自公国「手取り増」探る
自公国が検討を進めている手取り増というのは、103万円の課税最低ラインを上げるというのことのようだが、これを試算すると7.8兆円の減税案だそうだ。確かに、人手不足の時代にパートで働く人が、年収が103万円を超える収入になると、税金を払うようになるので、そこで働くことを打ち止めにする。これは良くない。
国民民主党の主張では103万円を178万円まで引き上げる案である。これなら普通に働いても税金を納めるところまでは行かない人が一気に増える。これは今の人手不足の日本の状況の中で、悪い事では無いように見える。これだけの収入があっても扶養家族でいられるとすれば、物価上昇しても確かに手取りが増える。
日本の実質賃金の目減りが、このところの物価上昇で起きている。収入の減少はここ3年、初めて起きたことである。結局生産性が落ちて、日本は衰退したのだ。それでも働ける人で、働きたいという気持ちがある人でも、働けば収入が減少するからそこで止めてしまうと言うのは、いかにももったいない。
年収103万は最低賃金で考えればおおよそ年1000時間と言うことだから。250日働く人なら、3~4時間勤務と言うことになる。確かにもう少し働きたいという人もいるに違いない。178万円になれば、6時間半くらい働ける。時間給がもう少しいい人でも、一日5時間は働けると言うことになる。
年間103万円はどうしてここに最低ラインが引かれたのだろうか。基礎控除48万円と給与所得控除の最低額55万円を足した金額が103万円になるから、所得税は発生しないと言うことらしい。が多くの人は生命保険とか、色々の控除があるから、もう少し上の額になるだろう。
ただし、結婚していれば配偶者の年収が多い場合、配偶者控除を受けることが多い。103万円を超えた場合、900万円以下の所得の場合、38万円の課税控除を受けることが出来る。親の扶養に入っている場合など、子供の収入が103万超えると控除がなくなる。
実は直接の当人の税金の問題よりもこの扶養者あるいは配偶者の控除の問題の方が税の額としては大きい。ただ、自立した人間が配偶者とか扶養者とか、納税免除になるようなことは、人間の在り方としておかしいと思っているので、個人的には一切気にしたことはない。
106万の壁という社会保険の壁もある。年収106万円を超えると、パートやアルバイトをしている人には、社会保険への加入が求められる。これも社会人だから当然とも言えるが、106万くらいでは暮らせるわけではないのだから、最低賃金が上がっているのだから、この壁がかなり上でも良いと言うことは確かに言える。
もし国民民主党の公約が実現すると7.8兆円の減税になるとの試算がある。細かくは難しいのだろうが、そのくらいの減税は必要な状況であるのは確かだ。ただし、消費税には触れないという場合だ。消費税の5%下げも必要と言うことであれば、13兆円くらいの減税になる。
いずれにしても法人税を元に戻す必要がある。法人税が高いと企業が海外に流出するという理屈で、アベ内閣ではさかんに法人税の減免を行った。これで企業が次世代の、新規事業を開発するのなら良かったのだが、内部留保して、投資に回すというような消極的なことになった。
企業の危機感は新規事業どころではなく、身を守ることに精一杯だったのだ。つまり、30年間日本の企業は守りに入った。高度成長期が終わり、成熟した経済の中で、どのような新しい産業を生み出せるかの競争で、日本の企業は完全に周回遅れになった。
高度成長期の成功体験が災いしたのだ。気がついたときにはアジアの近隣諸国の後塵を煽ぐ位置にいた。台湾や中国に行ってみて実感するところだ。たぶん、東南アジアの国々も、昔の我々の中にある姿とは、全く異なっているはずだ。その時に日本の遅れたことに気付くのだ。
もちろん遅れたって良い。どこに日本が行くのかである。政治にその論議がないことが一番の問題なのだと思う。自公国の手取り増の検討の時に、減税後どうなるかなど、日本がどこを目指すのかを、いくらかでも話し合うのだろうか。老人を切り捨てるとか話し合うのだろうか。入るものが減るのだから、出るもののどこかを切り捨てざる得ない。
部分連合のまずいところは、この検討画十分にはされない可能性が高い。税収減の対策である。当然軍事予算の増加は当面の検討しなければならない材料だろう。国民民主党や公明党が敵基地攻撃可能な軍事設備の増強を、認めているのかどうかである。私には認めていないように見える。
敵国攻撃可能なミサイルやジェット戦闘機の開発、配備。こういうことを自民党は強引に進めた。これはどう考えても憲法違反である。では公明や国民は憲法改定を考えているのか。いないように見える。ここで、自民党に対して、そのことを突きつけて欲しい。
もし、そういう、互いの主張が衝突するような問題でも話し合い妥協点を見付けるようなことが、可能な野党であれば、今後立憲を追い抜き野党第一党になる可能性が出てくるだろう。103万円の壁が、178万円になって、与党にひきづり込まれるのでは、何の意味も無い。
また、ただ最低ラインを引き上げるのであれば、むしろ高額所得者の方が減税の恩恵が大きくなると試算にある。何か累進課税の方にも工夫をしなければならないのだろう。まあ、今回は選挙公約を国民が支持すれば、国の政策が変るという直接的な意味を特に、国民民主党を支持した若い人達が重要なのだろう。
問題点を指摘するよりも、先ずは選挙に行って投票すれば、政策が変るという体験を若い人がすると言うことにこれからの政治に意味がある。若い人の投票率は低い。選挙に行っても空しいと言うことらしい。今回は若い人が野党に入れたことで、政治の状況が変った事は確かだ。
問題を複雑化しないで、分りやすく行く方が良いのだろう。今回の選挙で一番支持を広げた国民民主党への共感と言うことなのだろう。れいわも一気に議席を3倍にして、れいわの日冷評は221万票から380万票で159万増加になっている。ただ9名だから、自民党にしてみれば話し合う議席数ではないと言うことになる。
令和は都合の良いことを言い過ぎて、実現性を国民が感じないところに問題がある。選挙公約は、個人消費を活性化させるため、消費税の廃止と季節ごとの10万円の支給、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料の引き下げ、子どもへの手当として高校卒業まで一律1カ月に3万円支給、保育費、給食費、子どもの医療費などを無償にする。
どれも良いことである。すぐにでもやって欲しい。問題は財源だ。分りやすい財源案を示さないと責任ある野党にはなれない。国債発行(通貨発行)により、初年度200兆円規模、翌年から100兆円規模の大胆な支出を行っても、財政破綻などは起きません。インフレ率は2$301C3%以内に収まるとの主張だ。
私にはそうは思えない。これ以上国債を増やす事は財政再建から遠ざかることになる。国の借金は次の世代の負担を押しつけていることになる。日本の財政状態は世界の仲でも悪い方の筆頭にある。財政をこれ以上悪化させることには反対である。
消費税10%は必要なことだと考えている。この点では自公政権に賛成である。世界の経済の関係が強くなっている。日本だけが、消費税の無い税制をとれば、問題が起こる。消費税の良い所は脱税がしにくいところで在る。反社勢力も、自民党裏金議員もごまかしはきかない。
同時に行うべき事が、社会保障による生活困窮者への配分である。最後には生活保護費があると菅元総理大臣は言ったが、最初に生活保護費はなければならない。これは権利なのだ。所得税の累進制も強める必要がある。法人税も大幅に増税するべきだ。それでも足りないときにのみ、国債の発行である。