なぜ政治に莫大なお金が必要なのか

   



 アダンのジャングルが続いている。この中はイノシシくらいしか入れない。葉のトゲがすごいのだ。根も龍のようにぐるぐるのたうち回り、中を這うことすら出来ない。一度アダンのジャングルになってしまったならば、大きなユンボで入らなければ片付けることすら出来ない。

 今回のパー券キックバック方式は、根が深い。アダンのジャングルのようだ。遡れば、自分党結党以来やってきたことと考えた方が良い。自白した議員が言うには、これは政治家の文化といえる慣習なのだそうだ。政治家にはもらった金を税務署に届けないでいいという慣習がある。そう考えるほど一般の人とは違う世界。

 不法献金の言い訳はいつも、政治にはお金がかかるから仕方がないだ。ばれたら修正申告すれば、それで済むと考えている。そのように発言している自民党議員もいる。政治家になる人は良心など初めから無いのだ。それが政治家の伝統文化だと考えている。悪も善も併せ持つのが政治家だという文化。だから、こんな悪行がいままで見逃されてきたのだ。

 今更の逮捕劇であるが、こんなことは誰でも知っていたことだろう。しかし、度が過ぎたのだ。犯罪と言えるレベルまで、感覚が麻痺したのだ。みんながやれば怖くない。キックバックなら検察も黙認してくれる。文句を言うようなら人事で、割を食わせてやる。これがアベ流である。

 バレないだろうというか、見逃してくれると政治家みんなが考えていたに違いない。上納金を増やすための実に巧妙なやり方である。防衛副大臣を辞めさせられたアベ派議員は、派閥が政策を研究するためには、お金必要な事はよく分かると当然のごとく言っていた。これがまず微妙だ。

 政策を研究するためには、調査をして十分な資料を集めなければならないのはわかる。例えば、自民党の政策目標の一つである、食糧自給率の向上のためにはどうすれば良いかを研究するならば、農水省に指示しても出てこない資料がある。政策集団と称する派閥が行った実際の作業がどんなもので、どういう費用が出ているのか知りたいものだ。

 選挙区に戻り、農家の皆さんに経営のことを聞いて歩いたようなことはあるのか。選挙運動では歩いているだろうが、自民党として政策を出すための本格的な調査など、しているなど聞いたこともない。本当のところは政策集団と言いながらも誰も研究などしていないに違いない。

 企業が新製品を開発するときの開発費のようなものが必要なのだろうか。あるいは大学の政治学科の研究室の研究費のようなものが必要と言うことだろうか。実際に政策がどう機能するかをシュミュレーションをするための、コンピュター利用が必要と言うことなのか。確かに本気であれば政策研究にお金は必要になる。

 どうも隠しておくような費用ではない。政策を研究したいというのであれば、是非とも費用をかけて、食糧自給を改善するための研究をしてもらいたい。問題は実はそんな調査研究を政策研究集団の中でやったことはないと見える所である。政策研究集団とは党での出世のための順番待ち組織だろう。

 そうした派閥が行った研究成果を示して貰ったことがない。自民党各内閣は建前として食糧自給の向上を掲げてはいる。具体的な方策など考えても居ないとしか思えない。出てくる政策は自民党議員からではなく、農水省からのように見える。自民党が重要項目とする政策にどのような費用がどう使われたかを、明確にしてもらいたい。

 少なくとも政党助成金が出ていて、そのお金は各派閥に配られているはずだ。以前、アベの指示で、特別に河井克行・案里議員の選挙のために1億円も出した事件があった。結局の所そのお金は県や市の議員に配られた賄賂だった。政治にお金がいるというのは、こういうことが実際の所では無いのか。

 議員になれれば上がりと思っている人達だ。政策を本気で研究などしているとは正直思えない。もし本気で研究しているのであれば、すべてガラス張りにした方が、議員自身のためでもある。社会の為でもある。隠しておく必要など全くない。何億円もかかるほど、勉強してくれているのか。とその人に投票したくなる。

 政治資金問題の解決は簡単なことだ。政策集団で検討するまでもない。政治献金や政策研究に必要な経費はすべてクレジット決済にする。現金は禁止だ。その上で、政治資金の口座は誰にでもインターネットで内容が見えるようにしておけば良いだけのことだ。悪い事に使わないのであれば、後ろめたいことに使わないのであれば、それが出来ないはずが無い。

 公開しにくいおかしなお金の出入りがあるのが政治家だ、そう誰もが思っている。これが政治不信と無関心に繋がっている。この機会に政治資金の透明性を岸田政権は主張しろ。もうどうせ泥船だ。罪滅ぼしに沈む前に少しはまともなことをした方が良いのではないか。あの人無能に見えたけど、最後だけはまともだったと言われるたほうがまだ良いだろう。

 実際の所政策は官僚が作っているのではないか。丸投げと考えて良いのではないか。違うのだろうか。大きな方角は政治家が模索する。その具体的な政策化は官僚が行う。これが実際の所ではないのだろうか。このやり方であれば、議員自身にそれ程お金がかかるはずがない。元論政治家自身が研究すべきなのだが。

 政策を作るには審議会がある。食料・農業・農村政策審議会 というものがあり、各部会に分かれて、どうすれば良いかを専門家が検討している。と言ってもそこでは食料安全保障のことは議論されているようだが、自給率を50%に向上させるべきともしている。しかしながら具体策はない。議論内容を見ると、私にはほとんど期待が出来ない。

 農業者の収入が半減している。これを何とかしなければ、農業者はいなくなる。ここに政策が必要だ。新しい農林水彩大臣は就任挨拶でそう述べた。農地は消滅し続ける。食糧自給率の向上どころでは無い。農業者が居なくなってすべてが終わる。この現実が迫っている中、まったくのんきな審議会をやっていると私には思える。

 35年前に食糧自給率の向上はあきらめて、だから自分で食糧は自給することにしたのだ。その実践の結果食糧自給率の向上のためには、2つの方向が考えられる。ロシアのような市民自体が自給する仕組みの構築。もう一つが大規模な企業農業の推進。この二つの両輪が動き出せば、食糧自給率は上がり始める。食糧輸出ではないのだ。企業の発想で農業を考えていたのではだめなのだ。

 いわゆる普通の農家はますます経営が出来ない。給与所得を向上させて、経済の好循環と岸田内閣は政策を出している。ここでは給与所得者ではない農家のことは忘れられている。多分報道も国民全体も、経済を考えるときに農家のことなど思い出しもしないのだろう。

 こうしてさらに食糧自給が後退している。50%に向上どころではないのだ。韓国では44.4%。台湾では83.1%。日本が38%。東アジアの安全保障を考えたときに、似たような環境の国の中で、一番だめなのかが日本なのだ。これは間違いなく政治の責任であろう。1970年当時には70%超えだったのだ。

 韓国、台湾は似たような条件の中、日本より食糧自給にも頑張っている。何と仮想敵国としている中国は食糧自給率100%なのだ。これでは彼我の差は大きすぎる。多分、現状把握は大半の政治家は出来ているのだろう。しかし、どうしたらよいかを考えている政治家も、派閥もないと思う。

 派閥での政策研究費がなんであるのか。是非とも岸田さんは説明責任を繰り返し言い逃れの材料にしてきた岸田総理こそ、説明責任を果たして欲しい。そして、すべてをクレジット化して、国民に見える形にしてもらいたい。
 

 

 - Peace Cafe