マイナンバーカードが悲しい日本

   

トラックターロータリー台車

 マイナンバーカードを健康保険証と一体化して、健康保健証を廃止すると、政府は決めた。これはカードが出来たときとは、そもそも約束が違う。最初から健康保険証を廃止すると言えば、マイナンバーカード阻止のために、入らない人がかなり存在したはずだ。

 保険証の廃止は、国民総背番号の入り口だと見られるからだ。健康保険に非加入というわけには行かないから、マイナンバーカードは強制加入になったような物だ。最初からそう主張しないところが、政府の汚い手口だ。まるでAmazonや、グーグルのやり口だ。そういう時代なのかな。

 ところが、その前提となる日本の行政にはマイナンバーカードを運用するだけの能力が失われていた。この事態は日本人の劣化に由来すると考えるほかない。河野洋平氏がいくら吠えても、能力がないのだから手に負えない。この劣化は日本の停滞の表れなのだ。台湾にお願いして、やっていただいたら良かったと嘆くしかない。

 民主主義国の資本主義が、絶対主義国の資本主義に、その決断の早さで負けたのだ。そこにアメリカの焦りが生まれた。中国の国家資本主義が民主主義的手順を省略するために、対応が早くアメリカとしては競争に敗れる不安が起きた。それは日本が国民の了解を得ながら、IT化しようとしても、国民監視になるという反対意見が強く出たため、ここまで後れを取った原因である。

 実際に先行している国は国民の徹底した監視をナンバーカードと同様な仕組みで行っている。反政府的な行動は逐一監視されているから、独裁政治の維持が可能となっている。革命の芽が芽生えないように、徹底した監視国家なのだ。その自由のない中国が、最も競争に有利という現実をどうするのか。

 コロナの時も日本の行政には、手続き全般をこなすだけの能力がないから、民間企業に丸投げした。そして、政府と連んだお抱え企業がぼろもうけをした。政府に能力がないのだから、仕方がないから諦めるほかないと言うことで、問題はほぼなかったことになった。日本も随分と哀れな国になったと思った物だ。

 今度はマイナンバーカードを作る能力がなくて、民間に委託したら、そのデーター入力を中国企業に丸投げしたというのだ。そこからデーターの流出が起きたと思われる。しかし、政府はその詳細については説明もなく、流出は無かったと言うことになった。

 それから日本でやるようにと言うことで、やってみたら出来ないのだ。次々落ちが出てきて何と、健康保険証との紐付けが40万人分と言う膨大な数が出来ないことが分かった。これほどダメなら、全部がだめと言うことでは無いのか。どうにもグズグズである。

 政府は延期をためらっているが、もうそれどころではなく、やりたくても始めることすら出来ないと言う事が見えてきた。岸田政権のあきれ果てた無能ぶりが言われるが、実はそうではない。もう日本という国家は劣化によって、IT化に完全に乗り遅れてしまったのだ。

 それは台湾でも韓国でも日本の経済を追い抜いたと言うが、IT化で先行し逆転が起きたのだ。社会がIT化して行く中で、日本だけ取り残された。それは良い民主主義のためだったのかもしれないのだ。それが政府の優柔不断の決断力不足に繋がった。すべてが後出しじゃんけんである。

 偉そうなことは言えない訳で、私自身がIT社会から取り残されている。よたよたついて行こうとしている状態である。ついて行くために多大な時間を使わされている。何しろドコモの契約を変えるために、東京の三軒茶屋のドコモに行ったぐらいだ。八重山のドコモショップは閉店させられた。

 日本政府のIT化の状態が74歳になろうとする老人とおなじでは困るだろう。何故、IT化に乗り遅れたかと言えば、やはり成功体験なのだろう。うまくやってきた今までの方式を無理に変える必要を感じないのだ。74までこのやり方でやってきたのに今更なんだと言うことだろう。

 ソニーのタブレットで電話が出来たときは問題が無かったのだ。ところがこれがおかしくなった時には、もう電話が出来るタブレットは中国製だけっだった。中国製に変えたら、アメリカの圧力でアプリが入らない。あれほど便利な物をソニーが何故止めたのかは理由が分からない。あれなら年寄でもメールもラインも楽に打てたのだ。情けない限りだ。

 今まで後れを取っていた国であれば、早くIT化をして、追いつけ追い抜けと言うことの、合意形成が早い。日本はそれが出来なかった。出来なかった理由のもう一つは政府や行政に信頼感がなかったのだ。政府は国民総背番号をやって、国民をあらゆる側面から支配しようとしていると疑心暗鬼になったのだ。

 同時に政府にはマイナンバーカードの情報をきちっと管理する能力がないだろうと不安視する人も多かった。こちらは予測通り、ひどい漏れが次々に起きた。政府はその責任の取り方がまともではない。本来賠償が必要な事故だ。他人にマイナンバーカードで住民票を勝手に取られる人まで現われたのだ。

 日本人の劣化は残念ながら進んでいたのだ。こうなったら仕方がないので、お抱え外国人を台湾や韓国から来ていただいて、
しばらく指導をお願いするほか無いだろう。私にはそれほど深刻な事態だと思える。このまま行けば、停滞国から、後進国にさらに格下げになる。

 一番の深刻は、政府にはその深刻さが理解できていないと言うことにある。政府の力で、あるいは電通やパソナの力を借りれば、またうまい汁は吸われてしまうだろうが、何とかなると未だに思っているのだ。本当のところではもうIT化はどうにも成らないところにある。

 IT化の一番の目的は銀行口座との紐付けであろう。政府が個人の資産や、お金の出入りを完全に把握する事なのだろう。政府の仕事の主たる物は税金に取り立てと、税金の使い道である。中国であれば、個人が資産をごまかそうとすれば、スイスの銀行にでも預けるほか無い。先日そういう中国の高官が拒否されたとニュースにあった。

 中国の経済が良いのは政府が国民の資産を完全把握しているからだ。ある日幹部が突然消える。当然日本政府もマイナンバーカードでそれを実現したいのだ。手順に従って、あらゆる口座がマイナンバーカードに紐付けされることになるのだろう。そしてその情報は権力者だけが知るところとなる。

 そうなれば、金持ちの弱みを権力は握ることになる。これがマイナンバーカードの本当の目的であろう。日本の金持ちの中に存在する、脱税的人物が特定できるだろう。当然政敵の資産も権力者は抑えることが出来る。必要なときにその切り札を使うだろう。
 

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