状態。腐食質の発酵が誘発する、トロトロ層の形成。と言いながら、「良い土」という意味はまだまだ、不明。トロトロ層が何故良いのか。微生物が豊富であると何故良いのか。こう言う事は、明確に理解できる訳ではない。今の所経験的なものに過ぎない。この辺りを明確に言葉で理解できるようになりたい。トロトロ層という言葉自体が、随分曖昧なものである。人によって随分捉え方も違うようだ。トロトロ層は刻々変わってゆくのだから、当然の事か。

昨日の自給作業:麦刈り、ジャガイモ堀、タマネギ堀2時間 累計時間:33時間

 - 稲作