賃上げが及ばない農業
岸田政権は不人気挽回のために、盛んに賃上げを主張している。賃上げするのは企業だから、政府には負担は少ない。賃上げした会社には税制優遇をするとまで言っている。本当に賃上げが進めば、経済の好循環に繋がるのだろうか。生産性が低いままでは、根本解決にはならない気がする。
政府の言い分としては、生活の困窮の原因は企業が利益を内部留保してしまい、賃金を上げることに向けないからだと言うわけだ。その理由はストライキをして、賃金を勝ち取ると言うことが無くなったからだ。大企業に勤めれば、高給取りである。戦う必要などなくなったのだ。
昔は大企業に勤める人も、労働者の意識があり、労働者全体の賃上げのために、強い立場を生かして、ストライキを辞さず賃上げを戦った。その流れが労働者全体に及んで、それなりの賃金水準になったのだろう。そして戦う労働者の方が、生産性も高かったのだ。
確かに日本の所得水準は世界から見ると、上がらない。生産効率が悪いのだから仕方がないとしても、なにしろ先進国の半分も給与所得が無い状態。しかも物価を2%に上げるというのが政府の方針。物価が上昇すると経済の好循環になるのかの繋がりが分からない。
これではさらに働けと言われても無理だ。あまりに給与が安いので、人が集まらない職場がかなり存在する。あれほど大変なコロナ下の看護師さんの給与の安さには驚いた。20年前は看護師さんだって普通にストライキをしたのだ。
最低賃金が上がったと言っても、到底十分な水準ではない。物価がそれ以上の勢いで上がってゆくから、生活はかなり苦しくなっている。食事も出来ない一人親世帯があるという。戦後の食糧難時代を思い出してしまう。苦しくなっていると言うことは政府も認めてはいる。
労働者は自分たちでストライキをして戦わなくなった。自分たちの代わりに、政府が賃上げを要求してくれるなど、前代未聞ではなかろうか。ストライキをするようなエネ夫ギーも無くなったように見える。労働組合も日和見なんだろう。自民党の集まりに労働組合の代表が挨拶に行く。パー券も買うかも知れない。それはないか。
物価が上がることには、円安が拍車をかけている。政府が円安維持の方針だから、賃金上昇が追いつかないのは当然で、このまま格差社会が深刻化することは間違いが無い。いよいよ、0金利が終わるのかと言うことで、一瞬だけ円高に振れたが、修正されてしまった。台湾に旅行するので残念だった。経済政策の意味が分からない。
こうした経済状況の中で、賃上げなど及ばない農業者はどうしたら良いのだろう。自己責任でやっているのだから、止めれば言いと言うことになっている。しかしそれは大きな間違いだ。平均年齢70歳である。働いているからまだ政府の支出が抑えられているのだ。
農業者は政府に期待したところで、どうにもならないのだから、どこかで見切らなければならないという状況だと思う。もしこれから農業をやるなら、大規模農業への転換である。企業と同じ発想になってやらなければ、農業も成立しない時代になる。
そのためにはまず、農業に関する知識を持つこと。そして、次の時代の農業にはどういうものが必要なのかを模索する。そして、これなら可能だという大規模農業に取り組む企画書を作る。私にはその方法は分からないし、興味も無いのだが。農業が好きだからやりたいというものは、経営から離れてやるほかない。
農業者は自営業だから、どれほど苦しくなったとしても自己責任である。しかも、70歳の平均年齢である。止めれば、再就職と言うことも無い。止めるに止められない状態で続けている人も多いのではないか。楽しんで農業を継続している人も居ないではないが、多くの農業者はこの先どうすれば良いか悩んでいる。
農家経営の粗収益1,076.9万円に対して、経費にあたる農業経営費は951.5万円。と書いてある。差し引いた農業所得は125.4万円 となる。この金額は零細農家から大規模な農家、専業農家や兼業農家まで全ての業態を含めたもの。大規模専業農家や農業企業を中心に、生活に困らない所得を得ている農家もいる。
その一方で、大半は農業では生活は立たない農家ばかりと成っている。都市近郊の農家であれば、土地持ちはあるからで税金対策で農業は続けているかもしれない。アパート経営の黒字を農業の赤字に埋めて、節税になる。それでもあと10年したら普通の農家はほとんど消えているだろう。
農地の選別が進むだろう。大規模農家が有利に使えるような広い一区画の農地は地価が上がり、一方で大規模で利用するには不利な農地は放棄される。放棄されながら、地方の中山間地は手入れがされなくなり、かなり荒れたものになるだろう。
それは自然災害の増加にも繋がり、住めない地域はさらに広がるにちが無い。悪循環がおこり、条件不利地域の農家の成立は不可能に近くなる。そうに違いないと予測して居る。35年前に今の状況は正確に予測できた。そしてあしがら農の会を始めた。次の35年の未来も多分大きくははずれないだろう。
賃上げなど縁のない、小規模農業者は早く止めた方がましだという結論に
なる。小規模農業者の多くは、経済とは関係が無く、止められない事情を抱えていると思われる。以前豊年祭に使う5穀が無くす事は出来ないと言われた農家の方が居た。
なる。小規模農業者の多くは、経済とは関係が無く、止められない事情を抱えていると思われる。以前豊年祭に使う5穀が無くす事は出来ないと言われた農家の方が居た。
農業が好きだと言うことも止められない理由だろう。長年やってきて生活の中に畑作業や、田んぼ作業が入り込んでいる。生きる張り合いでもある。地域全体のことを考えれば、自分が止める訳にはいかないという、長年土地と共に生きてきた思いもあるにちがない。
日本の地方はそうした思いの集積のようなものだ。この日本人を作り上げてきた土地への思いを断ち切らせている。農業を切り捨てることにした自民党政権の方針の誤りである。いや、農業の展望を打ち立てられなかった、今も見付けられない政治の責任だ。
日本の食糧自給率は30%ぐらいまで落ち込むのだろう。農業では生活できないのだから、そうならざるえない。大規模農家だけで、どこまで食糧自給を伸ばせるかだが、大規模農業に向いている農地には限界がある。農業で働けるような労働者は日本人には少ないことだろう。
今食料・農業・農村政策審議会が行われている。その話し合いの内容を見ると、この程度では到底農業の衰退を食い止められるとは思えない。農業は技術である。そのやり方が可能かどうか、やってみせてみろと言いたい。日本では出来もしないオランダ方式など無駄である。
輸入農産物も高くなる。高い農産物を買えない日本になる。いよいよ日本の食糧危機が来る。予測される日本の35年後の状態に対して、私は自給農業をするしかないと考えている。ともかく今やれることは、自給農業の技術の確立である。